
ヤドカリの家と言えば貝殻だろう。自分にフィットしたサイズの巻貝の貝殻に体を収め、貝殻を背負って暮らす姿がおなじみだが、最近彼らの住居に変化があったという。
新たな研究によると、世界中の多くのヤドカリたちが、プラスチックごみや金属製のキャップ、ガラスのような人工物の家に住んでいるというのだ。
海洋ごみ問題のしわ寄せがヤドカリたちに影響を及ぼしたことは事実だ。自分にフィットする貝殻を探すよりも、どこにでも大量にあるゴミでサイズを合わせた方が彼らにとっては手っ取り早いのだろう。
だが研究チームによると、彼らがプラスチックごみを好んで身に着けるのは、他にも理由がありそうだという。
ヤドカリたちの間でゴミの家が大流行 ポーランド、ワルシャワ大学の研究チームは、ヤドカリの愛好家が投稿した2万9000枚もの画像を調べた。その結果、ヤドカリ界では人工物の家が流行中らしいことを突き止めた。
人工物を住処にしていると特定されたのは、386匹のヤドカリだ。中でも一番人気は、ペットボトルに付いているようなプラスチック製のキャップで、人工殻の85%を占めたという。
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プラスチック製のフタを背負ったヤドカリ/Image credit: Shawn Miller
via Z. Jagiello et al., Science of The Total Environment, 2024 (CC BY 4.0 DEED)
このトレンドは、熱帯地域に生息する16種の陸生ヤドカリのうち、少なくとも10種で起きていると推定されている。
ヤドカリのお腹はとても柔らかいため、殻を背負って身を守る。
だが貝やカタツムリのように自分で殻を作らないのは、それによって殻を作るエネルギーを節約できるからだと考えられる。
悲しいことに現在、世界の海はプラスチックごみで汚染されつつある。
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プラスチックのほか、電球のネジや金属のフタに入り込んだヤドカリもいる/Image credit: Shawn Miller via Z. Jagiello et al.,Science of The Total Environment , 2024 (CC BY 4.0 DEED)ヤドカリがプラスチックごみの家に住む他の理由 だがヤドカリたちの間でプラスチックごみが流行っているのは、ただ手っ取り早いからというだけではなく、ほかにも理由があるかもしれない。
その理由の1つは、性選択の観点から説明できる。
ヤドカリのオスにとって、殻は自分の魅力をメスにアピールするためのものでもある。目新しいプラスチック製の殻は、メスに魅力的に映る可能性があるのだ。
というのも、性的なディスプレイや性選択の進化において、目新しさ自体に価値があるからだ。
だとするなら、オスはモテるためのファッションとして、人間にとってゴミであるプラスチックを選ぶのかもしれない。
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また実用性という点で、人工物が選ばれている可能性もある。
プラスチックはキチン質の殻よりも軽い。それでいて丈夫なのだから、天然物よりも高性能なシェルターと言うこともできるかもしれない。
ワルシャワ大学のマルタ・スルキン教授は、「こうした写真を初めて見たとき、心が痛む思いでした」と、BBC Radio 4に語っている。
だが以上のようなことを考えると、ゴミを背負って暮らすヤドカリが本当に不幸なのかどうかは、現時点では不明で、長期的影響はあるかどうかも今はまだわからない。
もしかしたらこれは”人新世”(人間が環境に影響するようになった地質学的な時代のこと)における最適な適応と考えることもできるかもしれない。
研究チームは今後、この新しい行動がヤドカリの進化にどう影響するのか調べていく予定であるそうだ。
この研究は『Science of The Total Environment』(2024年1月6日付)に掲載された。
References:More And More Hermit Crabs Are Wearing Trash as a Home Instead of Shells : ScienceAlert / Hermit crabs are 'wearing' our plastic rubbish - BBC News / written by hiroching / edited by / parumo
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新たな研究によると、世界中の多くのヤドカリたちが、プラスチックごみや金属製のキャップ、ガラスのような人工物の家に住んでいるというのだ。
海洋ごみ問題のしわ寄せがヤドカリたちに影響を及ぼしたことは事実だ。自分にフィットする貝殻を探すよりも、どこにでも大量にあるゴミでサイズを合わせた方が彼らにとっては手っ取り早いのだろう。
だが研究チームによると、彼らがプラスチックごみを好んで身に着けるのは、他にも理由がありそうだという。
ヤドカリたちの間でゴミの家が大流行 ポーランド、ワルシャワ大学の研究チームは、ヤドカリの愛好家が投稿した2万9000枚もの画像を調べた。その結果、ヤドカリ界では人工物の家が流行中らしいことを突き止めた。
人工物を住処にしていると特定されたのは、386匹のヤドカリだ。中でも一番人気は、ペットボトルに付いているようなプラスチック製のキャップで、人工殻の85%を占めたという。
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プラスチック製のフタを背負ったヤドカリ/Image credit: Shawn Miller
via Z. Jagiello et al., Science of The Total Environment, 2024 (CC BY 4.0 DEED)
このトレンドは、熱帯地域に生息する16種の陸生ヤドカリのうち、少なくとも10種で起きていると推定されている。
ヤドカリのお腹はとても柔らかいため、殻を背負って身を守る。
だが貝やカタツムリのように自分で殻を作らないのは、それによって殻を作るエネルギーを節約できるからだと考えられる。
悲しいことに現在、世界の海はプラスチックごみで汚染されつつある。
ヤドカリにとってはピッタリサイズの貝殻を探すよりも、あまたあるプラスチックを探す方が手っ取り早いのかもしれない。
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プラスチックのほか、電球のネジや金属のフタに入り込んだヤドカリもいる/Image credit: Shawn Miller via Z. Jagiello et al.,Science of The Total Environment , 2024 (CC BY 4.0 DEED)ヤドカリがプラスチックごみの家に住む他の理由 だがヤドカリたちの間でプラスチックごみが流行っているのは、ただ手っ取り早いからというだけではなく、ほかにも理由があるかもしれない。
その理由の1つは、性選択の観点から説明できる。
ヤドカリのオスにとって、殻は自分の魅力をメスにアピールするためのものでもある。目新しいプラスチック製の殻は、メスに魅力的に映る可能性があるのだ。
というのも、性的なディスプレイや性選択の進化において、目新しさ自体に価値があるからだ。
だとするなら、オスはモテるためのファッションとして、人間にとってゴミであるプラスチックを選ぶのかもしれない。
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また実用性という点で、人工物が選ばれている可能性もある。
プラスチックはキチン質の殻よりも軽い。それでいて丈夫なのだから、天然物よりも高性能なシェルターと言うこともできるかもしれない。
ワルシャワ大学のマルタ・スルキン教授は、「こうした写真を初めて見たとき、心が痛む思いでした」と、BBC Radio 4に語っている。
だが以上のようなことを考えると、ゴミを背負って暮らすヤドカリが本当に不幸なのかどうかは、現時点では不明で、長期的影響はあるかどうかも今はまだわからない。
もしかしたらこれは”人新世”(人間が環境に影響するようになった地質学的な時代のこと)における最適な適応と考えることもできるかもしれない。
研究チームは今後、この新しい行動がヤドカリの進化にどう影響するのか調べていく予定であるそうだ。
この研究は『Science of The Total Environment』(2024年1月6日付)に掲載された。
References:More And More Hermit Crabs Are Wearing Trash as a Home Instead of Shells : ScienceAlert / Hermit crabs are 'wearing' our plastic rubbish - BBC News / written by hiroching / edited by / parumo
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