
2023年10月、インドネシアのグヌン・パダン遺跡にある構造物が約2万5千年前に人の手によって作られた世界最古のピラミッドであるとする研究論文が発表された。
エジプトのギザのピラミッドですら5000年なのだから相当古いものとなるため、世界中のメディアの注目を集めた。
だが最近になり、『Archaeological Prospection』誌は、この研究論文を撤回したという。どうやらこの研究には重大な誤りがあったようだ。
インドネシアに世界最古のピラミッドが存在? 2023年10月20日付で発表されたこの研究は、インドネシア西ジャワ州の巨石記念物遺跡、グヌン・パダンにある小高い山が実は古代の人類が作った世界最古のピラミッドだという驚くべき主張を展開したものだ。
しかし発表以来、考古学者たちの反応はこの大胆な主張に対し非常に懐疑的だった。
論文によると、「悟りの山」を意味するグヌン・パダンは自然にできたものではなく、2万5000年前から1万4000年前の間に、人間の手で丁寧に造られたものだなのだという。
これが真実であれば、現在の世界最古のピラミッドよりも遥かに古いものということになる。まだ農業がなかった時代に、高度な建築手法がすでに存在していたことを意味する。
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グアン・パダン内部の簡単な復元想像図 / image credit:Natawidjaja et al., Archaeological Prospection , 2023多くの考古学者たちがこの説に異議を唱える このピラミッドのような小山はいったい何なのか?
ここには隠された空洞もしくは部屋があるとか、この遺跡が何度も埋められたように見えることから、真の正体を隠して保存するためではないかといった大胆な説がほかにもある。
特別な主張には特別な証拠が必要だ。
こうした突拍子もない主張が人類の発展の歴史を書き換えてしまうことを考えると、ほかの考古学者たちにとって、とうてい納得できるものではなかった。
インドネシア、バンドンにあるBRIN(国立イノベーション調査研究庁)の考古学者、ルトフィ・ヨンドリ氏の研究によれば、人類は1万2000年前から6000年前の間にこの地域の洞窟に住んでいたが、彼らよりも数千年も前にこの「ピラミッド」を建設するために採用したとされる驚くべき石造建築能力を持つ人間がいたという証拠はなにも残っていないという。
英国カーディフ大学の考古学者、フリント・ディブル氏は、この「ピラミッド」説の論文は正当なデータを使用してはいるが、正当ではない結論を下していると語る。
例えば、この研究チームは、放射性炭素年代測定法を使って調べた「ピラミッド」の有機土壌の年代から、紀元前数千年にさかのぼる複数の工事段階がわかり、もっとも古いものは旧石器時代にさかのぼると主張している。
研究チームによると、この「ピラミッド」の中でもっとも古い工事部分と思われる箇所の土壌サンプルは2万7000年前にさかのぼるという。
これは確かかもしれないが、ほかの考古学者たちはこの土壌サンプルには、骨片や木炭など人間の活動を示す痕跡は見られないことを指摘する。
本質的に、周辺に人間の活動があったことを示すもっと説得力のある痕跡がなければ、これは本当にただの古い土なだけだ。
こうした疑問が、その後の調査と論文撤回につながった。
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photo by iStock重大な誤りがあるとし、論文は撤回される
「ここには持ち運び可能な小型の遺物が無数に存在していて、それらが人的起源であるまぎれもない証拠である」
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もっと強力な証拠が提示されるまでは、このピラミッドらしき小山は自然の形成物であるということになりそうだ。
ディブル氏は「丘から転がり落ちる物質は、だいたいそれ自体が方向を決めるものだ」と言っている。
References:Study Claiming Humans Built A 25,000-Year-Old Pyramid In Indonesia Removed By Journal / Gunung Padang: Paper claiming “world’s oldest pyramid” retracted by journal / written by konohazuku / edited by / parumo
『画像・動画、SNSが見れない場合はオリジナルサイト(カラパイア)をご覧ください。
エジプトのギザのピラミッドですら5000年なのだから相当古いものとなるため、世界中のメディアの注目を集めた。
カラパイアでも紹介している。
だが最近になり、『Archaeological Prospection』誌は、この研究論文を撤回したという。どうやらこの研究には重大な誤りがあったようだ。
インドネシアに世界最古のピラミッドが存在? 2023年10月20日付で発表されたこの研究は、インドネシア西ジャワ州の巨石記念物遺跡、グヌン・パダンにある小高い山が実は古代の人類が作った世界最古のピラミッドだという驚くべき主張を展開したものだ。
しかし発表以来、考古学者たちの反応はこの大胆な主張に対し非常に懐疑的だった。
論文によると、「悟りの山」を意味するグヌン・パダンは自然にできたものではなく、2万5000年前から1万4000年前の間に、人間の手で丁寧に造られたものだなのだという。
これが真実であれば、現在の世界最古のピラミッドよりも遥かに古いものということになる。まだ農業がなかった時代に、高度な建築手法がすでに存在していたことを意味する。
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グアン・パダン内部の簡単な復元想像図 / image credit:Natawidjaja et al., Archaeological Prospection , 2023多くの考古学者たちがこの説に異議を唱える このピラミッドのような小山はいったい何なのか?
