
中国に特殊な超高層ビルがあるのをご存じだろうか。なんとこのビル、高さ約600mと世界屈指の高さを誇るが、実際は作りかけの廃ビルで、現地では「世界一高い未完の高層ビル」とも呼ばれている。
天津市郊外にある高層建築、その名も「高銀金融117」は、2008年に着工したものの、その後はろくに工事が進まず、もう10年近くも放置されたまま。
順調にいけば2014年に完成するはずだった。完成すれば「中国で3番目に高いビル」となり、世界一高い「ブルジュ・ハリファ」に次ぐマンションになるはずだった高銀金融117にせまってみよう。
高さ597m。なのに未完の超高層ビル「金銀金融117」 中国の中心都市の一つ、天津の郊外にある作りかけの超高層ビル「金銀金融117(Goldin Finance 117)」の高さはなんと597m。
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現在、世界で最も高い廃墟ビルともといわれている。
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Goldin Finance 117 Tower in Tianjinr
かつて注目の不動産プロジェクトだったものの、工事はたびたび中断。さらに未完のまま時が過ぎ、今では「誰一人住むこともなく朽ちてゆく世界屈指の超高層建築」として有名なのだ。2008年から6年で完成のはずが中断が相次ぎ放置に このビルの工事が始まったのは2008年。完成は6年後の2014年と見積もられていたが、大不況のあおりを受け、その計画はわずか2年で中断された。
その翌年、2011年に再び工事が始まったが、経済的困難や資金不足でたびたび中断。完成も2014年から2018年以降に延期された。
ところがその後も、工事はたいした進まなかった。話によると、せめて最大のウリである高さを誇示するため、骨組みだけは頂上まで組み、見ためはなんとか取り繕ったものの、中身はほとんど空っぽの張りぼて状態だという。
さらに2015年9月の時点でも工事は再び止まっていたそうで、今では工事用クレーンもそのままに、工事業者も立ち去った無人の廃墟と化している。
当時のイメージ図
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image credit:Goldin Properties Holdings
居住階はブルジュ・ハリファに次ぐ高さ 金銀金融117は、その名のとおり地上117階建てで、住宅やホテルの他、商業施設とオフィスも入る複合施設として設計された。またその居住階は最上階まで設けられるようになっていた。
このように最上階を居住スペースにできる設計は、その時期存在した超高層ビルの中では珍しかった。
一方、その頃ドバイで完成にこぎつけたブルジュ・ハリファ(2004年着工で2010年開業。高さ約828m の世界一高い高層ビル)は163階建てだったが、居住階は最高108階までだった。
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そのため居住できる高さだけを比較すると、金銀金融117のほうがわずか50cmほど低いという意外な結果に。
つまり、完成すれば「世界一高い高層ビル、ブルジュ・ハリファに次ぐ高さ」で暮らせる超高級タワマン、みたいなふれこみで売り出す算段だったようだが、それも完成しなければ意味がなかった。
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金銀金融117はなぜ未完?失敗の原因 この失敗の要因については様々な声がある。
まず多いのが、香港拠点の開発業者ゴールディン グループが新参者のわりに強気で、中国政府の支援も見込めないのに100億ドルからのプロジェクト全体を自己資金でカバーするというハイリスク・ハイリターンな勝負に出たこと。
そこに2008年の金融危機が起き、2011年に事態は好転しかけたが、今度は株式バブルの崩壊で2015年以降、すべての建設作業が中止となった。以後資金不足の連続で、経営陣は株価の暴落をどうすることもできず、同グループの会長は自身の財産の130億ドルを失った。
だが一方で、もともと立地が悪かったという見解もある。天津市は中国の中心都市の一つだが、大都市というわけでもなかった。
その郊外にいきなりぽつんと建った豪華な超高層ビルはあまりにも場違いで、ゴールディン グループが見込んでいたエリート層の興味をさほど惹かなかったのではないか、というもの。
つまり企画からして読みが甘かったという厳しい批評だ。世界で最も高い未完で廃墟のビル そんな経緯から、金銀金融117は、とにかく目立つ作りかけの超高層ビルと化し、不動産業や中国政府に失敗を想起させる象徴的な建物となった。
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ただ、純粋に高さだけなら、およそ600mという世界屈指の高層建築とみなす声もある。
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しかし未完はやっぱり未完なため、今は地元でも「世界で最も高い未完で廃墟のビル」と揶揄されている。
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The Story Behind China’s 600-Metre Abandoned Skyscraper
中国は、2021年に今後建設する高層ビルの規模と数を大幅に制限する法令を全土に発布した。高さ250m以上の建築物の新設を厳しく制限し、500mを超える建築物の建設を禁止にしたのだ。
したがって金銀金融117は、中国においてしばらくの間「国内で最も高い建設途中の高層ビル」にもなりそうだ。
何とも皮肉な話だが、今の中国にはまるごと廃墟化しつつあるこの巨大なビルが、ある種の教訓になるかもしれないしそうでもないのかもしれない。
References:odditycentral / wikipedia /toolbiruなど /written by D/ edited by parumo
