ブラックホールに落ちたらどうなるのか? まわりの宇宙はどのように見え、最後にどうなるのか?
NASAの最新シミュレーション動画は、ブラックホールの事象の地平面に突入するプロセスを映像化したもので、視聴者はまるで観光ツアーにでも参加するように、安全安心なままこのスリリングな瞬間を体験できる。
その映像は普通のノートPCなら10年もかかる計算をNASAのスーパーコンピューターでシミュレーションした本格的なもの。
ブラックホールへの突入を疑似体験できる仮想ダイブツアー ブラックホールに落ちたらどうなるのか?
NASAゴダード宇宙飛行センターの宇宙物理学者ジェレミー・シュニットマン氏は、これは「よくある質問だが、想像が難しいプロセス」であると語る。
それをシミュレーションで再現したこの動画は、「相対性理論の数学と現実の宇宙における実際の結果を結びつける」ものだ。
動画は2種類ある。1つは、事象の地平面に投げ込まれたカメラがとらえた映像風のもの。
[動画を見る]
NASA Simulation’s Plunge Into a Black Hole: Explained
もう1つは、事象の地平線をぐるっと回って無事に戻ってくる、ちょっと観光ツアー気分に浸れる映像だ(こちらは本当の観光のように360度を自由に見渡すことができる)。
[動画を見る]
360 Video: NASA Simulation Plunges Into a Black Hole
こうした映像は、NASA気候シミュレーションセンターが誇るスーパーコンピューター「ディスカバー」によって作り出されたものだ。
ほんの数分の動画だが、このプロジェクトで生成されたデータは、およそ10テラバイトという膨大さ。ディスカバーは12万9000プロセッサのわずか0.3%を使って、5日間でシミュレーションを行ったが、普通のノートPCであれば10年以上かかる計算量であるという。
[画像を見る]
もし落ちるなら超大質量ブラックホールの方がまし ブラックホールツアーの目的地は、太陽の430万倍の質量を持つ超大質量ブラックホールで、天の川銀河の中心に鎮座する怪物に匹敵する。
「選べるのなら、超大質量ブラックホールに落ちたいと思うでしょう」とシュニットマン氏は言う。
というのも、太陽30個分までの質量を持つ恒星ブラックホールの場合、事象の地平面がはるかに小さい一方、潮汐力が強いからだ。
その強力な潮汐力のせいで、あなたが足からそこへ落下する時、足もとにかかる引力と、頭にかかる引力に大きな差が生じ、あなたの体はまるでスパゲッティのように長く引き伸ばされる。これをスパゲッティ化現象という。
ところが、動画の超大質量ブラックホールの場合、事象の地平線は2500万km(地球と太陽の距離の約17%)とずっと大きい。
その周囲には、「降着円盤」と呼ばれる輝く高温のガスが渦巻いており、異様な光景を演出する。
またその内側にある、もっと細いリングのようなものは「フォトンリング」と呼ばれるもので、ブラックホールの近くをぐるっとまわった光によって形成されている。
ブラックホールの背景にある星空は、地球から見たものだ。
[画像を見る]
もしも無事に帰ってこれたらどうなる? カメラは最初、ブラックホールから6億4000万kmの距離にある。そしてだんだんと目的地に接近し、光速に近づくにつれ、その正面にある降着円盤と背景の星々はいっそう輝きを増す。
これは近づいてくる救急車のサイレンの音が高くなるのと同じ理由だ。
やがてブラックホールが視界いっぱいに広がり、降着円盤やフォトンリングなど、先ほどまで見ていたものが歪んでいく。光が歪んだ時空を移動することで、複数の像を結ぶことさえある。
リアルタイムでは、カメラは事象の地平面まで約3時間かけて落下し、その間に1周30分の軌道を2周している。
ところが、それを遠くから観察している人には、カメラがいつまで経っても終点につかないように見える。
事象の地平面に近づくにつれて時空が歪んでいくので、カメラの映像は遅くなり、地平線の手前で止まったように見えるのだ。ゆえにブラックホールは「凍った星」と呼ばれることもある。
事象の地平面では、時空そのものですら光速で内側へ流れ込む。事象の地平面の先は、完全に未知の領域だ。
その中心には、あらゆる既知の物理法則が成り立たなくなる「特異点」があり、カメラも時空もそこへ向かって落ちていく。
シュニットマン氏によれば、事象の地平面から特異点まではほんの12万8000km。カメラは12.8秒で、スパゲッティ化して破壊される。
その映像は、なんだかこの世との永遠の別れのようで、どこか物悲しい。
もう1つの動画では、カメラは事象の地平面のそばを周回するが、越えることはなく、安全に帰って来れる。
[動画を見る]
NASA Simulation’s Flight Around a Black Hole: Explained
だが何もかも同じようにとはいかない。強力な重力源の近くや光速での移動は、時間の流れを遅くするからだ。
もしも宇宙船に乗った宇宙飛行士がこの周回旅行を6時間かけて行う一方、そこから遠く離れたところで待機する母船に仲間が乗っていたとしたら、母船に帰還した宇宙飛行士は仲間より36分若くなっているという。
References:New black hole visualization takes viewers beyond the brink / written by hiroching / edited by / parumo
『画像・動画、SNSが見れない場合はオリジナルサイト(カラパイア)をご覧ください。』
NASAの最新シミュレーション動画は、ブラックホールの事象の地平面に突入するプロセスを映像化したもので、視聴者はまるで観光ツアーにでも参加するように、安全安心なままこのスリリングな瞬間を体験できる。
その映像は普通のノートPCなら10年もかかる計算をNASAのスーパーコンピューターでシミュレーションした本格的なもの。
この映像で疑似体験できるのは、光の速さで物理法則が破れる領域に突入する、という想像を絶する瞬間だ。
ブラックホールへの突入を疑似体験できる仮想ダイブツアー ブラックホールに落ちたらどうなるのか?
