2021年8月27日から29日の3日間、さいたまスーパーアリーナにて“Animelo Summer Live 2021 -COLORS-”が開催。昨年から延期となり、2年ぶりの開催となったアニソンの祭典・“アニサマ”。
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続々と繰り広げられた、アニメの世界と現実を音楽で繋ぐステージ
DAY1同様に、テーマソング「なんてカラフルな世界!」の1フレーズ“オマエナニサマ!?オレアニサマ!”のフレーズとともに出演アーティストが次々紹介される華やかなOP映像を経て、まずは炎が燃え盛るなか真紅の衣装に身を包んだ栗林みな実とGRANRODEOが登場。伝説的アニソンで幕を開けたDAY1に対し、DAY2は平成・令和をまたぐ新しい伝説を作った「紅蓮華」のカバーで開幕。
熱い歌声やギタープレイをぶつけ合うと、そのままGRANRODEOがステージに残り「情熱は覚えている」からステージスタート。入りこそオリエンタルさの強いミドルナンバーだが、サビはシャウトを含め引き続き鋭く熱いものに。e-ZUKA(g)もギターを思い切りかき鳴らして熱さを与える。また、曲明けのMCでは来場者へのエールや、開催に辿り着いたことへの素晴らしさをKISHOW(vo)が語ると、もう1曲ヘビーなサウンドのロックナンバー「セツナの愛」を披露。こちらも熱く力強く歌唱し、サビのコール部分は観客に代わってe-ZUKAが代弁。最後は2階ステージへ伸びる階段の上方からジャンプエンドを決めて、オーディエンスを沸かせた。
その空気を受け継いだのは、『ARGONAVIS from BanG Dream!』発のバンド・GYROAXIA。作中にも登場した“ディスティニー・ロック・フェス”への出演になぞらえて登場すると、1曲目「MANIFESTO」から激しいミクスチャーロックに乗せて、旭 那由多(vo)を演じる小笠原 仁が刺々しい歌声をぶちかます。
ソロ初出場となる鈴木愛奈は、歌唱後に「いつも通りの“アニサマ”が帰ってくるよう願って」と選曲理由を述べた「渡月橋 ~君想ふ~」のカバーからスタート。一足早い紅葉のように赤く染まった客席に向かって美しく伸びある歌声を響かせると、TVアニメ『はてな☆イリュージョン』EDテーマ「ヒカリイロの歌」へ。この曲での歌声はハイテンポなサウンドにマッチする、非常に力強いもの。短いながらも胸に染み渡る、温かさと優しさを乗せたサビ終盤の“愛って”という1フレーズをはじめそこに豊かに感情を乗せるのと同時に、表情にはこの場に立てた嬉しさも溢れていた。
さっきまでのテイストとは対照的なハードなロック「No Continue」で、鬼頭明里が登場。ラップ部分も織り込まれた楽曲に沿って荒さも随所でみせることでかっこよさを印象づける一方で、歌声にはピンと張った1本のピアノ線のような揺るがぬ芯々透明感も。その透明感がより活きたのが、2曲目に歌唱した「Tiny Light」。序盤は感情抑えめに入り、曲の展開に合わせて着実に歌声をクレッシェンドし、真っ直ぐな歌声で観客を惹き込んでいく。派手な振付がなくても歌声の的確な狙いとアウトプットがあれば、曲ごとの異なる側面を活かしつつ全体としても魅力を引き立たせられる――ということも再認識させられるステージだった。
続いては、『ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうか』のヘスティア(CV:水瀬いのり)が映像で登場。
初出場となるhalcaは、まず最新曲「キミがいたしるし」を歌唱。キュートかつちょっとスパイシーな歌声をさらに少々粗めに振り、オンリーワンの魅力をスピード感ある楽曲にもマッチさせていく。その歌唱後、ステージ上で“Animelo Summer Live 2019 -STORY-”の出演者サインの入った赤い書物を見つけ、最後に書かれた呪文を詠唱すると、ステージに邪神ちゃん(演:鈴木愛奈)を召喚してしまう。そのまま邪神ちゃんと『邪神ちゃんドロップキック’』のオープニング「時としてバイオレンス」をデュエット!今度はhalcaが歌声を先ほどよりもキュートめに振ると、鈴木もキャラとして立ちながらも歌唱力の高さも滲ませ、ボーカルバトルを繰り広げた。
続くArgonavisも、作中の設定を現実で形にしてくれた出演者の1つ。スペシャルステージに登場した彼らは、『アルゴナビス from BanG Dream!』のオープニング「星がはじまる」を披露。
