
カナダ在住の12歳少年が、古代ローマ軍から街を守るために使用されたとされる「アルキメデスの熱光線」が本当に有効であることを証明したそうだ。
紀元前3世紀の科学者アルキメデスが考案したとされるその光学兵器は、太陽光線をレンズで集め敵船に火災を起こして撃退したという。
だがその記録は説話として古い文献に残されているのみだ。本当にこの兵器は実在したのか?実際に有効だったのかどうかは不明で、長年議論がなされている。
ブレンデン・セーナーくんは、鏡と卓上LEDライトでアルキメデスの熱光線の小型レプリカを作成。少なくとも戦場で有効だったろうことを実証したそうだ。
敵の船を炎上させる古代の光学兵器、アルキメデスの熱光線 古代ギリシアの科学者、アルキメデス(紀元前287年? - 紀元前212年)の発見や発明で一番有名なのは、お風呂で水があふれる様子を見て閃いたという「アルキメデスの原理」だが、ほかにもいくつもの発明を考案している。
その1つが「アルキメデスの熱光線」と言われるものだ。
2世紀の著述家ルキアノスによれば、紀元前214~前212年にローマ軍に包囲されたシラクサの街(シラクサ包囲戦)は、海岸に鏡を並べ、それを光学兵器にしていたという。
鏡は太陽の光を集め、ローマ軍の船へ向けて照射される。するとその熱で船が燃え上がるという仕掛けだ。
[画像を見る]
アルキメデスは海岸に複数の鏡を並べて放物面反射器として太陽光線を集める光学兵器を作り、シラクサを攻撃する洋上の船に火災を起こしたという説話が残されている。 / image credit:WIKI commons本当に実在したのか?威力はあったのか?長年の議論 この光学兵器の実在したかどうか?本当に威力があったのかどうかについては、かなり昔から議論されている。
例えばフランスの哲学者ルネ・デカルトらはその実在を否定しているが、肯定派たちは少なくとも原理的には可能であることを証明している。
また近年では2005年にマサチューセッツ工科大学(MIT)の研究チームが、アルキメデスの熱光線は実際に船を燃やせただろうことを実証した。
実験では、一辺30cmの四角い鏡127枚を使い、30m離れた木製の船に日光を照射。すると斑点状の発火が確認されたのだ。
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image credit:mit.edu
この実験では、空が曇ったため最終的に炎上させるにはいたらなかったが、研究チームは、気象条件さえよければ、アルキメデスの熱光線は効果があるだろうと結論している。
ただしこうした実験からは、シラクサの海が東側にあることから熱光線を使用できるのが朝に限られる点や、距離を考えると火矢やカタパルトなどを利用した方が有効だろうことも明らかになっている。12歳の若き科学者が古代の光学兵器を再現 そうしたわけで、アルキメデスの熱光線が実在したのかどうか現在も確かなことは不明なままだ。
この論争を解決するために、12歳のブレンデン・セーナーくんは、凹面鏡とLED卓上ライトで、古代の光学兵器の小型版を作成し、それが古代の戦場で有効だったろうことを実証している。
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セーナーくんの作った小型版の装置 / image credit:csfjournal
その実験では、鏡で50ワットの熱を反射し、敵戦のかわりとなる厚紙に当てている。すると鏡3枚までなら1枚ごとに約2度、4枚目では8度も温度が跳ね上がることが確認された。
同様のことを100ワットのライトで行うと、鏡3枚までは1枚につき4度、4枚目では10度熱くなった。
こうしたことからセーナーくんは、「十分に強力な熱源と、大きく、完璧な角度で焦点を合わせた複数の鏡があれば、船を燃やすことはできるだろう」と述べ、MITの研究チームの見解に同意している。
抜け目がないセーナーくんは、アルキメデスの熱光線については古代の文献に記録があるのみで、物理的な証拠がないとも指摘。
それが本当に実在したかどうかの議論にはまだ決着がついていないことも伝えている。
この若き科学者の考察は高く評価され、「マシューズ・ホール年次科学フェア金賞」など、いくつもの賞を受賞することになったそうだ。
[動画を見る]
References:The Power of the Archimedes Death Ray / 12-Year-Old Builds Replica Of Archimedes’ Death Ray - And It Works | IFLScience / written by hiroching / edited by / parumo
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紀元前3世紀の科学者アルキメデスが考案したとされるその光学兵器は、太陽光線をレンズで集め敵船に火災を起こして撃退したという。
