
西暦79年のヴェスヴィオ火山の大噴火でポンペイとともに壊滅した町ヘルクラネウム。そこから出土した炭化パピルスの巻物を解析したところ、古代ギリシャの哲学者プラトン(紀元前427年~紀元前347年)が埋葬された正確な場所や最後の瞬間など、これまで失われていた彼に関する事実が明らかになった。
ヘルクラネウムの町には、火山噴火によって黒焦げになった古代の巻物(パピルス)が大量に埋もれていたが、現在、最新技術を駆使した解読プロジェクトが行われており、今回の発見はその中で見つかったものだ。
最新技術「GreekSchools」で解読が可能に こうした炭化巻物の難解な解読を可能にしたのは、3年前から始まった、赤外線・紫外線光学画像、熱画像、デジタル顕微鏡といった最新技術を駆使した「GreekSchools」解読プロジェクトだ。
プロジェクトのコーディネーター、グラツィアーノ・ラノッキア氏は、古代ローマのエピクロス派哲学者フィロデモスの『アカデミーの歴史』の焼けた巻物から全文の30%に当たる1000語以上の単語を読み出すことができたという。
[画像を見る]
このプロジェクトでこれまで判読できなかったフィロデモスの『アカデミーの歴史』の1,000語以上のテキストが解読された / image credit:D.P. Pavone明らかになったプラトンの正確な埋葬地と最後の瞬間 こうした炭化巻物の解読結果から、これまで正確な位置がわかっていなかったプラトンの埋葬地が判明した。
アテネにある9人の女神ミューズに捧げられた聖地ミュゼイオン近くのアカデミーの庭園内であることが古代の文書にはっきり記されていたことがわかったのだ。
さらにプラトンは、これまで、師であるソクラテスの死の前後、あるいはスパルタによるアイギナ征服の頃の紀元前387年にシチリアで奴隷として売られたとされていた。
だが、紀元前404年または紀元前399年という異なる日付が示されており、これまでの説に疑問が投げかけられる結果になった。
また、巻物にはプラトンの最後の夜についても記述されていた。「プラトンは高熱を出し、彼らが演奏していた音楽に悩まされていた」という。
この研究に関わった、ピサ大学の専門家、グラツィアーノ・ラノッキア氏によると、トラキア出身の音楽家が老哲学者の最後の時間を楽にするためにフルートを演奏していたが、プラトンはその音楽が気に入らなかったとANSAの発表で述べた。プラトンはその音楽家に「リズム感がなさすぎる」と言ったそうだ。
この解読プロジェクトでは、他にも、プラトンのアカデミーやその後の発展に関する重要な情報を明らかにしている。
[画像を見る]
炭化したパピルスは、様々な技術を使って詳細に調査された / image credit:CNR-Institute of Culturale Heritage/Biblioteca Nazionale di Napoli今後も炭化巻物の内容が続々と明らかになる可能性 最先端の非侵襲的な手法によって、ボロボロに崩れていたり、層状に固まっていたり、裏面に書き込みがあるような、これまでは取り扱い不可能だった文書を調べることができる。
「GreekSchools」解読プロジェクトは2026年まで続く予定だそうだ。
他にも、ヘルクラネウムの黒焦げになった巻物の解読は進められている。
2023年秋には、AIやコンピューターに長けた科学者たちを総動員して解読可能な文字を見つけ出した研究者に賞金を出す「 ヴェスヴィオ・チャレンジ」が実施された。
巻物の1つにあった、「紫」を意味する“πορφύραc”という単語が発見され、最初に見つけた研究者に600万円が贈られた。
また、2024年に向けて新たなチャレンジが始まった。これまでに発見された4つの巻物の90%を最初に解読した者には10万ドル(1500万円)が支払われるそうだ。
新事実の新たな発見によって、古代の哲学についての理解が深まるだけでなく、古代史、文学、哲学などの歴史的背景の研究に新たな学際的な道が開かれることになるだろう。
References:>>>ANSA/Herculaneum papyri reveal Plato's burial place - English Service - Ansa.it / Plato’s Final Resting Place in Athens Revealed! | Ancient Origins / Deciphered Herculaneum papyrus reveals precise burial place of Plato | Ars Technica / written by konohazuku / edited by / parumo
