
海王星よりも外側にある太陽系外縁部の領域は依然として謎に包まれている。太陽の光がほとんど届かない暗い領域には、正体不明の天体が潜んでいる可能性が高いのだ。
今回、日本国立天文台が運用する「すばる望遠鏡」などにより、太陽系外縁天体「セドノイド」に属する4番目の天体が新たに発見された。
「アンモナイト(2023 KQ14)」と名付けられたそのセドノイドは、シミュレーションにより、45億年前からほぼ不変の軌道を保ち、太陽系黎明期(れいめいき)の記憶をとどめている「化石」であることが示された。
それはまた、太陽系のどこかに存在するとされる未知の第9惑星の存在や太陽系の成り立ちを解明する手掛かりになると期待されている。
この研究は『Nature Astronomy[https://www.nature.com/articles/s41550-025-02595-7]』(2025年7月14日付)に掲載された。
太陽系の果てにある天体「セドノイド」
太陽系の惑星としては一番外側にある海王星は、太陽と地球の距離(これを「1天文単位/AU」という)の30倍も遠くにある。だが、そんな最遠の惑星のさらに向こうにも、太陽系に所属する天体は存在する。
そのうち海王星の2倍近く(50AU以上)遠くにあり、太陽を1周するのに2800年もかかるような天体を「セドノイド[https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%BB%E3%83%89%E3%83%8E%E3%82%A4%E3%83%89]」という。
こうした天体は、遠くにあるために暗く、滅多に発見されることはない。そのため小惑星「セドナ」をはじめ、これまでたった3個しか知られていなかった。
ところが2023年、ハワイ島マウナケア山頂にある「すばる望遠鏡」によって、4個目の「セドノイド」が発見されたのだ。
その詳細な軌道は、後にカナダ・フランス・ハワイ望遠鏡によっても確認された。
海王星のはるか向こうで見つかった太陽系の化石
この発見をした探査プロジェクト「FOSSIL(Formation of the Outer Solar System: An Icy Legacy)」は、太陽系初期の記憶をとどめる天体、すなわち”太陽系の化石”の捜索を目的に掲げる、日本と台湾を中心とする国際プロジェクトだ。
新たに発見されたセドノイドもそんな化石であり、「アンモナイト(2023 KQ14)」という愛称が与えられている。
その直径は220~380kmで、太陽を2800年以上もの長い時間をかけて1周する。
国立天文台のシミュレーションによると、アンモナイトは、太陽系が形成されて間もない約45億年前からほぼ現在まで、安定した軌道を保ってきただろうことが分かっている。
ただし現在の軌道は、ほかのセドノイドとは少々違うものになっている。どうやら42億年前に太陽系で何か大事件が起きたようなのだ。
太陽系第9惑星「プラネット・ナイン」は存在するのか?
このことは太陽系9番目となる仮説上の惑星「プラネット・ナイン」が存在する可能性を低めるものであるという。
シミュレーションによると、仮にプラネット・ナインが存在したとしても、それはこれまでの説よりもさらに外側になる可能性が濃厚だ。
しかも、アンモナイトの軌道がほかのセドノイドと違う理由をきちんと説明できるような存在でなければならない。
国立天文台 黄宇坤氏によるなら、アンモナイトの軌道がズレたのは、かつて存在したが、どこかの時点で太陽系から追い出された惑星が原因かもしれないという。
だとするなら、プラネット・ナインはもう太陽系にはないのかしれない。
いずれにせよ、アンモナイトのような海王星の重力も届かない遠方にある大きな天体は、太陽系初期に何か特殊な出来事があっただろうことを告げている。
それは太陽系の歴史の全貌を明らかにするうえで大切な手がかりであるとのことだ。
References: Nao.ac.jp[https://www.nao.ac.jp/news/science/2025/20250715-subaru.html] / A Rare Object Found Deep in the Kuiper Belt[https://www.universetoday.com/articles/a-rare-object-found-deep-in-the-kuiper-belt]
本記事は、海外で報じられた情報を基に、日本の読者に理解しやすい形で編集・解説しています。