ここには隠された空洞もしくは部屋があるとか、この遺跡が何度も埋められたように見えることから、真の正体を隠して保存するためではないかといった大胆な説がほかにもある。
特別な主張には特別な証拠が必要だ。
こうした突拍子もない主張が人類の発展の歴史を書き換えてしまうことを考えると、ほかの考古学者たちにとって、とうてい納得できるものではなかった。
インドネシア、バンドンにあるBRIN(国立イノベーション調査研究庁)の考古学者、ルトフィ・ヨンドリ氏の研究によれば、人類は1万2000年前から6000年前の間にこの地域の洞窟に住んでいたが、彼らよりも数千年も前にこの「ピラミッド」を建設するために採用したとされる驚くべき石造建築能力を持つ人間がいたという証拠はなにも残っていないという。
英国カーディフ大学の考古学者、フリント・ディブル氏は、この「ピラミッド」説の論文は正当なデータを使用してはいるが、正当ではない結論を下していると語る。
例えば、この研究チームは、放射性炭素年代測定法を使って調べた「ピラミッド」の有機土壌の年代から、紀元前数千年にさかのぼる複数の工事段階がわかり、もっとも古いものは旧石器時代にさかのぼると主張している。
研究チームによると、この「ピラミッド」の中でもっとも古い工事部分と思われる箇所の土壌サンプルは2万7000年前にさかのぼるという。
これは確かかもしれないが、ほかの考古学者たちはこの土壌サンプルには、骨片や木炭など人間の活動を示す痕跡は見られないことを指摘する。
本質的に、周辺に人間の活動があったことを示すもっと説得力のある痕跡がなければ、これは本当にただの古い土なだけだ。
こうした疑問が、その後の調査と論文撤回につながった。
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photo by iStock重大な誤りがあるとし、論文は撤回される
論文の発行者と共同編集長はこれら疑問を調査し、内容に重大な誤りが含まれていると結論づけた」とArchaeological Prospection誌は撤回通知で説明している。
この誤りは、査読中には特定されなかったが、放射性炭素年代測定が、人為的または人工的だと確実に解釈できる遺物や特徴と関係のない土壌サンプルに適用されたということだ。この撤回措置を受けて、論文著者らは「この決定は不当であり、この遺物は自然にできた地層ではなく、人工の建造物または考古学遺物であると明確に立証されている」と主張している。
そのため、問題の小山が9000年以上前に建設された古代ピラミッドであるという解釈は誤りであり、論文は撤回されるべきである
「ここには持ち運び可能な小型の遺物が無数に存在していて、それらが人的起源であるまぎれもない証拠である」
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もっと強力な証拠が提示されるまでは、このピラミッドらしき小山は自然の形成物であるということになりそうだ。
ディブル氏は「丘から転がり落ちる物質は、だいたいそれ自体が方向を決めるものだ」と言っている。
References:Study Claiming Humans Built A 25,000-Year-Old Pyramid In Indonesia Removed By Journal / Gunung Padang: Paper claiming “world’s oldest pyramid” retracted by journal / written by konohazuku / edited by / parumo
『画像・動画、SNSが見れない場合はオリジナルサイト(カラパイア)をご覧ください。
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