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ヘルクラネウムの町には、火山噴火によって黒焦げになった古代の巻物(パピルス)が大量に埋もれていたが、現在、最新技術を駆使した解読プロジェクトが行われており、今回の発見はその中で見つかったものだ。
最新技術「GreekSchools」で解読が可能に こうした炭化巻物の難解な解読を可能にしたのは、3年前から始まった、赤外線・紫外線光学画像、熱画像、デジタル顕微鏡といった最新技術を駆使した「GreekSchools」解読プロジェクトだ。
プロジェクトのコーディネーター、グラツィアーノ・ラノッキア氏は、古代ローマのエピクロス派哲学者フィロデモスの『アカデミーの歴史』の焼けた巻物から全文の30%に当たる1000語以上の単語を読み出すことができたという。
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このプロジェクトでこれまで判読できなかったフィロデモスの『アカデミーの歴史』の1,000語以上のテキストが解読された / image credit:D.P. Pavone明らかになったプラトンの正確な埋葬地と最後の瞬間 こうした炭化巻物の解読結果から、これまで正確な位置がわかっていなかったプラトンの埋葬地が判明した。
アテネにある9人の女神ミューズに捧げられた聖地ミュゼイオン近くのアカデミーの庭園内であることが古代の文書にはっきり記されていたことがわかったのだ。
さらにプラトンは、これまで、師であるソクラテスの死の前後、あるいはスパルタによるアイギナ征服の頃の紀元前387年にシチリアで奴隷として売られたとされていた。
だが、紀元前404年または紀元前399年という異なる日付が示されており、これまでの説に疑問が投げかけられる結果になった。
また、巻物にはプラトンの最後の夜についても記述されていた。「プラトンは高熱を出し、彼らが演奏していた音楽に悩まされていた」という。
この研究に関わった、ピサ大学の専門家、グラツィアーノ・ラノッキア氏によると、トラキア出身の音楽家が老哲学者の最後の時間を楽にするためにフルートを演奏していたが、プラトンはその音楽が気に入らなかったとANSAの発表で述べた。プラトンはその音楽家に「リズム感がなさすぎる」と言ったそうだ。
この解読プロジェクトでは、他にも、プラトンのアカデミーやその後の発展に関する重要な情報を明らかにしている。
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炭化したパピルスは、様々な技術を使って詳細に調査された / image credit:CNR-Institute of Culturale Heritage/Biblioteca Nazionale di Napoli今後も炭化巻物の内容が続々と明らかになる可能性 最先端の非侵襲的な手法によって、ボロボロに崩れていたり、層状に固まっていたり、裏面に書き込みがあるような、これまでは取り扱い不可能だった文書を調べることができる。
「GreekSchools」解読プロジェクトは2026年まで続く予定だそうだ。
他にも、ヘルクラネウムの黒焦げになった巻物の解読は進められている。
2023年秋には、AIやコンピューターに長けた科学者たちを総動員して解読可能な文字を見つけ出した研究者に賞金を出す「 ヴェスヴィオ・チャレンジ」が実施された。
巻物の1つにあった、「紫」を意味する“πορφύραc”という単語が発見され、最初に見つけた研究者に600万円が贈られた。
また、2024年に向けて新たなチャレンジが始まった。これまでに発見された4つの巻物の90%を最初に解読した者には10万ドル(1500万円)が支払われるそうだ。
新事実の新たな発見によって、古代の哲学についての理解が深まるだけでなく、古代史、文学、哲学などの歴史的背景の研究に新たな学際的な道が開かれることになるだろう。
References:>>>ANSA/Herculaneum papyri reveal Plato's burial place - English Service - Ansa.it / Plato’s Final Resting Place in Athens Revealed! | Ancient Origins / Deciphered Herculaneum papyrus reveals precise burial place of Plato | Ars Technica / written by konohazuku / edited by / parumo
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