
未来の刑務所では、AIによる偽の記憶をダイレクトに脳に植え付け、犯罪者の更生を目指すようになるかもしれない。
イエメン出身の分子生物学者ハシェム・アル・ガイリ氏の最新のアイデアは、まるで映画マトリックスのような人工記憶移植システム「コグニファイ(Cognify)」だ。
コグニファイはAIによって生成された更生用ストーリーを、受刑者の脳に直接書き込むことで、反省を促し、他者への思いやりを育むための装置だ。
倫理的にまだ問題のある技術だが、受刑者に犠牲者の視点からの記憶を永遠に植え込むことで、彼らに後悔の念を抱かせることが可能になるという。
受刑者に偽の記憶を移植するシステム コグニファイによる更生プログラムは、まず受刑者の同意を得て行われるという。
受刑者がそれを受け入れるなら、脳のスキャンが行われ、記憶や思考を司る領域が詳細にマッピングされる。そして、そこをターゲットに更生用の人工記憶が脳にインプラントされることになる。
受刑者は頭部に専用のデバイスを取り付け、何やらカプセルらしきものの中に収容される。
[画像を見る]
犠牲者が味わった苦しみを超リアルに体験 すると、受刑者が犯した犯罪やその人格などに基づいて、犠牲者の視点から見た記憶など、AIが適切な人工記憶を生成し、それを神経細胞にダイレクトに植え付ける。
それは超リアルなバーチャル体験だ。例えば、暴力犯であれば、被害者やその家族が味わった苦痛や悲しみを追体験させられるかもしれない。
違法薬物で捕まった受刑者であれば、依存症やリハビリの苦しさを体験させられるかもしれない。
コグニファイによる人工記憶では、神経伝達物質やホルモンまで操作されるので、それにともなう自責の念や後悔といった感情はすべて本物。
だから作られた記憶ではなく、自らの体験同然のものとしてそれを味わうことになる。
こうした人工的な経験を通じて、反省をうながし、他者への思いやりを育むのだ。コグニファイが主眼としているのは罰ではなく、あくまで更生だ。
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人工記憶を植え付けることで刑期が短縮される 偽の辛い記憶を永遠に受け付けられるなど、とてつもなく恐ろしく思えるが、受刑者にはそれに同意するメリットがあるのだろうか? もちろんある。
それはコグニファイの人工記憶は数ヶ月や数年に感じられるかもしれないが、現実にはほんの数分で移植が完了することだ。
つまり受刑者はこれまでのように長期間の服役を強いられることなく、実時間的には早々に社会復帰の準備を終えることができる。
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本当に実行可能なのか? だが実体験のような人工記憶を植え付けるなど、本当にできるのだろうか? 少なくともその実現可能性を示唆するような研究ならある。
例えば、過去には眠っているマウスに幸せな記憶や、電撃を浴びるという恐怖の記憶を移植することに成功している。
あるいは光を利用することで、脳を完全に制御し、記憶の消去に成功した研究もある。
またテキストからリアルな動画を生成する新しいAI技術も、コグニファイの技術的な基盤になることだろう。
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現在の刑事司法システムの限界を超える 未来の更生デバイスのコンセプトは、イエメン出身の分子生物学者で、科学コミュニケーターや映画製作者としても活躍するハシェム・アル・ガイリ氏が考案したものだ。
彼はこれまでも、頭部移植手術を行うAIロボットや人工子宮施設など、ディストピア感ただよう未来技術のアイデアを発表してきた。
アル・ガイリ氏によると、コグニファイは「現在の刑事司法システムの限界」から着想を得たものだという。
今日の刑務所は決して完全なものではなく、ここで刑期を終えた受刑者が再び犯罪を犯して舞い戻ってくるケースは非常に多い。それでいて刑務所を維持するコストは多大なものだ。
そこでAIを利用した更生システムを利用することで、犯罪者に「更生と社会復帰へのより効果的な道筋」を与えようというのだ。[画像を見る] 倫理的な問題も 一方、こうした技術は「ニューロライツ(神経の権利)」とでもいうべき新たな問題をも提起する。実際、アル・ガイリ氏自身も懸念すべき点があることを認めている。
犯罪者に偽の記憶を植え付けることは、個人の自己認識に歪みを生じさせるなど、多くの倫理的問題を引き起こす可能性がある。
なぜなら刑事司法システムのコストを削減し、犯罪者の社会復帰を早め、なおかつ再犯を抑えることは、誰にとってもより安全な地域社会につながるからだ。
ただし凶悪犯罪者ともなると、犠牲者と同じ、あるいはそれ以上のひどい記憶を持たせたところで、罪悪感や後悔の念が生じるのかどうかという疑問も残るし、逆に暴走しちゃうんじゃないかという懸念もある。
このシステムが有効である人物であるかの適性診断なども必要になってくるのかもしれないな。
References:Inside Cognify, the ‘prison of the future’ where AI rewires your brain | Dazed / Cognify: Revolutionary Prison Concept Uses AI and Brain Implants to Fast-Track Criminal Rehabilitation | Science Times / written by hiroching / edited by / parumo
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イエメン出身の分子生物学者ハシェム・アル・ガイリ氏の最新のアイデアは、まるで映画マトリックスのような人工記憶移植システム「コグニファイ(Cognify)」だ。
コグニファイはAIによって生成された更生用ストーリーを、受刑者の脳に直接書き込むことで、反省を促し、他者への思いやりを育むための装置だ。
