
研究者たちは史上最大の正確な宇宙地図を作成した。それによると、宇宙の膨張を加速させていたダークエネルギーが時間とともに変化している可能性があるそうだ。
現在の標準宇宙モデルでは、ダークエネルギーは場所や時間に関わらず、常に一定不変であるとされている。ゆえに新たな発見が本当ならば、これまでの宇宙論がくつがえることになる。
ダークエネルギーの変化は、今の時点では最終的な結論ではなくあくまで予備的なものだ。
だが、もし今後も同じような観測が続くのならば、天文学者はΛ-CDMモデルや、それ以外の宇宙モデルを再検討する必要があるかもしれない。では詳しく見ていこう。
宇宙の膨張を加速させるダークエネルギー この宇宙はビッグバンによって始まった。そして誕生以来、ずっと膨張し続けてきた。
宇宙に存在する物質には引力があるので、それらが引き合うことで膨張はやがて勢いを失うはずだ。
ところが、現実の観測からは、勢いを失うどころか、膨張は加速していることが明らかになっている。
この宇宙の膨張を加速させる謎の力が「ダークエネルギー(暗黒エネルギー)」と呼ばれるものだ。
エネルギーと言っても、その発見から20年が経った今も真の正体は不明のまま。それは力かもしれないし、空間そのものに内在する性質である可能性もある。
米国アリゾナ州キットピーク国立天文台にあるメイヨール望遠鏡には、このダークエネルギーの謎を解明するための装置「DESI」が装備されており、毎月100万個の銀河の位置をピンポイントで観測している。
宇宙の”街灯”にも喩えられるこうした銀河を利用することで、過去110億年の間に加速した宇宙の膨張率を測定することができる。
これがダークエネルギーの謎を解く手がかりになるはずだ。過去最大となる宇宙の三次元マップが完成 4月4日、DESI共同研究チームによって、DESIの観測から作られた過去最大となる宇宙の三次元マップが公開された。
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史上最大の宇宙の地図。地球はその中心にある。拡大すれば、宇宙の構造が手にとるようにわかるだろう/Image credit: Claire Lamman/DESI collaboration; custom colormap package by cmastro:
この最新の地図は、糸の結び目のように集まった無数の銀河のほか、「バリオン音響振動BAO)」と呼ばれる初期宇宙のかすかなパターンをもしっかりととらえていた。
この繊細な三次元の”しわ”は、宇宙最初の38万年の間に存在した物質を飛び越え、その当時の痕跡を現在にとどめている。
これを利用することで、さまざまな銀河までの距離を推定し、各時点において宇宙がどれくらいの速さで膨張していたかのか知ることができる。
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DESI VR Flight Stereoscopicダークエネルギーは時間とともに進化する? そこから明らかになったのが、ダークエネルギーが時間とともに進化しているらしきことだ。
だが、まず述べておくべきは、これが最終的な結論ではないことだ。
今回の結論は、DESIのデータだけでなく、ほかのデータも併せて分析して導かれた。
ところが、さまざまなデータセットを組み合わせると、その痕跡がほんの少しだけ強く浮かび上がってくる。
また、その痕跡は「Λ-CDMモデル」(現時点での標準的な宇宙モデル)が間違っていると言えるほど強力なものでもない。
それでも最新の分析によるならば、これまで宇宙を強力に加速さてきたダークエネルギーが、多少なりとも弱まりつつあるようなのだ。
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現代の宇宙論を覆す可能性を秘めている 繰り返すが、この結論はあくまで予備的なものだ。
だが、もしも同じことが今後も観測されるようならば、天文学者はΛ-CDMモデルに潜む不確かさを探らねばならなくなるだろう。
さらに、いくつもあるΛ-CDMモデル以外の宇宙モデルを検証し、現実の観測結果に一番うまく一致するものを探る必要もあるかもしれない。
「これが本当なら、宇宙論はくつがえります」と、ボストン大学の天文学者ディロン・ブラウト氏は第三者の立場からコメントしている。
この発見は「この宇宙についてのもっとも適切な理解についてのパラダイム・シフト」になるかもしれないそうだ。
References:First Results from DESI Make the Most Precise Measurement of Our Expanding Universe / Largest 3D map of our universe could 'turn cosmology upside down' | Live Science / written by hiroching / edited by / parumo
