太陽系の外から飛来し、現在地球へと接近中の恒星間天体「3I/ATLAS(スリーアイ・アトラス)」に関して、NASAのハッブル宇宙望遠鏡の新たな観測から、思わぬ発見をしたという。
ハーバード大学の天体物理学者アヴィ・ローブ教授は、この天体が自ら光を発している可能性があるとの見解を示し、注目を集めている。
3I/ATLASは、これまでに発見された『オウムアムア』、『2I/ボリソフ』に続く3番目の恒星間天体であり、その進路や構造にはいくつもの不可解な点が残されている。
その正体をめぐっては天文学界でも議論が続いており、ローブ教授は「地球外知的生命体が送り込んだ宇宙船の可能性がある」との仮説も唱えている。
第三番目の恒星間天体「3I/ATLAS」の存在を確認
地球近傍天体の監視プロジェクト「ATLAS」に参加するチリの観測所は、2025年7月、太陽系の外から飛来し、現在太陽の方向へ向かって高速で接近している天体「3I/ATLAS(スリーアイ・アトラス)」の存在を確認した。
その後、世界中の天文学者たちが過去の観測データを調べたところ、2025年6月14日にはすでに軌道上にあったことが確認された。
これは、『オウムアムア』、『2I/ボリソフ』に続いて発見された、3番目の恒星間天体である。
恒星間天体とは、特定の恒星の重力に縛られておらず、宇宙空間を自由に移動している天体のことを指す。
多くの天体は恒星の周囲を回る「惑星」や「彗星」などとして存在しているが、恒星間天体はそうした軌道に属さず、別の星系から飛来していると考えられている。
太陽系を訪れること自体が極めてまれで、観測されるのは非常に貴重な機会となる。
3I/ATLASが自ら光を発している?
その後、2025年7月21日に、NASAのハッブル宇宙望遠鏡の広視野カメラによって撮影された3I/ATLASの画像が公開された。
そこには、3I/ATLASの進行方向、つまり太陽に向かう前方に、ぼんやりと光が広がっている様子が映っていた。
一般的な彗星であれば、太陽の熱によって蒸発したガスや塵が太陽とは反対方向に押し出され、「尾」として形成される。
しかし、3I/ATLASにはそのような明確な尾が見当たらず、かわりに進行方向、つまり太陽側に光の広がりが見られた。これは、通常の彗星とは異なる挙動である。
この観測結果を受け、ハーバード大学の天体物理学者アヴィ・ローブ教授は、自身のブログ[https://avi-loeb.medium.com/does-3i-atlas-generate-its-own-light-e9775594afc5]でひとつの仮説を示した。
それによると、ハッブルがとらえた3I/ATLASの明るさの分布は、「天体の核そのものが主な光源となっている」という解釈がもっとも単純であるという。
つまり、私たちが見ている明るさは太陽光の反射ではなく、天体自体から放たれている可能性があるという。
もしこの仮説が正しければ、光を反射するために大きな表面積が必要だという従来の前提は成り立たず、より小さな天体でも同じ明るさを持つことが可能になる。
ローブ教授はこの点から、3I/ATLASの実際の大きさはこれまでの推定よりもずっと小さいかもしれないと述べている。
そしてそのサイズは、2017年に観測された最初の恒星間天体『オウムアムア』や、2019年に確認された2例目の『2I/ボリソフ』と同程度である可能性があるという。
3I/ATLASの光の正体は?2つの仮説
ローブ教授は、3I/ATLASの光の正体について2つの仮説を提示している。
ひとつは、この天体が超新星の中心核から飛び出した破片であるというものだ。
超新星とは、寿命を迎えた恒星が爆発して周囲に物質を放出する現象で、そこから放出された断片の中には、放射性物質を多く含んでいるものも存在する。
3I/ATLASがそうした破片であれば、太陽光を反射するのではなく、放射性崩壊によって自ら光を放っている可能性がある。
しかしこの仮説についてローブ教授は、天体がそのような構成を持つ可能性は非常に低いと述べており、自然現象としてはまれなケースだと考えている。
もうひとつの仮説は、とても大胆なものである。
ローブ教授は、3I/ATLASが原子力エネルギーで推進する宇宙船である可能性にも言及している。
星間空間を長い時間かけて移動するうちに、天体の表面には塵や微小粒子が蓄積した可能性があり、それが太陽の熱によって加熱され、進行方向から蒸発しているように見えるのではないかという。
つまり、前方に広がる光はエネルギーの排出ではなく、宇宙船の表面に付着した汚れが蒸発している現象かもしれないという解釈である。
もちろん、こうした人工物説についてはあくまで仮説の一つにすぎず、現時点では確たる証拠は存在しない。
ローブ教授もこの点を認めており、仮説の検証には、より詳細で直接的な観測が必要だとしている。
知的生命体の痕跡を調べるガリレオ・プロジェクト
アヴィ・ローブ氏は、ハーバード大学の天体物理学者であり、恒星間天体や地球外生命の痕跡を追う先駆的研究で知られている。
2017年に太陽系を通過した「オウムアムア」を人工物の可能性があると提唱して注目を集めた。
2023年には、2014年にパプアニューギニア沖に落下した隕石「IM1」の海底捜索を率い、磁気を帯びた球状粒子などを発見している。
こうした活動は「ガリレオ・プロジェクト」と呼ばれ、宇宙に存在する知的生命体の技術的痕跡(テクノシグニチャー)の解明を目指している。既存の枠にとらわれず、科学的探究を貫く姿勢は支持と議論を呼び続けている。
References: Medium.com[https://avi-loeb.medium.com/does-3i-atlas-generate-its-own-light-e9775594afc5] / Futurism[https://futurism.com/interstellar-object-light]
本記事は、海外で公開された情報の中から重要なポイントを抽出し、日本の読者向けに編集したものです。











