植林に取り組んだアメリカ東部の地域が、回復した森林によって気候変動から守られていることが明らかに
 過去100年、大規模な植林活動によりアメリカ東部では森林が大きく回復した。それは強力な冷却効果を発揮して、世界全体で地球温暖化が進む一方で、この地域に限っては気温を低下させたことが明らかになった。


 大気中から二酸化炭素を吸収してくれる森林は、自然を利用した温暖化対策として重要視されている。だが今回の研究では、それだけでなく地域的に決して無視できない冷却効果を発揮してくれるだろうことが示されている。

大規模な植林活動によりアメリカ東部では広大な森林が回復 300年ほど前、アメリカ東部はほとんど森林におおわれていたが、農業のために伐採が進み、やがてほとんど丸裸になってしまった。

 だがそれも今は昔の話だ。大規模な植林活動や自然の回復によって、1930年代以降、1500万ヘクタールもの森が再び広がったからだ。

 森林は水分を放出して周囲の空気を冷やし、同時に雲を作り出す。
また葉の色の暗さや表面の粗さなどにもまた空気を冷やす効果がある。

 森林の回復にあわせて、この地域の気候も冷却された。実際、1900~2010年にかけて北米全体は0.7度暑くなっているが、東海岸や南東部は0.3度涼しくなっている。

 温暖化の懐疑派は、ことあるごとにこの地域の気温の低下を取り上げて、温暖化はしていないと主張していたが、実は回復した森林の影響によるものだと、インディアナ大学のマロリー・バーンズ博士らは語る。

 これまで、「温暖化の穴」と呼ばれるこの地域の気温の低下に関して、森林再生と関連性をきちんと研究されていなかったという。

 樹木に周囲を涼してくれることならよく知られている。
だが重要なのは、「森林がどの程度環境を冷却するのか解明すること」なのだ。

 それが具体的にわかって、はじめて気候変動から地域社会を守るために、どれだけの森林を再生させる必要があるのか、計画することができる。

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photo by Unsplash森林から離れた場所にまで冷却効果が及んでいることが判明 今回の研究でバーンズ博士らは、人工衛星や温度計によって集められたデータを用いて、森林と周辺地域との気温を比べている。

 そこからは、森林からかなり離れた地域にまで冷却効果が及ぶことが明らかになっている。

 それによると、今日アメリカ東部の森林は、年間を通じて1~2℃ほど地域的な気温を下げ、夏にはそれ以上の冷却効果をもたらしていると考えられる。

 1930年代以前の伐採が進んだ森林では、冷却効果はずっと小さかったはずだ。
だから、もし森林が回復していなければ、アメリカ東部は地球上のほかの地域と同じように暑くなっていただろう。

 森林がすべてを説明するわけではないが、バーンズ博士は「森林再生はこのテーマの重要な一部であろう」と、プレスリリースで述べている。

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photo by Pixabayただし植林効果は環境や状況に大きく左右される 森林を育てることは、大気中の二酸化炭素を吸収するもっとも手軽な方法の1つとされている。

 ただし、そうした効果は地球上どこでも同じではなく、環境や状況に左右される部分もある。

 たとえばバーンズ博士らは、高緯度では雪が光をよく反射してくれるツンドラよりも樹木の方が熱を吸収しやすい可能性を指摘する。

 また若い森林(樹齢20~40年)に比べて、古い森林は冷却効果が落ちるなど、その効果が必ずしも永遠に続くわけでもない。


 「自然を利用した温暖化対策は、経済全体の脱炭素化と一緒に行なって初めて効果を発揮する」と、バーンズ博士らは語る。

 森林の中で週に2時間程度過ごすことは人間の健康に良いことが知られているが、適切な場所で森を守り育てることは、地球の健康にも欠かせないということだ。

 この研究は『Earth's Future』(2024年2月13日付)に掲載された。

References:A century of reforestation helped keep the eastern US cool - AGU Newsroom / Widespread Reforestation Has Buffered The Eastern US Against Climate Change | IFLScience / written by hiroching / edited by / parumo

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