そして会場にひぐらしの鳴き声が響き渡ると、『ひぐらしのなく頃に業』OPテーマ「I believe what you said」のイントロ流れるなか前半のトリ・亜咲花が登場。ダークでミステリアスな曲に、巧みなボーカルワークで惹き込んでいく。しかもこの曲、イヤモニが故障し自身の声がまったく聴こえていなかったというから驚き。それをまったく感じさせなかった歌声から、シンガーとしての地力を改めて感じさせられた。さて、ここからは2年ぶりとなる会場での“ゆるっとしたキャンプ”タイム。トロッコに乗って1曲目とは真逆の太陽のような歌声で「Seize The Day」を歌い、観客の間近でエネルギーを与えていく。そうして草原のように緑に染まった会場を一周お散歩し歌い終わると、『ゆるキャン△』志摩リン役の東山奈央が登場!そのまま「SHINY DAYS」で、二人でハッピーな歌声を響かせていく。サビでは特別バージョンのダンスも見事に揃えて歌いきった。
後半戦のトップバッターは、客席後方の通路からトロッコに乗って登場した鈴木愛理。
そんな彼女の隣に“アニソン界の永遠の大型新人”こと鈴木雅之が登場すれば、待望の会場での「DADDY ! DADDY ! DO !」の披露がスタート。ムーディーかつソウルフルな美しい歌声をもって、二人のコンビネーションもしっかり活かして聴かせていく。そしてもう1曲、スタッフからのリクエストもあったという往年の名曲「ロンリー・チャップリン」を歌唱し、会場は夜の世界へ。特に鈴木雅之によるフェイクやアドリブも交えた歌声が、さらにムーディーな雰囲気に浸らせてくれた。
そんな夜の世界から夜明けへと向かうように、「歩いていこう!」で登場したのが東山奈央。夜明け前の星の瞬きのようなサイリウムの光を前に、優しさと温かさをしっかり乗せた歌声で場内を包み込む。歌唱後には、自身が昨年声優デビュー10周年を迎えたことから「今年しかできないセットリストを!」と宣言し、まずは『やはり俺の青春ラブコメはまちがっている。続』のEDテーマ「エブリデイワールド」を由比ヶ浜結衣としてソロ歌唱。ED映像にリンクするかのようにステージ中央に据えられた教室の椅子にそっと手を添え歌い終えると、続いては『はたらく魔王さま!』のOPテーマ「ZERO!!」。イントロ中に、同ナンバーを歌う栗林みな実が登場し、東山も佐々木千穂としてデュエット。TVアニメ第2期制作が決定したタイミングでの胸熱コラボだ。
そして栗林を送り出すと今度は雨宮天が登場し、東山は『ダンベル何キロ持てる?』のジーナ・ボイド、雨宮は同作の奏流院朱美としてのやり取りを展開。そこに鈴木愛理も交えて令和に爆誕した新定番曲「お願いマッスル」へ。ラップ部分はキャラクターとしてまっとうし、歌詞に合わせてサイドチェストなどのポージングも決めて大いに盛り上げてくれた。
想いを重ね、ハッピーな未来への希望で締め括られたDAY2
それに続くスタァライト九九組は、ステージにメンバーのうち八人が先に登場し、そこにリフトアップで小泉萌香(大場なな役)が加わり「再生讃美曲」からパフォーマンススタート。フォーメーションチェンジの巧みさで魅せつつ、美しいハーモニーを聴かせていく。生の舞台を重ねた九人ならではの、練度の高さが為せる技だ。さらにゴスペル調でカーテンコール感もある「私たちはもう舞台の上」でも同様に華麗なフォーメーションチェンジをみせ、ソロでは各人のアピールも交えて“ライブ”というよりまさに“歌劇”的なステージを展開する。そして九九組は今回もカバー曲を披露。今年は『ベルサイユのばら』主題歌「薔薇は美しく散る」を歌唱し、会場を赤く染め上げていった。
そんな赤の世界に登場した大黒摩季は、まず富永TOMMY弘明とともに「Anything Goes!」を披露。スタンドマイクを持ち振り回しながら力強い歌唱で会場の熱をさらに高めていくと、富永と入れ替わりにGRANRODEOと「あなただけ見つめてる」を歌唱。90年代バスケアニメの金字塔『SLAM DUNK』のEDテーマが、『黒子のバスケ』の主題歌を多数歌ってきたアーティストとのコラボで歌われるという歴史的な瞬間を迎える。
そして最後は鈴木雅之やスタァライト九九組とともに「ら・ら・ら」を歌い、往年の名曲で会場全体を1つにまとめてくれた。
