
地球を明るく照らしてくれる太陽ではまもなく、磁場が反転するという重大な出来事が起きようとしている。もう少し詳しくいうと「磁極」の逆転だ。
たとえば地球は大きな1つの磁石のようなもので、南極から北極へと磁力が向かっている。だからコンパスの針は北を向く。
つまり南極にN極が、北極にS極がある。太陽にもこのような磁極があるのだが、それが間もなく入れ替わろうとしているのだ。
なんだか世界の終わりかのような、とんでもない出来事が迫っているような印象があるが、決してそのようなことではない。太陽では定期的に磁極の逆転が起きているから今回も乗り越えられるはずなのだ。では詳しく見ていこう。
太陽は22年で磁場が逆転しまた元に戻る 太陽の磁極の逆転を理解するには、まず太陽の周期を知っておかねばならない。太陽の活動は約11年周期で変動しており、これを「太陽活動周期」という。
その活動は黒点の数や太陽フレアなどの変化として現れ、活動レベルのピークである「極大期」ともっとも弱くなる「極小期」を繰り返す。
ちなみに現在は極大期に近づいており、2024年後半から2026年前半のどこかでそのピークに達すると予測されている。最近、世界各地でオーロラが目撃されているのはそのためだ。
あまり知られていないが、じつは太陽活動周期とはまた別の周期が太陽にはある。それが20世紀初頭にアメリカの天文学者、ジョージ・ヘール氏らによって解明された「ヘール周期」だ。
ヘール周期は太陽活動周期の11年に、さらに11年を足した磁場の終期のことで、この22年の周期がひと巡りする間に、太陽の磁場が逆転し、また元に戻る。
こうした周期は太陽の磁場が関係しているので、ヘール周期が太陽活動周期のちょうど2倍なのは偶然ではないし、両周期は密接に関連している。
太陽の活動がもっとも弱い極小期には、太陽の磁場は、N極とS極がはっきりと分かれた地球のような状態(双極子)になる。
だが極大期に向かうにつれて、磁場はずっと複雑になり、N極とS極の区別がはっきりしなくなる。極大期が過ぎ、再び極小期に向かうと、またも双極子になる。ただしこのときの磁極は逆転しており、最初とは真逆になっている。
今後数年以内に起きようとしている磁場の逆転では、太陽の北半球にあったN極がS極となり、南半球ではその逆になる。その結果、地球の地磁気と同じような向きになる。
[画像を見る]
photo by iStock磁場の逆転はなぜ起こるのか? なぜ太陽の磁場の逆転が起きるのか?その原動力は「黒点」という太陽表面に現れる黒っぽい斑点だ。
ここは磁気的に複雑な領域で、赤道近くに現れたときは、その向きが古い磁場に一致する。
だが、磁極逆転の正確なメカニズムはまだわかっておらず、それを矛盾なく説明できるような数学的なモデルはまだない。
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photo by iStock地球に与える影響は? まずいっておくと、磁極の逆転はある時点でパッと切り替わるような現象ではない。11年かけて、双極子 > 複雑な状態 > 双極子の各フェイズが徐々に移り変わる。
磁極が完全に逆転するには1、2年かかるが、それも絶対ではない。2019年12月に終了した第24太陽活動周期では5年近くもかかった。
いずれにせよ、それは緩やかに起きるので、いつ逆転したのか気づくことはない。なんだか世界の終わりが連想されるとんでもない現象に聞こえるが、そんな劇的なものではない。
だが、磁場の反転の副作用のようなものならある。
たとえば、このところ太陽がびっくりするくらい活発で、強力な太陽フレアやコロナ質量放出を繰り返し、地球に強力な太陽嵐を引き起こしているのもその一例だ。
ただし、磁極の逆転が直接的な引き金となってこうした派手な太陽の活動を引き起こしているわけではなく、それらが発生するタイミングが同じなだけだ。
宇宙の天気が荒れるのは一般に太陽極大期だが、この時、太陽の磁場もまた複雑になっているのだ。
もう一つの副作用も悪いものではない。人間に有害な宇宙線をさえぎる役に立つからだ。
太陽の磁場が変化すると、赤道から太陽圏内に広がる「太陽圏電流シート」が大きく波打ち、宇宙線に対するより強力なバリアとなるのだ。
なお、こうした磁極の逆転を観察すれば、次の太陽活動周期の様子を予測することもできる。
磁極の逆転が今後数年以内に起これば、次の周期は活発なものになるし、もっとゆっくり起きるのならば穏やかなものになるという。
追記:(2024/06/21)本文を一部訂正して再送します。
References:The sun's magnetic field is about to flip. Here's what to expect. | Space / written by hiroching / edited by / parumo
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たとえば地球は大きな1つの磁石のようなもので、南極から北極へと磁力が向かっている。だからコンパスの針は北を向く。