だがその記録は説話として古い文献に残されているのみだ。本当にこの兵器は実在したのか?実際に有効だったのかどうかは不明で、長年議論がなされている。
ブレンデン・セーナーくんは、鏡と卓上LEDライトでアルキメデスの熱光線の小型レプリカを作成。少なくとも戦場で有効だったろうことを実証したそうだ。
敵の船を炎上させる古代の光学兵器、アルキメデスの熱光線 古代ギリシアの科学者、アルキメデス(紀元前287年? - 紀元前212年)の発見や発明で一番有名なのは、お風呂で水があふれる様子を見て閃いたという「アルキメデスの原理」だが、ほかにもいくつもの発明を考案している。
その1つが「アルキメデスの熱光線」と言われるものだ。
2世紀の著述家ルキアノスによれば、紀元前214~前212年にローマ軍に包囲されたシラクサの街(シラクサ包囲戦)は、海岸に鏡を並べ、それを光学兵器にしていたという。
鏡は太陽の光を集め、ローマ軍の船へ向けて照射される。するとその熱で船が燃え上がるという仕掛けだ。
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アルキメデスは海岸に複数の鏡を並べて放物面反射器として太陽光線を集める光学兵器を作り、シラクサを攻撃する洋上の船に火災を起こしたという説話が残されている。 / image credit:WIKI commons本当に実在したのか?威力はあったのか?長年の議論 この光学兵器の実在したかどうか?本当に威力があったのかどうかについては、かなり昔から議論されている。
例えばフランスの哲学者ルネ・デカルトらはその実在を否定しているが、肯定派たちは少なくとも原理的には可能であることを証明している。
また近年では2005年にマサチューセッツ工科大学(MIT)の研究チームが、アルキメデスの熱光線は実際に船を燃やせただろうことを実証した。
実験では、一辺30cmの四角い鏡127枚を使い、30m離れた木製の船に日光を照射。すると斑点状の発火が確認されたのだ。
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image credit:mit.edu
この実験では、空が曇ったため最終的に炎上させるにはいたらなかったが、研究チームは、気象条件さえよければ、アルキメデスの熱光線は効果があるだろうと結論している。
ただしこうした実験からは、シラクサの海が東側にあることから熱光線を使用できるのが朝に限られる点や、距離を考えると火矢やカタパルトなどを利用した方が有効だろうことも明らかになっている。12歳の若き科学者が古代の光学兵器を再現 そうしたわけで、アルキメデスの熱光線が実在したのかどうか現在も確かなことは不明なままだ。
この論争を解決するために、12歳のブレンデン・セーナーくんは、凹面鏡とLED卓上ライトで、古代の光学兵器の小型版を作成し、それが古代の戦場で有効だったろうことを実証している。
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セーナーくんの作った小型版の装置 / image credit:csfjournal
その実験では、鏡で50ワットの熱を反射し、敵戦のかわりとなる厚紙に当てている。すると鏡3枚までなら1枚ごとに約2度、4枚目では8度も温度が跳ね上がることが確認された。
同様のことを100ワットのライトで行うと、鏡3枚までは1枚につき4度、4枚目では10度熱くなった。
こうしたことからセーナーくんは、「十分に強力な熱源と、大きく、完璧な角度で焦点を合わせた複数の鏡があれば、船を燃やすことはできるだろう」と述べ、MITの研究チームの見解に同意している。
抜け目がないセーナーくんは、アルキメデスの熱光線については古代の文献に記録があるのみで、物理的な証拠がないとも指摘。
それが本当に実在したかどうかの議論にはまだ決着がついていないことも伝えている。
この若き科学者の考察は高く評価され、「マシューズ・ホール年次科学フェア金賞」など、いくつもの賞を受賞することになったそうだ。
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References:The Power of the Archimedes Death Ray / 12-Year-Old Builds Replica Of Archimedes’ Death Ray - And It Works | IFLScience / written by hiroching / edited by / parumo
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