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現在の標準宇宙モデルでは、ダークエネルギーは場所や時間に関わらず、常に一定不変であるとされている。ゆえに新たな発見が本当ならば、これまでの宇宙論がくつがえることになる。
ダークエネルギーの変化は、今の時点では最終的な結論ではなくあくまで予備的なものだ。
だが、もし今後も同じような観測が続くのならば、天文学者はΛ-CDMモデルや、それ以外の宇宙モデルを再検討する必要があるかもしれない。では詳しく見ていこう。
宇宙の膨張を加速させるダークエネルギー この宇宙はビッグバンによって始まった。そして誕生以来、ずっと膨張し続けてきた。
宇宙に存在する物質には引力があるので、それらが引き合うことで膨張はやがて勢いを失うはずだ。
ところが、現実の観測からは、勢いを失うどころか、膨張は加速していることが明らかになっている。
この宇宙の膨張を加速させる謎の力が「ダークエネルギー(暗黒エネルギー)」と呼ばれるものだ。
エネルギーと言っても、その発見から20年が経った今も真の正体は不明のまま。それは力かもしれないし、空間そのものに内在する性質である可能性もある。
米国アリゾナ州キットピーク国立天文台にあるメイヨール望遠鏡には、このダークエネルギーの謎を解明するための装置「DESI」が装備されており、毎月100万個の銀河の位置をピンポイントで観測している。
宇宙の”街灯”にも喩えられるこうした銀河を利用することで、過去110億年の間に加速した宇宙の膨張率を測定することができる。
これがダークエネルギーの謎を解く手がかりになるはずだ。過去最大となる宇宙の三次元マップが完成 4月4日、DESI共同研究チームによって、DESIの観測から作られた過去最大となる宇宙の三次元マップが公開された。
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史上最大の宇宙の地図。地球はその中心にある。拡大すれば、宇宙の構造が手にとるようにわかるだろう/Image credit: Claire Lamman/DESI collaboration; custom colormap package by cmastro:
この最新の地図は、糸の結び目のように集まった無数の銀河のほか、「バリオン音響振動BAO)」と呼ばれる初期宇宙のかすかなパターンをもしっかりととらえていた。
この繊細な三次元の”しわ”は、宇宙最初の38万年の間に存在した物質を飛び越え、その当時の痕跡を現在にとどめている。
これを利用することで、さまざまな銀河までの距離を推定し、各時点において宇宙がどれくらいの速さで膨張していたかのか知ることができる。
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DESI VR Flight Stereoscopicダークエネルギーは時間とともに進化する? そこから明らかになったのが、ダークエネルギーが時間とともに進化しているらしきことだ。
だが、まず述べておくべきは、これが最終的な結論ではないことだ。
今回の結論は、DESIのデータだけでなく、ほかのデータも併せて分析して導かれた。
どんなものであれ、単一のデータセットだけでは、ダークエネルギーが時間とともに変化していることはわからない。
ところが、さまざまなデータセットを組み合わせると、その痕跡がほんの少しだけ強く浮かび上がってくる。
また、その痕跡は「Λ-CDMモデル」(現時点での標準的な宇宙モデル)が間違っていると言えるほど強力なものでもない。
それでも最新の分析によるならば、これまで宇宙を強力に加速さてきたダークエネルギーが、多少なりとも弱まりつつあるようなのだ。
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現代の宇宙論を覆す可能性を秘めている 繰り返すが、この結論はあくまで予備的なものだ。
だが、もしも同じことが今後も観測されるようならば、天文学者はΛ-CDMモデルに潜む不確かさを探らねばならなくなるだろう。
さらに、いくつもあるΛ-CDMモデル以外の宇宙モデルを検証し、現実の観測結果に一番うまく一致するものを探る必要もあるかもしれない。
「これが本当なら、宇宙論はくつがえります」と、ボストン大学の天文学者ディロン・ブラウト氏は第三者の立場からコメントしている。
この発見は「この宇宙についてのもっとも適切な理解についてのパラダイム・シフト」になるかもしれないそうだ。
References:First Results from DESI Make the Most Precise Measurement of Our Expanding Universe / Largest 3D map of our universe could 'turn cosmology upside down' | Live Science / written by hiroching / edited by / parumo
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