
亡くなった家族の幽霊を目撃したという逸話は、文化の違いや歴史を超えて普遍的に見られるものだ。最近の研究では、愛犬の幽霊に出会ったという飼い主の体験談が分析されている。
一般に心霊体験は不気味なものというイメージがあるが、幽霊になった愛犬との再会は、ほとんどのケースで肯定的な体験として受け止められていたという。
研究によると、このような超常体験は、家族同然だった大切なペットを失い、悲嘆にくれる人たちの心を癒す助けになる可能性があるという。
ペットの幽霊を見た人はどれくらいいるのか?
幽霊の存在はあらゆる文化や時代で語られている。現代科学では幽霊の存在を証明することはできないが、脳や精神の状態や身体的要因、外的環境などで、そこにあるはずのないものが見えたり聞こえたりすることはあるようだ。
データ分析会社「YouGov」の調査によると、アメリカ人の41%が幽霊を信じており、19%が実際に目撃したことがあるという。
こうした幽霊との遭遇体験の多くは自分の家族が関係するものだ。
では亡くなったペットの幽霊についてはどうだろうか? ペットを飼ったことがある人ならわかるように、犬や猫は家族同然の存在だ。
亡き愛犬の霊を見る人は意外と多い
実際それを調べてみようと思ったのが、メリーランド大学のコンピューター科学者ジェン・ゴルベック教授だ。
彼女はSNSを通じて、飼い犬を亡くした人たちが体験した心霊現象を集め、その分析結果を『Anthrozoos[https://www.tandfonline.com/doi/full/10.1080/08927936.2024.2327174]』(2024年3月25日付)で発表している。
この研究では、Twitter(現X)やInstagramで、愛犬を亡くした人に「亡き愛犬の幽霊を見たり、サインを受け取ったり、コミュニケーションを交わしたような経験はありますか?」と問いかけ、その体験談を集めた。
その結果、544人の飼い主がから回答が得られた。予想以上に愛犬と霊的経験を持つ人は多かったようだ。
なお、飼い主が愛犬の幽霊だと心から信じていたことが重要であって、本物の心霊現象であるかどうかはこの研究において問題ではないという。
2種類の心霊体験があることが判明
回答者の体験談を分析すると、大きく2種類の心霊体験があることが明らかになったという。
物理的心霊体験
亡くなった犬の物音を聞いたり、感触を感じたり、実際にその姿を目撃したといった、物理的・感覚的な体験のことで、全体の58%(315件)がこれにあたる。
一番多かったのは(37%)、犬の吠え声、首輪などがカチャカチャなる音、犬の爪が床にあたる時のカチカチ音などが聞こえる体験だ。半分近くは夜に起きており、犬がベッドで寝ているのを感じたというケースも45件あった。
実際の体験談として、次のようなものが紹介されている。
夢に死んだ犬が出てきて、私のアゴを舐めてきました。目覚めると実際にアゴが濡れていたんです
解釈された心霊体験
直接幽霊と遭遇したわけではないが、犬の幽霊が関係していると感じられる体験のことで、42%(264件)がこれにあたる。
たとえば、犬の夢を見る、原因もないのに煙探知機が鳴る、犬からの伝言と思えるようなサイン(虹、蝶など)を見るなどで、次のような体験談がある。
ある夜、犬の気配を感じて目が覚めると、ベッドの上に窪みがありました。しかも、まだ暖かかったんです。あの子が訪ねてきたのだと思いました
ナンバープレートに自分の名前を書いて見せてくれたり……よく耳にするこの歌で私のところに来てくれたりします
愛犬が墓から出てきて、一日過ごす夢を見ました。一日が終わると、あの子はまた墓に入って行きました。目が覚めると、実際に一緒にいたんだと強く感じました
中には、夢に出てきた愛犬が、新く飼った犬と仲良くなれないでいた飼い主との仲を取り持ってくれたケースもあったという。
ある夜、モリー(亡くなった犬)が夢に出てきて、ベッドに飛び込んできました。そしてビンゴ(新しい犬)を愛しても大丈夫と言うんです。
それ以来、私はビンゴと絆を育むことができました
愛犬の幽霊を飼い主はどう感じているのか?
このように幽霊という形で現れた愛犬との再会を、飼い主はどう感じているのだろうか?
一部の飼い主にとっては、それは嬉しくも悲しくもある、一口では口にできない経験になることもあるかもしれない。回答者の9%は、ほろ苦い・悲痛・不気味といった感想を述べている。
だが75%の大部分の飼い主にとっては、肯定的な経験であるようだ。幽霊となった犬との再会は、守護や贈り物とみなされたのである。
またあの世で元気になったらしい愛犬を目にして、安心することもある。
アルファは、骨の癌で足を失ったせいで、足が3本しかありませんでした。でもあの子が亡くなった翌朝、私のところに戻ってきた彼のその足は4本だったんです。
目を覚ますと…彼はいつものように枕の上で私と向き合っていました。私は手を伸ばし、彼の頬を撫でました!
そして、まばたきをした瞬間、もう消えていました。それで、彼がやっと元気になり、痛みもなく、もう大丈夫なのだとわかりました
また16%の飼い主は犬からのメッセージと感じることもある。
たとえば、1000以上の英単語を覚えたことで有名なボーダーコリー、チェイサーの飼い主は、彼女が死んだ後、窓に白い蛾がとまっていたエピソードを語っている。
それはチェイサーからのお別れの言葉なのだと感じ、彼女は次の旅に無事に出発できたのだと思いました
多くの飼い主にとって愛犬の幽霊は悲しみを癒す存在に
一般に、心霊体験には恐ろしいものというイメージがあり、ときに罪の意識や心の病の表れとみなされることもある。
だが、それとは対照的に、ゴルベック教授は、ペットの幽霊に遭遇することは心理的に健全なことだと主張する。
幽霊となった亡くなった愛犬との不思議な再会は、神秘的で特別な感覚を与え、それが大切な関係だったことを示すものである(ゴルベック教授)
さて、いつか愛犬を失ったとき、あなただったら幽霊になった彼らに再会したいだろうか?
私は毎日でもいいから、夢に出てきて欲しいし、なんならどこにでもついてきて欲しいくらいだ。記憶の中でずっと生き続けていられるように、忘れないようにたまに「忘れんなよ」って顔を出してほしいな。
References:Full article: “I Saw Her With My Heart”: Supernatural Experiences and Continuing Bonds After the Death of a Dog[https://www.tandfonline.com/doi/full/10.1080/08927936.2024.2327174] / Have You Ever Encountered the Ghost of a Deceased Pet? | Psychology Today United Kingdom[https://www.psychologytoday.com/gb/blog/animals-and-us/202404/have-you-ever-encountered-the-ghost-of-a-deceased-pet] / written by hiroching / edited by / parumo
本記事は、海外の情報を基に、日本の読者向けにわかりやすく編集しています。