MVの世界にもAIが進出!動画生成AIが手がけるミュージックビデオが続々登場
 ここ数年の生成AIの進化には、確かに目を見張るものがある。現在では業務の中で、テキストや画像、音声の生成にAIを使っているという人も増えたのではないだろうか。


 そんな中、最後のハードルとなっていたのが映像を動かす動画生成だった。だが最近ではそのハードルを飛び越えようとする試みが、あちこちで行われ始めている。

 動画生成AIを使って制作されたミュージックビデオ(MV)がいくつかリリースされている。どんな仕上がりになっているのか、早速見てみようじゃないか。

AIによって作られたウォッシュト・アウトのMV 最初に紹介するのは、今月2日にリリースされたウォッシュト・アウトのシングル「The Hardest Part」のMVだ。

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ashed Out - The Hardest Part (Official Video)

 いかがだったろうか。正直、肝心の曲がまったく頭に入って来なかった気がするのは気のせいかな。

 生成AIお得意のへたくそな手や指がそこかしこに登場。

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 流れるように続く映像は、途中で止めるとやっぱりどこかおかしい。

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 ウォッシュト・アウトはアメリカのミュージシャン、アーネスト・グリーンによる音楽プロジェクトで、チルウェイブのパイオニアとしても知られている。

 今回のこのMVは、動画生成AIの「Sora」を使用して制作されたそうだ。ディレクターのポール・トリロ氏は、AIの利用について次のように語っている。
MVの多くは、大きな夢を見られるだけの予算を持っていないのです。AIが、アーネストですら夢見ることをためらうようなモノを創り出すことで、これからの音楽業界を支援していけると思います
コメント欄は意外と好評? そんな制作側の気持ちとは裏腹に、案の定コメント欄は困惑とブーイングの嵐……かと思いきや、意外と好意的に受け止めている人も多かった。
・Soraは悪夢をデータセットとして学習したに違いない

・見れば見るほどひど過ぎる

・夢を見たことのない人に、夢がどんなものか説明するにはうってつけの動画だな

・これは終わりの始まりだよ

・なんでみんなこの動画を嫌うの? Soraはよくやったと思うし、将来が楽しみだよ

・曲のイメージによく合っていると思う

・これに近いビデオを作るには、かなりの費用がかかると思う。 従来の方法でこれだけのものを作るとしたら途方もないお金が必要になるはず
・これをきっかけに、芸術は再定義されるだろう。カメラの発明が絵画の世界をひっくり返したように、私たちは今、芸術の定義そのものと、なぜ私たちが芸術に関心を持つのかを考え直さなければならない

・気に入っても気に入らなくても、これは歴史的なMVだ。何にだって「最初」ってものがある。この作品はまさにそれなんだ


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 こういったコメント欄での意見や議論について、アーネスト自身は以下のようなメッセージを書き込んでいる。
私はコメント欄での熱い議論に注目しています。このMVは美学や信ぴょう性、所有権、AIが私たちの生活に与える影響など、幅広いトピックについて話し合うきっかけになりました。

私の新しいアルバムはAIをテーマにしていませんが、私自身はテクノロジーのファンとして、こういった新しいツールの創造的な可能性に興奮しています。

同時に、ツールの責任ある使い方と無責任な使い方の間にある重要な区別について、コメントやDMを通じて共有された深刻な懸念も認識しています。

新しいツールに対する意見はさまざまですが、このテクノロジーは今後も残っていくでしょう。
私たちに必要なのは、それらを最も責任ある方法で活用する方法を、いっしょに見つけ出していくことなんです
K-POPの世界でも動画生成AIを使用したクリップが ここでもう1本、今度はK-POPのミュージックビデオを見てみよう。RIIZEというグループが先月24日に発表したものだが、こちらは生成AIを使って制作された「ビジュアライザー」という位置づけである。

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RIIZE 라이즈 'Impossible' AI Generated Visualizer

 ビジュアル的にはこちらの方がAIらしさを良い方に引き出しているような気もするのだが、ファンの反応は辛辣なものだった。
・AIはついにK-POPにまで到達したんだね。貪欲な企業がスタッフを解雇し始め、ミュージックビデオなどを完全にAIに頼るようになるまで、そう時間はかからないだろう。GOOD LUCK!

・これほど才能豊かなアーティストのチームなのに、とても残念だよ。AIなんて使うのをやめて、本物のアーティストに敬意を払ってほしい

・初めてRIIZEの動画に「いいね!」を押さなかったよ。AIからアーティストを守らないと。私たちの大好きなものがどんどん浸食されて、最後には皮だけが残るようになる

・こんな無駄なことにお金を使わないで、RIIZE自身に投資してほしい

・アーティストやアニメーターを雇う代わりに、AIを選んだことにとても失望しています。アーティストを失業させ、その著作権を過度に侵害することによってのみ機能する怠惰なテクノロジーと一緒にされるのは侮辱的だし、RIIZEに対しても失礼だと思う


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 とはいえ、AIとの共同制作を模索する動きは、もう止められないところまできているようだ。同じK-POPグループのSeventeenも、先月AIとコラボしたこんなビデオクリップを発表している。

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SEVENTEEN (세븐틴) 'MAESTRO' Official Teaser 1カナダでは風船男の映像がシリーズ化 さらにカナダではshy kidsというアート集団が、Soraを使ってこんな動画を発表している。
これはシリーズものになっていて、風船頭の男性サニーが主役なんだが、なかなかよくできているよね。

 つい最近は、このサニーへのインタビューというドキュメンタリー形式の映像まで公開されていて、製作者たちが愉しんで作っているのが伝わってくるんだ。

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air head a sora short動画生成AI「Sora」って何? ところで「Sora」ってそもそも何?という人のために、サラッと説明しておこう。

 SoraはOpenAIが開発した動画生成AIで、テキスト・プロンプトで指示を出すことで、動画を生成してくれる。Soraは日本語の「空」からとったもので、理由は「無限の創造的可能性を連想させる」からだとか。

 作成できる映像は、今のところ最長で1分間。複数のフレームを先読みする機能も搭載されていて、登場人物が消えたり再登場したりした場面でも、一貫性のある映像が可能になっているらしい。

 一般向けのリリースはまだ未定とのことだが、Adobe社の動画編集ソフトPremiere Proへの導入が近々行われるとのこと。

 PhotoshopやIllustratorに続き、デザインや編集の場面でのAIの利用が当たり前な時代は、もう既に来ていると言っていいかもしれない。

References:Watch the first major music video generated by OpenAI’s Sora / written by ruichan/ edited by parumo

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