J-POP界のレジェンドからバトンを受けたのは、長きにわたってアニソンシーンの第一線で活躍し続け、今年も新曲2曲を携えてきた栗林みな実。1曲目のデジタルロック「残酷な夢と眠れ」を、持ち前の煌めくような歌声に強さをぐっと込めて叩きつけていくと、歌唱後には“アニサマ”で歌える嬉しさについて「スタジオリハで泣きそうになった」というエピソードとともに語ると、もう1曲、自身初となる劇場アニメ主題歌となった「Just the truth」を歌唱。ミドルナンバーに一本芯の通った歌声を乗せて気持ちよく歌い上げると、後奏では晴れやかな微笑みとともに音にたゆたっていた。
TrySailは、波音とカモメの鳴き声響くなか、“アニサマ”という“港”に2年ぶりに到着。まずは最新ナンバーであるシリアスなデジタルチューン「誰が為に愛は鳴る」を、スタンドマイクを用いて力強く歌唱。曲明け「様々なカラーの曲を持ってきました!(麻倉もも)」と宣言すると、続いて「Free Turn」へ。同じくアグレッシブな曲だが、より未来や希望を感じさせる楽曲の中では三人の歌声もまた違うカラーへと変化する。
そしてラストナンバーへ……と思ったら、そのイントロが「HAPPY BIRTHDAY」へと変化し、誕生日当日だった雨宮天へのバースデーサプライズが!驚く雨宮の表情がモニターに映されるなか、浸る間もなく「adrenaline!!!」へと突入。年月を重ねド鉄板曲と化したこの曲で観客を楽しませ尽くしていく。後奏中には雨宮が「最高の誕生日になりました!」と笑顔で口にし、三人揃ってのジャンプエンドで締め括った。
続いては、スペシャルステージに登場したオーイシマサヨシの出番。「インパーフェクト」を1コーラス歌唱したのちトロッコに乗りメインステージに向かうと、その先にはDYNAZENONが。メインステージでDメロの最高音を高らかに響かせた隣で、天に拳を突き上げるDYNAZENONの姿も非常にエモい。曲明けには”“アニサマスタッフや観客、そしてこの日来られなかった“在宅組”への感謝を述べ、その想いを歌・パフォーマンスの両面に込めて「ロールプレイング」へ。“アニサマという名の住所は僕らの中にある”と歌詞を替え高らかに歌って胸を熱くさせながら、間奏のダンスでは「キンカンのうた」のポーズも織り込むオーイシは、やはりどこまでもエンターテイナーな存在だ。そこから一転、シリアスな空気の中で「英雄の歌」を歌唱。最初から力の限り歌う彼の姿と1サビ後の切実な表情は、思わず引き込まれるもの。心に響きまくる、全力のステージだった。
そしてDAY2のトリ・angelaは、2019年に亡くなった山内“masshoi”優のドラムセットとともにステージに。angelaのサポートバンドのメンバー、さらにはアニサマバンドのメンバーでもあった彼への黙祷を捧げると、彼がドラムを叩いていた曲を2連続で披露。「シドニア」では発声NGなルールを逆手に取って最初の「打ち砕け」をatsuko(vo)がAメロ直前まで力強く伸ばし歌い上げて惹きつけると、サイリウムの色が蒼く変わった「叫べ」も力強く歌って場内のボルテージを上げにもかかる。
曲明けには一転して普段どおり笑いどころも散りばめられたMC、そして振付講座から歌い始められたのは最新曲「アンダンテに恋をして!」。ダンスに加えて軽快なポップナンバーに乗せた観客のクラップも場内を包むと、そのままラストナンバー「乙女のルートはひとつじゃない!」へ。ゴージャスかつ勢いのあるハッピーソングが場内を巻き込んでいくと、1サビ後には出演アーティストが一気に登場してのコラボソングに。“きっと来るハッピーな未来にごきげんよう”のフレーズが終盤に来るこの曲が勢揃いで歌われる光景は、今年の“アニサマ”でのラストナンバーとしては最適解すぎた。
そのまま“アニサマ2021”テーマソング「なんてカラフルな世界!」を全員で歌唱。にぎやかにハッピーにDAY2は締め括られた……かと思いきや、ステージ上ではオーイシが万感の想いからか号泣。元々は“Animelo Summer Live 2020 -COLORS-”のテーマソングとして生み出された曲を、2年越しに会場で観客を前に歌えた感慨が、どんなときもエンターテイナーに徹してきた彼の心のダムを溢れさせるのも仕方のないこと。涙声で「サイコーの夏をありがとー!」と自分の言葉で2年分の想いを届け、改めてDAY2は大団円を迎えたのだった。
次々と多彩なCOLORがステージに現れグラデーションをなし、最後には想いの結晶がステージを彩ったDAY2。負けず劣らず豊かな個性とパワフルなボーカリストの集った最終日・DAY3の模様も、引き続きレポートをお届けする。ぜひお楽しみに!
