
自然界でホッキョクグマとハイイログマの交雑種の存在が確認されてから数年が経過し、様々なことがわかってきた。
気候変動により内陸に後退したホッキョクグマと、北上したハイイログマが出会い、両方の種の血を引く交雑種が誕生したのだ。
最新の新たな遺伝子解析によると、その個体数は全体の1%程度と、まだそれほど増えていないことがわかった。だが今後はやはり増加するだろうと予測され、ホッキョクグマが消滅する可能性があるという
交雑種は「グロラー」と「ピズリー」の2種 ホッキョクグマは数十万年前にハイイログマ(グリズリー)から進化した。両者は遺伝的によく似ており、動物園では子供を作れることできることが知られていた。
ところが気候変動の影響で、最近は野生でも交雑種(ハイブリッド)が確認されるようになった。
ハイイログマの生息域が北へと拡大したことで、両種が出会う機会が増え、雑種が誕生する機会が増えたためだ。
ハイイログマとホッキョクグマの雑種は2タイプある。
父親がハイイログマである場合は「グロラー(grolar)」、父親がホッキョクグマなら「ピズリー(pizzly)」と呼ばれる。
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父親がハイイログマの交雑種「グロラー」photo by iStock交雑種はどれくらい増えたのか?新たな技術で遺伝子解析 では野生の交雑はどのくらい増えているのか?
これを確かめるために、カナダ環境・気候変動省やマクユーアン大学をはじめとする研究チームは、新たに開発された解析チップを使って、1975~2015年に収集されたホッキョクグマ・グリズリー・雑種の遺伝子を解析した。
「Ursus maritimus V2 SNP」という新型解析チップは、遺伝子サンプルを読み、それが雑種であるかどうか100%の精度ですばやく識別することができる。
カナダ・アラスカ・グリーンランドに生息する819頭のクマたちの遺伝子を検査したところ、ハイブリット種は8頭、全体の1%程度とごくわずかであることを確認した。
ホッキョクグマのメス1頭が、ハイイログマのオス2頭と子供4頭をもうけ、その子供4頭のうちのメス1頭が、ハイイログマとやはり4頭の子供をもうけた。
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気候変動が進めば、交雑種が増えホッキョクグマが消える可能性 こうした雑種が誕生したのは、気候変動で気温が上昇し、ハイイログマとホッキョクグマの生息地が重なり合うようになったことが原因だ。
ハイイログマの生息地が北へ広がることで、以前はホッキョクグマしかいなかった地域に進出するようになっているのだ。
そして今の時点では珍しいとはいえ、このまま温暖化が進み、今後ますます生息地が重なり合うようになれば、雑種はさらに増えるだろうと予想される。
それは野生のホッキョクグマが地上から消えてしまう恐れがあるということでもある。
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photo by iStock
こうした交雑種は、以前よりも暖かくなった環境に適応しやすくなるというメリットもあるかもしれない。
だがその結果としてホッキョクグマという固有の種が失われる可能性があるため、全体としては好ましいことではないのだそう。
今の時点では珍しい雑種だが、ハイイログマの生息域はますます北へ拡大しているので、今後もその動向を注視していく必要があるとのことだ。
この研究は『Conservation Genetics Resources』(2024年6月13日付)に掲載された
References:UM Today | UM researcher helps to track Grolar or Pizzly bears / Grizzly-polar bear hybrids extremely rare but predicted to rise with global warming, say scientists - Discover Wildlife / written by hiroching / edited by / parumo
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気候変動により内陸に後退したホッキョクグマと、北上したハイイログマが出会い、両方の種の血を引く交雑種が誕生したのだ。
最新の新たな遺伝子解析によると、その個体数は全体の1%程度と、まだそれほど増えていないことがわかった。だが今後はやはり増加するだろうと予測され、ホッキョクグマが消滅する可能性があるという
交雑種は「グロラー」と「ピズリー」の2種 ホッキョクグマは数十万年前にハイイログマ(グリズリー)から進化した。両者は遺伝的によく似ており、動物園では子供を作れることできることが知られていた。
ところが気候変動の影響で、最近は野生でも交雑種(ハイブリッド)が確認されるようになった。
ハイイログマの生息域が北へと拡大したことで、両種が出会う機会が増え、雑種が誕生する機会が増えたためだ。
ハイイログマとホッキョクグマの雑種は2タイプある。
父親がハイイログマである場合は「グロラー(grolar)」、父親がホッキョクグマなら「ピズリー(pizzly)」と呼ばれる。
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父親がハイイログマの交雑種「グロラー」photo by iStock交雑種はどれくらい増えたのか?新たな技術で遺伝子解析 では野生の交雑はどのくらい増えているのか?
これを確かめるために、カナダ環境・気候変動省やマクユーアン大学をはじめとする研究チームは、新たに開発された解析チップを使って、1975~2015年に収集されたホッキョクグマ・グリズリー・雑種の遺伝子を解析した。
「Ursus maritimus V2 SNP」という新型解析チップは、遺伝子サンプルを読み、それが雑種であるかどうか100%の精度ですばやく識別することができる。
カナダ・アラスカ・グリーンランドに生息する819頭のクマたちの遺伝子を検査したところ、ハイブリット種は8頭、全体の1%程度とごくわずかであることを確認した。
ホッキョクグマのメス1頭が、ハイイログマのオス2頭と子供4頭をもうけ、その子供4頭のうちのメス1頭が、ハイイログマとやはり4頭の子供をもうけた。
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気候変動が進めば、交雑種が増えホッキョクグマが消える可能性 こうした雑種が誕生したのは、気候変動で気温が上昇し、ハイイログマとホッキョクグマの生息地が重なり合うようになったことが原因だ。
ハイイログマの生息地が北へ広がることで、以前はホッキョクグマしかいなかった地域に進出するようになっているのだ。
そして今の時点では珍しいとはいえ、このまま温暖化が進み、今後ますます生息地が重なり合うようになれば、雑種はさらに増えるだろうと予想される。
それは野生のホッキョクグマが地上から消えてしまう恐れがあるということでもある。
交雑種はさらに一般的になるでしょう。ハイイログマが北上し、以前はホッキョクグマしかいなかった地域に押し寄せています。一方、ホッキョクグマの生息域は縮小し、今よりもっと北に追いやられます(マニトバ大学 ルース・リヴキン博士)
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こうした交雑種は、以前よりも暖かくなった環境に適応しやすくなるというメリットもあるかもしれない。
だがその結果としてホッキョクグマという固有の種が失われる可能性があるため、全体としては好ましいことではないのだそう。
今の時点では珍しい雑種だが、ハイイログマの生息域はますます北へ拡大しているので、今後もその動向を注視していく必要があるとのことだ。
この研究は『Conservation Genetics Resources』(2024年6月13日付)に掲載された
References:UM Today | UM researcher helps to track Grolar or Pizzly bears / Grizzly-polar bear hybrids extremely rare but predicted to rise with global warming, say scientists - Discover Wildlife / written by hiroching / edited by / parumo
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