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天津市郊外にある高層建築、その名も「高銀金融117」は、2008年に着工したものの、その後はろくに工事が進まず、もう10年近くも放置されたまま。
順調にいけば2014年に完成するはずだった。完成すれば「中国で3番目に高いビル」となり、世界一高い「ブルジュ・ハリファ」に次ぐマンションになるはずだった高銀金融117にせまってみよう。
高さ597m。なのに未完の超高層ビル「金銀金融117」 中国の中心都市の一つ、天津の郊外にある作りかけの超高層ビル「金銀金融117(Goldin Finance 117)」の高さはなんと597m。
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現在、世界で最も高い廃墟ビルともといわれている。
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Goldin Finance 117 Tower in Tianjinr
かつて注目の不動産プロジェクトだったものの、工事はたびたび中断。さらに未完のまま時が過ぎ、今では「誰一人住むこともなく朽ちてゆく世界屈指の超高層建築」として有名なのだ。2008年から6年で完成のはずが中断が相次ぎ放置に このビルの工事が始まったのは2008年。完成は6年後の2014年と見積もられていたが、大不況のあおりを受け、その計画はわずか2年で中断された。
その翌年、2011年に再び工事が始まったが、経済的困難や資金不足でたびたび中断。完成も2014年から2018年以降に延期された。
ところがその後も、工事はたいした進まなかった。話によると、せめて最大のウリである高さを誇示するため、骨組みだけは頂上まで組み、見ためはなんとか取り繕ったものの、中身はほとんど空っぽの張りぼて状態だという。
さらに2015年9月の時点でも工事は再び止まっていたそうで、今では工事用クレーンもそのままに、工事業者も立ち去った無人の廃墟と化している。
当時のイメージ図
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image credit:Goldin Properties Holdings
居住階はブルジュ・ハリファに次ぐ高さ 金銀金融117は、その名のとおり地上117階建てで、住宅やホテルの他、商業施設とオフィスも入る複合施設として設計された。またその居住階は最上階まで設けられるようになっていた。
このように最上階を居住スペースにできる設計は、その時期存在した超高層ビルの中では珍しかった。
一方、その頃ドバイで完成にこぎつけたブルジュ・ハリファ(2004年着工で2010年開業。高さ約828m の世界一高い高層ビル)は163階建てだったが、居住階は最高108階までだった。
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そのため居住できる高さだけを比較すると、金銀金融117のほうがわずか50cmほど低いという意外な結果に。
つまり、完成すれば「世界一高い高層ビル、ブルジュ・ハリファに次ぐ高さ」で暮らせる超高級タワマン、みたいなふれこみで売り出す算段だったようだが、それも完成しなければ意味がなかった。
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金銀金融117はなぜ未完?失敗の原因 この失敗の要因については様々な声がある。
まず多いのが、香港拠点の開発業者ゴールディン グループが新参者のわりに強気で、中国政府の支援も見込めないのに100億ドルからのプロジェクト全体を自己資金でカバーするというハイリスク・ハイリターンな勝負に出たこと。
そこに2008年の金融危機が起き、2011年に事態は好転しかけたが、今度は株式バブルの崩壊で2015年以降、すべての建設作業が中止となった。以後資金不足の連続で、経営陣は株価の暴落をどうすることもできず、同グループの会長は自身の財産の130億ドルを失った。
だが一方で、もともと立地が悪かったという見解もある。天津市は中国の中心都市の一つだが、大都市というわけでもなかった。
その郊外にいきなりぽつんと建った豪華な超高層ビルはあまりにも場違いで、ゴールディン グループが見込んでいたエリート層の興味をさほど惹かなかったのではないか、というもの。
つまり企画からして読みが甘かったという厳しい批評だ。世界で最も高い未完で廃墟のビル そんな経緯から、金銀金融117は、とにかく目立つ作りかけの超高層ビルと化し、不動産業や中国政府に失敗を想起させる象徴的な建物となった。
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ただ、純粋に高さだけなら、およそ600mという世界屈指の高層建築とみなす声もある。
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しかし未完はやっぱり未完なため、今は地元でも「世界で最も高い未完で廃墟のビル」と揶揄されている。
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The Story Behind China’s 600-Metre Abandoned Skyscraper
中国は、2021年に今後建設する高層ビルの規模と数を大幅に制限する法令を全土に発布した。高さ250m以上の建築物の新設を厳しく制限し、500mを超える建築物の建設を禁止にしたのだ。
したがって金銀金融117は、中国においてしばらくの間「国内で最も高い建設途中の高層ビル」にもなりそうだ。
ていうかこれ崩れてきたら大変だな。
何とも皮肉な話だが、今の中国にはまるごと廃墟化しつつあるこの巨大なビルが、ある種の教訓になるかもしれないしそうでもないのかもしれない。
References:odditycentral / wikipedia /toolbiruなど /written by D/ edited by parumo
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