NASAゴダード宇宙飛行センターの宇宙物理学者ジェレミー・シュニットマン氏は、これは「よくある質問だが、想像が難しいプロセス」であると語る。
それをシミュレーションで再現したこの動画は、「相対性理論の数学と現実の宇宙における実際の結果を結びつける」ものだ。
動画は2種類ある。1つは、事象の地平面に投げ込まれたカメラがとらえた映像風のもの。
[動画を見る]
NASA Simulation’s Plunge Into a Black Hole: Explained
もう1つは、事象の地平線をぐるっと回って無事に戻ってくる、ちょっと観光ツアー気分に浸れる映像だ(こちらは本当の観光のように360度を自由に見渡すことができる)。
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360 Video: NASA Simulation Plunges Into a Black Hole
こうした映像は、NASA気候シミュレーションセンターが誇るスーパーコンピューター「ディスカバー」によって作り出されたものだ。
ほんの数分の動画だが、このプロジェクトで生成されたデータは、およそ10テラバイトという膨大さ。ディスカバーは12万9000プロセッサのわずか0.3%を使って、5日間でシミュレーションを行ったが、普通のノートPCであれば10年以上かかる計算量であるという。
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もし落ちるなら超大質量ブラックホールの方がまし ブラックホールツアーの目的地は、太陽の430万倍の質量を持つ超大質量ブラックホールで、天の川銀河の中心に鎮座する怪物に匹敵する。
「選べるのなら、超大質量ブラックホールに落ちたいと思うでしょう」とシュニットマン氏は言う。
というのも、太陽30個分までの質量を持つ恒星ブラックホールの場合、事象の地平面がはるかに小さい一方、潮汐力が強いからだ。
その強力な潮汐力のせいで、あなたが足からそこへ落下する時、足もとにかかる引力と、頭にかかる引力に大きな差が生じ、あなたの体はまるでスパゲッティのように長く引き伸ばされる。これをスパゲッティ化現象という。
ところが、動画の超大質量ブラックホールの場合、事象の地平線は2500万km(地球と太陽の距離の約17%)とずっと大きい。
その周囲には、「降着円盤」と呼ばれる輝く高温のガスが渦巻いており、異様な光景を演出する。
またその内側にある、もっと細いリングのようなものは「フォトンリング」と呼ばれるもので、ブラックホールの近くをぐるっとまわった光によって形成されている。
ブラックホールの背景にある星空は、地球から見たものだ。
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もしも無事に帰ってこれたらどうなる? カメラは最初、ブラックホールから6億4000万kmの距離にある。そしてだんだんと目的地に接近し、光速に近づくにつれ、その正面にある降着円盤と背景の星々はいっそう輝きを増す。
これは近づいてくる救急車のサイレンの音が高くなるのと同じ理由だ。
やがてブラックホールが視界いっぱいに広がり、降着円盤やフォトンリングなど、先ほどまで見ていたものが歪んでいく。光が歪んだ時空を移動することで、複数の像を結ぶことさえある。
リアルタイムでは、カメラは事象の地平面まで約3時間かけて落下し、その間に1周30分の軌道を2周している。
ところが、それを遠くから観察している人には、カメラがいつまで経っても終点につかないように見える。
事象の地平面に近づくにつれて時空が歪んでいくので、カメラの映像は遅くなり、地平線の手前で止まったように見えるのだ。ゆえにブラックホールは「凍った星」と呼ばれることもある。
事象の地平面では、時空そのものですら光速で内側へ流れ込む。事象の地平面の先は、完全に未知の領域だ。
その中心には、あらゆる既知の物理法則が成り立たなくなる「特異点」があり、カメラも時空もそこへ向かって落ちていく。
シュニットマン氏によれば、事象の地平面から特異点まではほんの12万8000km。カメラは12.8秒で、スパゲッティ化して破壊される。
その映像は、なんだかこの世との永遠の別れのようで、どこか物悲しい。
もう1つの動画では、カメラは事象の地平面のそばを周回するが、越えることはなく、安全に帰って来れる。
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NASA Simulation’s Flight Around a Black Hole: Explained
だが何もかも同じようにとはいかない。強力な重力源の近くや光速での移動は、時間の流れを遅くするからだ。
もしも宇宙船に乗った宇宙飛行士がこの周回旅行を6時間かけて行う一方、そこから遠く離れたところで待機する母船に仲間が乗っていたとしたら、母船に帰還した宇宙飛行士は仲間より36分若くなっているという。
References:New black hole visualization takes viewers beyond the brink / written by hiroching / edited by / parumo
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