倫理的にまだ問題のある技術だが、受刑者に犠牲者の視点からの記憶を永遠に植え込むことで、彼らに後悔の念を抱かせることが可能になるという。
受刑者に偽の記憶を移植するシステム コグニファイによる更生プログラムは、まず受刑者の同意を得て行われるという。
受刑者がそれを受け入れるなら、脳のスキャンが行われ、記憶や思考を司る領域が詳細にマッピングされる。そして、そこをターゲットに更生用の人工記憶が脳にインプラントされることになる。
受刑者は頭部に専用のデバイスを取り付け、何やらカプセルらしきものの中に収容される。
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犠牲者が味わった苦しみを超リアルに体験 すると、受刑者が犯した犯罪やその人格などに基づいて、犠牲者の視点から見た記憶など、AIが適切な人工記憶を生成し、それを神経細胞にダイレクトに植え付ける。
それは超リアルなバーチャル体験だ。例えば、暴力犯であれば、被害者やその家族が味わった苦痛や悲しみを追体験させられるかもしれない。
違法薬物で捕まった受刑者であれば、依存症やリハビリの苦しさを体験させられるかもしれない。
コグニファイによる人工記憶では、神経伝達物質やホルモンまで操作されるので、それにともなう自責の念や後悔といった感情はすべて本物。
だから作られた記憶ではなく、自らの体験同然のものとしてそれを味わうことになる。
こうした人工的な経験を通じて、反省をうながし、他者への思いやりを育むのだ。コグニファイが主眼としているのは罰ではなく、あくまで更生だ。
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人工記憶を植え付けることで刑期が短縮される 偽の辛い記憶を永遠に受け付けられるなど、とてつもなく恐ろしく思えるが、受刑者にはそれに同意するメリットがあるのだろうか? もちろんある。
それはコグニファイの人工記憶は数ヶ月や数年に感じられるかもしれないが、現実にはほんの数分で移植が完了することだ。
つまり受刑者はこれまでのように長期間の服役を強いられることなく、実時間的には早々に社会復帰の準備を終えることができる。
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本当に実行可能なのか? だが実体験のような人工記憶を植え付けるなど、本当にできるのだろうか? 少なくともその実現可能性を示唆するような研究ならある。
例えば、過去には眠っているマウスに幸せな記憶や、電撃を浴びるという恐怖の記憶を移植することに成功している。
あるいは光を利用することで、脳を完全に制御し、記憶の消去に成功した研究もある。
またテキストからリアルな動画を生成する新しいAI技術も、コグニファイの技術的な基盤になることだろう。
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現在の刑事司法システムの限界を超える 未来の更生デバイスのコンセプトは、イエメン出身の分子生物学者で、科学コミュニケーターや映画製作者としても活躍するハシェム・アル・ガイリ氏が考案したものだ。
彼はこれまでも、頭部移植手術を行うAIロボットや人工子宮施設など、ディストピア感ただよう未来技術のアイデアを発表してきた。
アル・ガイリ氏によると、コグニファイは「現在の刑事司法システムの限界」から着想を得たものだという。
今日の刑務所は決して完全なものではなく、ここで刑期を終えた受刑者が再び犯罪を犯して舞い戻ってくるケースは非常に多い。それでいて刑務所を維持するコストは多大なものだ。
そこでAIを利用した更生システムを利用することで、犯罪者に「更生と社会復帰へのより効果的な道筋」を与えようというのだ。[画像を見る] 倫理的な問題も 一方、こうした技術は「ニューロライツ(神経の権利)」とでもいうべき新たな問題をも提起する。実際、アル・ガイリ氏自身も懸念すべき点があることを認めている。
犯罪者に偽の記憶を植え付けることは、個人の自己認識に歪みを生じさせるなど、多くの倫理的問題を引き起こす可能性がある。
プライバシーの侵害や、記憶を改変することによる予期しない心理的影響の可能性は懸念されます一方で、アル・ガイリ氏は、このシステムを単なるディストピア的な洗脳デバイスとは考えていない。
人工的な記憶を植え付けることは、自己の真実性についても疑問を投げかけることになるでしょう(アル・ガイリ氏)
なぜなら刑事司法システムのコストを削減し、犯罪者の社会復帰を早め、なおかつ再犯を抑えることは、誰にとってもより安全な地域社会につながるからだ。
どのような技術であれ、その成果をディストピア的なストーリーに当てはめて考えるのは無意味ではないでしょうか実際にこのシステムが将来採用されるかどうかは不明だが、少なくとも技術的には可能な未来はもうそこまできているようだ。
慎重である必要はありますが、テクノロジーに私たちの生活を改善するチャンスを与えることも必要です(アル・ガイリ氏)
ただし凶悪犯罪者ともなると、犠牲者と同じ、あるいはそれ以上のひどい記憶を持たせたところで、罪悪感や後悔の念が生じるのかどうかという疑問も残るし、逆に暴走しちゃうんじゃないかという懸念もある。
このシステムが有効である人物であるかの適性診断なども必要になってくるのかもしれないな。
References:Inside Cognify, the ‘prison of the future’ where AI rewires your brain | Dazed / Cognify: Revolutionary Prison Concept Uses AI and Brain Implants to Fast-Track Criminal Rehabilitation | Science Times / written by hiroching / edited by / parumo
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