TEXT BY 須永兼次
“Animelo Summer Live 2021 -COLORS-”DAY2
2021年8月28日(土)@さいたまスーパーアリーナ
【SET LIST】
M1. 紅蓮華 / GRANRODEO×栗林みな実
M2. 情熱は覚えている / GRANRODEO
M3. セツナの愛 / GRANRODEO
M4. MANIFESTO / GYROAXIA
M5. LIAR / GYROAXIA
M6. 渡月橋 ~君想ふ~ / 鈴木愛奈
M7. ヒカリイロの歌 / 鈴木愛奈
M8. No Continue / 鬼頭明里
M9. Tiny Light / 鬼頭明里
M10. over and over / 井口裕香
M11. 白金ディスコ / 井口裕香
M12. キミがいたしるし / halca
M13. 時としてバイオレンス / halca feat. 邪神ちゃん
M14. 星がはじまる / Argonavis
M15. STARTING OVER / Argonavis feat. 旭 那由多 from GYROAXIA
M16. I believe what you said / 亜咲花
M17. Seize The Day / 亜咲花
M18. SHINY DAYS / 亜咲花△東山奈央
M19. 恋愛♡ライダー / 鈴木愛理
M20. DADDY ! DADDY ! DO ! / 鈴木雅之 feat. 鈴木愛理
M21. ロンリー・チャップリン / 鈴木雅之 feat. 鈴木愛理
M22. 歩いていこう! / 東山奈央
M23. エブリデイワールド / 由比ヶ浜結衣
M24. ZERO!! / 栗林みな実×佐々木千穂
M25. お願いマッスル / ジーナ・ボイド&奏流院朱美 feat. 鈴木愛理
M26. 再生讃美曲 / スタァライト九九組
M27. 私たちはもう舞台の上 / スタァライト九九組
M28. 薔薇は美しく散る / スタァライト九九組
M29. Anything Goes! / 大黒摩季 feat. 富永TOMMY弘明
M30. あなただけ見つめてる / 大黒摩季×GRANRODEO
M31. ら・ら・ら / 大黒摩季 with 鈴木雅之 feat. スタァライト九九組
M32. 残酷な夢と眠れ / 栗林みな実
M33. Just the truth / 栗林みな実
M34. 誰が為に愛は鳴る / TrySail
M35. Free Turn / TrySail
M36. adrenaline!!! / TrySail
M37. インパーフェクト / オーイシマサヨシ
M38. ロールプレイング / オーイシマサヨシ
M39. 英雄の歌 / オーイシマサヨシ
M40. シドニア / angela
M41. 叫べ / angela
M42. アンダンテに恋をして! / angela
M43. 乙女のルートはひとつじゃない! / angela with ANISAMA FRIENDS
M44. なんてカラフルな世界! / アニサマ2021出演アーティスト
(c)Animelo Summer Live 2021
関連リンク
「Animelo Summer Live 」公式サイト
https://anisama.tv/2021/index.html
本稿ではDAY2の模様をお届け。この日しか観られなかったであろうレアなコラボが次々登場して盛り上げるなか、様々な“想い”が強く込められたステージが続き、観客の胸を熱くしてくれた。
【写真】ほかライブ写真はこちら
続々と繰り広げられた、アニメの世界と現実を音楽で繋ぐステージ
DAY1同様に、テーマソング「なんてカラフルな世界!」の1フレーズ“オマエナニサマ!?オレアニサマ!”のフレーズとともに出演アーティストが次々紹介される華やかなOP映像を経て、まずは炎が燃え盛るなか真紅の衣装に身を包んだ栗林みな実とGRANRODEOが登場。伝説的アニソンで幕を開けたDAY1に対し、DAY2は平成・令和をまたぐ新しい伝説を作った「紅蓮華」のカバーで開幕。
