
火星の地表を軌道から眺めると、ネコ科の爪にでも引っ掻かれたかのような長さ600kmに及ぶ巨大な傷跡がはっきりと確認できる。
こちらは欧州宇宙機関(ESA)の火星探査機「マーズ・エクスプレス」がとらえた最新、かつ最高の「アガニッペ地溝帯」の画像だ。
シマウマのような縞模様をともなう深く長いこの渓谷は、大昔の激しい火山活動により地殻変動が起き、地表が裂けたことで誕生したと考えられている。
それはかつて火星でどのような地質学的な活動が起きていたのかを今に伝える貴重な手がかりとなる。
火星に刻まれた巨大な傷跡 アガニッペ地溝帯((Aganippe Fossa))が発見されたのは1930年、命名されたのは1976年。今回の画像は2023年12月13日にESAの火星探査機「マーズ・エクスプレス」によって撮影されたものだ。
巨大な爪で引っ掻かれたかのような、大地を切り裂く傷跡は、ところどころ切れているが、実際には長さ600kmに及ぶ帯状に陥没した地溝だと考えられている。
これは東京ー大阪間の距離よりも長く、地球最大級の渓谷グランドキャニオン(全長446km)よりも巨大だ。
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傷跡のように見えるアガニッペ地溝帯 / image credit:ESA//DLR/FU Berlin
アガニッペ地溝帯でとりわけ興味深いのは、この傷跡を境に周囲の風景が変化しているところだ。
左側は、でこぼことした山のような地形になっているが、右側は滑らかで、ESAいわく”シマウマ”のような縞模様が見える。
この対照的な違いは、アガニッペ地溝帯の右側は長年にわたって風の侵食を受けてきたことが原因だと考えられている。とはいえ、反対側がその影響を受けなかった理由は不明だ。
[動画を見る]
[画像を見る] 激しい火山活動の痕跡 アガニッペ地溝帯はタルシス地域の死火山「アルシア山」の麓あたりにある。
この山は「パヴォニス山」と「アスクレウス山」とともに「タルシス三山」を構成しており、火星の赤道に対してちょうど縦に並んでいる。
さらにタルシス三山と大きな三角形を結ぶような位置にあるのが、標高2万5000km(エベレストの3倍)にそびえる太陽系で最大の山「オリンポス山」だ。
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アガニッペ地溝帯はアルシア山の麓にある(青線)。アルシア山から縦に並ぶのが「タルシス三山」。その右側にある長い地形が太陽系最大級の渓谷「マリネリス溪谷」。また画像左上にあるのが太陽系最大の山「オリンポス山」だ/Image credit: USGS/CartoCosmos
ちなみにアガニッペ地溝帯自体は、アルシア山の地下に溜まっていたマグマが噴出し、地殻を押し上げ、地表を引き裂いた結果誕生した可能性が高い。
それがいつのことなのか、はっきりしたことは不明だ。NASAは以前、この火山が死火山となったのは約5000万年前のことと推定していた。
ところが、最近では5万年前の噴火の痕跡が発見されており、案外新しいものである可能性もあるそうだ。
似たような地溝は、タルシス地域とマリネリス溪谷に挟まれた迷路のような「ノクティス迷路」にも存在する。
タルシス地域の周辺は、地質学的に火星でもっともホットなエリアだ。
今年初めには、ノクティス迷路の隣に巨大な火山が発見されたほか、タルシス三山山頂に15万トン以上の凍った水があることも判明し、大いに注目された。
References:ESA - A snaking scar on Mars / Grand Canyon-size 'scar' on Mars revealed like never before in striking new satellite photos | Live Science / written by hiroching / edited by / parumo
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こちらは欧州宇宙機関(ESA)の火星探査機「マーズ・エクスプレス」がとらえた最新、かつ最高の「アガニッペ地溝帯」の画像だ。
シマウマのような縞模様をともなう深く長いこの渓谷は、大昔の激しい火山活動により地殻変動が起き、地表が裂けたことで誕生したと考えられている。
それはかつて火星でどのような地質学的な活動が起きていたのかを今に伝える貴重な手がかりとなる。
火星に刻まれた巨大な傷跡 アガニッペ地溝帯((Aganippe Fossa))が発見されたのは1930年、命名されたのは1976年。今回の画像は2023年12月13日にESAの火星探査機「マーズ・エクスプレス」によって撮影されたものだ。
巨大な爪で引っ掻かれたかのような、大地を切り裂く傷跡は、ところどころ切れているが、実際には長さ600kmに及ぶ帯状に陥没した地溝だと考えられている。
これは東京ー大阪間の距離よりも長く、地球最大級の渓谷グランドキャニオン(全長446km)よりも巨大だ。
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傷跡のように見えるアガニッペ地溝帯 / image credit:ESA//DLR/FU Berlin
アガニッペ地溝帯でとりわけ興味深いのは、この傷跡を境に周囲の風景が変化しているところだ。
左側は、でこぼことした山のような地形になっているが、右側は滑らかで、ESAいわく”シマウマ”のような縞模様が見える。
この対照的な違いは、アガニッペ地溝帯の右側は長年にわたって風の侵食を受けてきたことが原因だと考えられている。とはいえ、反対側がその影響を受けなかった理由は不明だ。
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[画像を見る] 激しい火山活動の痕跡 アガニッペ地溝帯はタルシス地域の死火山「アルシア山」の麓あたりにある。
この山は「パヴォニス山」と「アスクレウス山」とともに「タルシス三山」を構成しており、火星の赤道に対してちょうど縦に並んでいる。
さらにタルシス三山と大きな三角形を結ぶような位置にあるのが、標高2万5000km(エベレストの3倍)にそびえる太陽系で最大の山「オリンポス山」だ。
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アガニッペ地溝帯はアルシア山の麓にある(青線)。アルシア山から縦に並ぶのが「タルシス三山」。その右側にある長い地形が太陽系最大級の渓谷「マリネリス溪谷」。また画像左上にあるのが太陽系最大の山「オリンポス山」だ/Image credit: USGS/CartoCosmos
ちなみにアガニッペ地溝帯自体は、アルシア山の地下に溜まっていたマグマが噴出し、地殻を押し上げ、地表を引き裂いた結果誕生した可能性が高い。
それがいつのことなのか、はっきりしたことは不明だ。NASAは以前、この火山が死火山となったのは約5000万年前のことと推定していた。
ところが、最近では5万年前の噴火の痕跡が発見されており、案外新しいものである可能性もあるそうだ。
似たような地溝は、タルシス地域とマリネリス溪谷に挟まれた迷路のような「ノクティス迷路」にも存在する。
タルシス地域の周辺は、地質学的に火星でもっともホットなエリアだ。
今年初めには、ノクティス迷路の隣に巨大な火山が発見されたほか、タルシス三山山頂に15万トン以上の凍った水があることも判明し、大いに注目された。
References:ESA - A snaking scar on Mars / Grand Canyon-size 'scar' on Mars revealed like never before in striking new satellite photos | Live Science / written by hiroching / edited by / parumo
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