つまり南極にN極が、北極にS極がある。太陽にもこのような磁極があるのだが、それが間もなく入れ替わろうとしているのだ。
なんだか世界の終わりかのような、とんでもない出来事が迫っているような印象があるが、決してそのようなことではない。太陽では定期的に磁極の逆転が起きているから今回も乗り越えられるはずなのだ。では詳しく見ていこう。
太陽は22年で磁場が逆転しまた元に戻る 太陽の磁極の逆転を理解するには、まず太陽の周期を知っておかねばならない。太陽の活動は約11年周期で変動しており、これを「太陽活動周期」という。
その活動は黒点の数や太陽フレアなどの変化として現れ、活動レベルのピークである「極大期」ともっとも弱くなる「極小期」を繰り返す。
ちなみに現在は極大期に近づいており、2024年後半から2026年前半のどこかでそのピークに達すると予測されている。最近、世界各地でオーロラが目撃されているのはそのためだ。
あまり知られていないが、じつは太陽活動周期とはまた別の周期が太陽にはある。それが20世紀初頭にアメリカの天文学者、ジョージ・ヘール氏らによって解明された「ヘール周期」だ。
ヘール周期は太陽活動周期の11年に、さらに11年を足した磁場の終期のことで、この22年の周期がひと巡りする間に、太陽の磁場が逆転し、また元に戻る。
こうした周期は太陽の磁場が関係しているので、ヘール周期が太陽活動周期のちょうど2倍なのは偶然ではないし、両周期は密接に関連している。
太陽の活動がもっとも弱い極小期には、太陽の磁場は、N極とS極がはっきりと分かれた地球のような状態(双極子)になる。
だが極大期に向かうにつれて、磁場はずっと複雑になり、N極とS極の区別がはっきりしなくなる。極大期が過ぎ、再び極小期に向かうと、またも双極子になる。ただしこのときの磁極は逆転しており、最初とは真逆になっている。
今後数年以内に起きようとしている磁場の逆転では、太陽の北半球にあったN極がS極となり、南半球ではその逆になる。その結果、地球の地磁気と同じような向きになる。
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photo by iStock磁場の逆転はなぜ起こるのか? なぜ太陽の磁場の逆転が起きるのか?その原動力は「黒点」という太陽表面に現れる黒っぽい斑点だ。
ここは磁気的に複雑な領域で、赤道近くに現れたときは、その向きが古い磁場に一致する。
一方、極に近いところに現れた場合は、新たな磁場の向きに一致する。これを「ヘールの法則」という。
だが、磁極逆転の正確なメカニズムはまだわかっておらず、それを矛盾なく説明できるような数学的なモデルはまだない。
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photo by iStock地球に与える影響は? まずいっておくと、磁極の逆転はある時点でパッと切り替わるような現象ではない。11年かけて、双極子 > 複雑な状態 > 双極子の各フェイズが徐々に移り変わる。
磁極が完全に逆転するには1、2年かかるが、それも絶対ではない。2019年12月に終了した第24太陽活動周期では5年近くもかかった。
いずれにせよ、それは緩やかに起きるので、いつ逆転したのか気づくことはない。なんだか世界の終わりが連想されるとんでもない現象に聞こえるが、そんな劇的なものではない。
だが、磁場の反転の副作用のようなものならある。
たとえば、このところ太陽がびっくりするくらい活発で、強力な太陽フレアやコロナ質量放出を繰り返し、地球に強力な太陽嵐を引き起こしているのもその一例だ。
ただし、磁極の逆転が直接的な引き金となってこうした派手な太陽の活動を引き起こしているわけではなく、それらが発生するタイミングが同じなだけだ。
宇宙の天気が荒れるのは一般に太陽極大期だが、この時、太陽の磁場もまた複雑になっているのだ。
もう一つの副作用も悪いものではない。人間に有害な宇宙線をさえぎる役に立つからだ。
太陽の磁場が変化すると、赤道から太陽圏内に広がる「太陽圏電流シート」が大きく波打ち、宇宙線に対するより強力なバリアとなるのだ。
なお、こうした磁極の逆転を観察すれば、次の太陽活動周期の様子を予測することもできる。
磁極の逆転が今後数年以内に起これば、次の周期は活発なものになるし、もっとゆっくり起きるのならば穏やかなものになるという。
追記:(2024/06/21)本文を一部訂正して再送します。
References:The sun's magnetic field is about to flip. Here's what to expect. | Space / written by hiroching / edited by / parumo
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