盲導ロバが高齢施設のお年寄りたちに喜びをもたらす
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 アメリカには盲導犬ならぬ盲導ロバがいる。そのロバは高齢者施設を定期的に訪問し、おじいさん、おばあさんの心を癒す「セラピー・ロバ」として大活躍している。


 実はそのロバは、生まれてまもなく育児放棄され瀕死のところを助け出され、保護された先のロバ救済施設で盲目の仲間を支えるようになった。そこから盲導ロバとしての才能が開花したようだ。

 幼いころの過酷な経験にもかかわらず、人間にも動物にもフレンドリーでやさしいロバは、誰からも慕われ、愛される存在となったのだ。

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Therapy donkey helping senior citizen residents母親から飼育放棄されたロバのティプトー ミネソタ州ミネトンカにあるロバの救済施設『Save The Brays Donkey Rescue』に、ロバのティプトー(2歳)がやってきたのは2022年のことだった。

 ティプトーという名の由来は、忍び足を意味するtiptoeから。時折ひづめの先で歩くことからそう名付けられた。


 ティプトーは生まれて間もなく母ロバに育児放棄された。

 小さな足と首を母親に踏みつけられ瀕死状態になって救出されたティプトーは、ミネソタ大学・獣医学内の動物病院にあるICUに入院した。

 4か月間の入院の間、ティプトーは人間から哺乳瓶でミルクを与えられて命がけで闘った。

 なんとか奇跡的に回復したものの孤児になり、施設に保護されたのだった。盲導ロバとして盲目の馬のお世話をするようになる その後ティプトーは、体重約102kgの標準ロバに成長した。

 現在の飼い主となっているエリン・ラーソンさん(39歳)は、Facebookでティプトーについての投稿を見て、ティプトーを養子に迎えた。


 その時ティプトーは、ラーソンさんの家の近くの救済施設で、盲目のロバのお世話をする役割を担っていたという。

 悲しいことに、その盲目のロバは安楽死となってしまった。だが、偶然にもラーソンさんが飼っていた盲目の馬が眼球を摘出したのと同じ日だったそうだ。

 乗馬セラピー団体We Can Rideの資金調達担当者であるラーソンさんは、「このロバに、盲目になった私の馬の力になってほしい」と、すぐに施設でティプトーの養子縁組手続きをした。

 ラーソンさんの10歳になる盲目のアラブ馬“タイティー”と若いティプトーは、出会ってすぐに意気投合した。

 積極的にタイティーの目となり、手助けをするティプトー。
両者の深い絆を見て、ラーソンさん一家は涙を流して喜んだ。[画像を見る] 高齢者に喜びを与える存在に 幼い頃に動物病院で人間に育てられたティプトーは、自分のことを人間だと思っているところがあると、飼い主のラーソンさんは笑う。
ティプトーは人と一緒にいるのが大好きなんです。

また、人の心の奥底にある何かを探り当てて、会話を弾ませる傾向があります。小さなロバと人が心つながるのを見るのは本当に素敵なことです。

ティプトーは典型的なロバではありません。
とても落ち着いていて、とても堅実なんです。
[画像を見る]  ティプトーはミネトンカにある高齢者向けの生活施設『ニュー・パースペクティブ・シニア・リビング』や介護施設を定期的に訪問する。

 セラピー・ロバとして、施設の高齢者たちに癒しと笑顔をもたらしているのだ。

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 ティプトーに会えるのを入居者たちはとても喜んでいるという。

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 ティプトーに触れると、ほとんどの高齢者は喜ぶ。尻尾を振って寄り添い、笑顔と癒しをもたらしてくれる存在であるティプトーは、施設で大人気だ。


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 ティプトーのハンドラー、タベア・ブロックマンさんはこのように話している。
ティプトーは入居者の膝の上にまっすぐ来て、肩に頭をかけ、ただ寄り添います。ティプトーの存在は、本当に特別です。

これまで、ただ泣くばかりで長い間話さなかったような人が、ティプトーに会ったおかげで話してくれるようになったりしました。

お年寄りの顔に笑みが浮かんで喜んでいるのを見るのは特別なことです。ほとんどの入居者にとって本物のロバに会うのも初めての経験でしょうね。
 ラーソンさんはティプトーの定期的な訪問が、記憶喪失に悩む人々の助けになると信じている。

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 施設の環境サービス部長のチャド・イェーガーさんは次のように語っている。
今まで犬や猫のボランティアはいましたが、ロバは初めてです。私たちの施設に住んでいる人たちに、このような動物を見る機会を与えるのは素敵なことだと思います。


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Adorable therapy donkey Tiptoe visits, brings joy to senior living facility residents今まで受けた愛情の恩返しをするティプトー 施設での入居者との面会時間が終わると、ティプトーは寮のような馬小屋に戻る。

 高齢者訪問のあとは、盲目タイティーのお世話係だ。
ティプトーは基本的にタイティーの目なんです。小さな鈴を持って走り回るティプトーを、目が見えないタイティーが追いかけています。

ある意味、ティプトーは他の馬に危害が及ばないようにしているのです。

天気が悪くなると、ティプトーはタイティーを小屋に押し込むか、水辺に誘導するんです。それがティプトーの一日の仕事のすべてです。(ブロックマンさん)
 ラーソンさんはティプトーを連れて学校の子供たちを訪問したり、STEM(プログラミング学習)の授業をしたりもする。
どこに行ってもティプトーは人気者です。

瀕死の状態から回復し、やさしい心を持っているティプトーは、愛情を注いでくれた全ての人に恩返しをしているのではないかと思います。

私はそこに、喜びがあると思います。
 これまでにも数多くの高齢者施設を訪問してきたティプトーとラーソンさん。今後もさらに訪問を続けていく予定だと話している。

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References:How a Seeing-Eye Therapy Donkey Brings Comfort to Minnesota Seniors: ‘There’s a Lot of Joy’/ written by Scarlet / edited by parumo

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