
古代エジプトにおいて、ワニの生活はとても過酷なものだったようだ。ナイル川の象徴といってもいいワニは、当時、奇妙な崇拝の対象にされ、大事にされ甘やかされていたかと思うと、殺され生贄にされることもあった。
だが、彼らはどのようにして、自然の生息地から誘い出されることになったのだろうか。
その謎は、英国の博物館に展示されていたエジプトのワニのミイラの分析によって明らかとなった。CTスキャンによって、ワニの腹の中に未消化の魚とともに釣り針が残されていることがわかったのだ。
これは野生のワニが捕獲され、そのあとすぐに殺されたことを示している。
古代エジプト人がワニを信仰していた理由 古代エジプト人は、地球はナイル川や太古の沼地から創造されたと信じていて、その神であるセベクの化身としてのワニを崇拝していたという。
古代エジプトの神話では、セベクは神格化されたワニであり、強大で畏怖される神にして王だったのだ。
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photo by iStock崇拝され大切にされるワニ、生贄の犠牲となったワニ エジプト全土でワニに捧げられた神聖な活動の中心地が発見されていて、中には体長6mにも及ぶものを含むワニのミイラが大量に存在することからも、古代エジプト人のワニ信仰を裏づけている。
おびただしい数のワニが生贄として犠牲にされた一方で、崇拝の対象として手厚く扱われて生涯を全うしたワニもいたようだ。
もっとも有名なのは、スクス(Suchus)という名前のワニで、ワニ信仰の中心地であるクロコディロポリスに棲んでいた。
セベクの生きた化身と信じられていたスクスは、神殿の敷地内に専用の池をあてがわれ、そこで神官からパン、肉、ワインなどの豪勢な食事や、貴金属や宝石などの装飾品を与えられていたという。
動物崇拝の対象として、スクスは地上の神にふさわしいレベルの扱いを受けていたようだ。
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セベスの化身、スクスを描いた挿絵、Leon-Jean-Joseph Dubois (1823-1825年)ブルックリン博物館 / image credit:public domain/wikimediaどのように大量のワニを入手したのか? だが、古代エジプト人は宗教儀式のためにどうやって、これほどの多くのワニを手に入れたのだろう?
メディネット・マディの遺跡から古代の孵化場が発見されたことから、ワニは飼育されていたという説もあるが、この獰猛な巨大生物がどのように飼われ、世話をされていたのかはまったくわからない。
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野生のワニが捕獲されていた ギリシャの歴史家ヘロドトスのものを含むほかの文献によると、ワニはナイル川のほとりでブタを叩く音に誘われてやってきたところを捕獲されたとある。
川のほとりで実際になにが行われていたかを解明するために、英国のバーミンガム博物館に所蔵されている全長2.2mのワニのミイラをスキャンしたところ、驚いたことに胃の中から青銅製の釣り針が見つかった。
これは、ワニが飼育されていたのではなく、野生のものが捕獲されてミイラにされたことを示している。
ワニの消化管内で未消化の小魚も見つかった。これは、ワニが死ぬ直前に最後のエサを食べたということで、捕まってすぐにミイラにされたことを意味する。
これらの発見をまとめると、ワニは古代エジプト人によって捕獲され、セベク神への生贄としてミイラにされたというのが事の真相であることがわかる。
この研究は『Digital Applications in Archaeology and Cultural Heritage』誌に掲載された。
References:Secrets Of Ancient Egyptian Crocodile Cult Revealed By Mummified Croc | IFLScience / written by konohazuku / edited by / parumo
追記(2024/017/19)本文を一部修正して再送します。
『画像・動画、SNSが見れない場合はオリジナルサイト(カラパイア)をご覧ください。』
だが、彼らはどのようにして、自然の生息地から誘い出されることになったのだろうか。
その謎は、英国の博物館に展示されていたエジプトのワニのミイラの分析によって明らかとなった。CTスキャンによって、ワニの腹の中に未消化の魚とともに釣り針が残されていることがわかったのだ。
これは野生のワニが捕獲され、そのあとすぐに殺されたことを示している。
古代エジプト人がワニを信仰していた理由 古代エジプト人は、地球はナイル川や太古の沼地から創造されたと信じていて、その神であるセベクの化身としてのワニを崇拝していたという。
古代エジプトの神話では、セベクは神格化されたワニであり、強大で畏怖される神にして王だったのだ。
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photo by iStock崇拝され大切にされるワニ、生贄の犠牲となったワニ エジプト全土でワニに捧げられた神聖な活動の中心地が発見されていて、中には体長6mにも及ぶものを含むワニのミイラが大量に存在することからも、古代エジプト人のワニ信仰を裏づけている。
おびただしい数のワニが生贄として犠牲にされた一方で、崇拝の対象として手厚く扱われて生涯を全うしたワニもいたようだ。
もっとも有名なのは、スクス(Suchus)という名前のワニで、ワニ信仰の中心地であるクロコディロポリスに棲んでいた。
セベクの生きた化身と信じられていたスクスは、神殿の敷地内に専用の池をあてがわれ、そこで神官からパン、肉、ワインなどの豪勢な食事や、貴金属や宝石などの装飾品を与えられていたという。
動物崇拝の対象として、スクスは地上の神にふさわしいレベルの扱いを受けていたようだ。
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セベスの化身、スクスを描いた挿絵、Leon-Jean-Joseph Dubois (1823-1825年)ブルックリン博物館 / image credit:public domain/wikimediaどのように大量のワニを入手したのか? だが、古代エジプト人は宗教儀式のためにどうやって、これほどの多くのワニを手に入れたのだろう?
メディネット・マディの遺跡から古代の孵化場が発見されたことから、ワニは飼育されていたという説もあるが、この獰猛な巨大生物がどのように飼われ、世話をされていたのかはまったくわからない。
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野生のワニが捕獲されていた ギリシャの歴史家ヘロドトスのものを含むほかの文献によると、ワニはナイル川のほとりでブタを叩く音に誘われてやってきたところを捕獲されたとある。
川のほとりで実際になにが行われていたかを解明するために、英国のバーミンガム博物館に所蔵されている全長2.2mのワニのミイラをスキャンしたところ、驚いたことに胃の中から青銅製の釣り針が見つかった。
これは、ワニが飼育されていたのではなく、野生のものが捕獲されてミイラにされたことを示している。
ワニの消化管内で未消化の小魚も見つかった。これは、ワニが死ぬ直前に最後のエサを食べたということで、捕まってすぐにミイラにされたことを意味する。
これらの発見をまとめると、ワニは古代エジプト人によって捕獲され、セベク神への生贄としてミイラにされたというのが事の真相であることがわかる。
この研究は『Digital Applications in Archaeology and Cultural Heritage』誌に掲載された。
References:Secrets Of Ancient Egyptian Crocodile Cult Revealed By Mummified Croc | IFLScience / written by konohazuku / edited by / parumo
追記(2024/017/19)本文を一部修正して再送します。
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