地球外文明の証拠となる宇宙人の人工構造物「ダイソン球」の有力候補は少なくとも7つある
 最近発表された2つの研究によって、無数の星々の中から「ダイソン球」の可能性がある有力な候補が特定されたそうだ。

 ダイソン球は恒星のエネルギーを利用するための巨大建造物で、地球外の高度文明が存在することを示す「テクノシグネチャー(文明の存在を示す痕跡)」の1つとされている。


 新たな研究では、500万個の天体からダイソン球の特徴をもつものを探し、ただの誤認である可能性のあるものを除外。自然現象であるとは考えにくい人工物の有力候補は少なくとも7つあるという。

地球よりも高度な2型文明が利用する巨大構造物 「ダイソン球」とは、恒星のエネルギーを利用するために作られる仮説上の巨大な構造物で、1960年に物理学者フリーマン・ダイソンによって提唱された。

 それは恒星全体を囲むように建設され、星が発する光や熱エネルギーをすべてとらえる。こうすることで、膨大な星のエネルギーを余すことなく文明のために利用するのだ。

 現在の人類文明レベルではまだ不可能な高度な技術だが、カルダシェフ・スケールで2型にまで進んだ文明ならば可能とされ、それゆえに地球外文明の存在を示すテクノシグネチャーの1つとされている。


 なお地球における人類文明はカルダシェフ・スケールで0.72型くらいのレベルだそうだ。

 ゆえにSETI(地球外知的生命体探査)プロジェクトでは、長年このダイソン球を検出しようとしてきた。

 彼らが探しているのは、「星の明るさの変動」と廃熱によって生じる「過剰な赤外線放射」だ。これがダイソン球の存在を示す重要なサインとなる。

 実際のところ、宇宙にある無数の星々の中から、こうした特徴をもつ天体を見つけるのは、きわめて困難だ。

 しかし最近、2つの研究チームがそれぞれ独自にこの難題に挑戦し、いくつかの有力な候補を発見することに成功した。


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ダイソン球の有力候補は少なくとも7つある まず1つはウプサラ大学(スウェーデン)の天文学者チームによるもので、『Monthly Notices of the Royal Astronomical Society』(2024年5月6日付)に掲載された。

 論文ではダイソン球について、「中赤外線放射の形で廃熱を放出し、その放出量は構造の完成度のほか、実効温度に依存する」と述べている。

 こうした研究において問題になるのは、一見ダイソン球の特徴がありながら、じつは自然現象によってそれらしく見えているだけの天体だ。

 研究チームは、このような紛らわしい天体を除外するために、星雲の特徴・信号対ノイズ比・水素アルファ粒子などの分析を通じて、偽のダイソン球を篩い落としていった。

 こうして500万個の天体から絞り込まれたのが、ただちには自然現象とは考えにくい7つの有力候補だ。

 これらはあくまで候補であって絶対にダイソン球というわけではない。


 研究チームによれば、こうした候補はどれもはっきりとした中間赤外線放射のサインを示し、それでいて汚染物質や天然の中間赤外線源がある兆候は見当たらないという。

 それでもなお、円盤状にかこむデブリなどによって、見かけ上ダイソン球に見えるだけの天体である可能性もあるそうだ。

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 もう1つは、イタリアの国際高等研究所による研究(『arXiv』(2024年3月27日投稿)で、こちらでは過剰な中間赤外線放射をもつ53のダイソン球候補が発見された。

 そしてこちらの候補も同じく、惑星衝突後に形成されるデブリの円盤などで説明できる可能性があるとのことだ。

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更なる証拠を集めるために詳細に調べる必要がある せっかく地球外文明の存在を示すダイソン球の有力候補が発見されたのに、可能性どまりであるのはもどかしい。

 だがそれが地球外文明の巨大建造物であると自信をもって主張するためには、まずありとあらゆる自然現象による説明を除外する必要がある。


 それができて初めて、本当に人工物かもしれないと言うことができるのだ。

 今のところ、今回絞り込まれた候補がダイソン球かどうかははっきりしない。だが1つ確かなのは、今後それらを詳細に調べる必要があるということだ。

 その結果がどうなるにせよ、きっと興味深い事実が明らかになるに違いない。

References:Monthly Notices of the Royal Astronomical Society / arXiv / New Study Suggests of Dyson Spheres, Possible Alien Civilizations / written by hiroching / edited by / parumo

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