熱い歌声やギタープレイをぶつけ合うと、そのままGRANRODEOがステージに残り「情熱は覚えている」からステージスタート。入りこそオリエンタルさの強いミドルナンバーだが、サビはシャウトを含め引き続き鋭く熱いものに。e-ZUKA(g)もギターを思い切りかき鳴らして熱さを与える。また、曲明けのMCでは来場者へのエールや、開催に辿り着いたことへの素晴らしさをKISHOW(vo)が語ると、もう1曲ヘビーなサウンドのロックナンバー「セツナの愛」を披露。こちらも熱く力強く歌唱し、サビのコール部分は観客に代わってe-ZUKAが代弁。最後は2階ステージへ伸びる階段の上方からジャンプエンドを決めて、オーディエンスを沸かせた。
その空気を受け継いだのは、『ARGONAVIS from BanG Dream!』発のバンド・GYROAXIA。作中にも登場した“ディスティニー・ロック・フェス”への出演になぞらえて登場すると、1曲目「MANIFESTO」から激しいミクスチャーロックに乗せて、旭 那由多(vo)を演じる小笠原 仁が刺々しい歌声をぶちかます。
そのままシームレスに続けた「LIAR」でも切り裂くような歌声そのままに、那由多らしく大サビでほかのメンバーに「もっと!」とけしかけるような一幕もあった、絶対的強者の風格感じさせるステージに。ほかにも降壇時に界川深幸(ds)役・宮内告典だけ丁寧に一礼するなど、迫力とキャラクター性を両立させたステージをみせてくれた。
ソロ初出場となる鈴木愛奈は、歌唱後に「いつも通りの“アニサマ”が帰ってくるよう願って」と選曲理由を述べた「渡月橋 ~君想ふ~」のカバーからスタート。一足早い紅葉のように赤く染まった客席に向かって美しく伸びある歌声を響かせると、TVアニメ『はてな☆イリュージョン』EDテーマ「ヒカリイロの歌」へ。この曲での歌声はハイテンポなサウンドにマッチする、非常に力強いもの。短いながらも胸に染み渡る、温かさと優しさを乗せたサビ終盤の“愛って”という1フレーズをはじめそこに豊かに感情を乗せるのと同時に、表情にはこの場に立てた嬉しさも溢れていた。
さっきまでのテイストとは対照的なハードなロック「No Continue」で、鬼頭明里が登場。ラップ部分も織り込まれた楽曲に沿って荒さも随所でみせることでかっこよさを印象づける一方で、歌声にはピンと張った1本のピアノ線のような揺るがぬ芯々透明感も。その透明感がより活きたのが、2曲目に歌唱した「Tiny Light」。序盤は感情抑えめに入り、曲の展開に合わせて着実に歌声をクレッシェンドし、真っ直ぐな歌声で観客を惹き込んでいく。派手な振付がなくても歌声の的確な狙いとアウトプットがあれば、曲ごとの異なる側面を活かしつつ全体としても魅力を引き立たせられる――ということも再認識させられるステージだった。
続いては、『ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうか』のヘスティア(CV:水瀬いのり)が映像で登場。
彼女のお願いで黄色に変わったサイリウムの海の前に、同作3期のオープニング「over and over」を引っ提げ井口裕香がステージに登場。清涼感ある歌声に、オープニングらしく強さも込め歌唱していく。曲明けには“アニサマ”を“アニソンのお祭り”と呼び、お祭りらしくハッピを着用して「白金ディスコ」をセルフカバー。振付や歌声、間奏のセリフでキュートに魅せ聴かせる。比較的驚きの選曲のはずなのに、サビのクラップなどのタイミングが完璧で、会場には序盤にして早くも一体感が。さすがは“アニサマ”の観客だ。
初出場となるhalcaは、まず最新曲「キミがいたしるし」を歌唱。キュートかつちょっとスパイシーな歌声をさらに少々粗めに振り、オンリーワンの魅力をスピード感ある楽曲にもマッチさせていく。その歌唱後、ステージ上で“Animelo Summer Live 2019 -STORY-”の出演者サインの入った赤い書物を見つけ、最後に書かれた呪文を詠唱すると、ステージに邪神ちゃん(演:鈴木愛奈)を召喚してしまう。そのまま邪神ちゃんと『邪神ちゃんドロップキック’』のオープニング「時としてバイオレンス」をデュエット!今度はhalcaが歌声を先ほどよりもキュートめに振ると、鈴木もキャラとして立ちながらも歌唱力の高さも滲ませ、ボーカルバトルを繰り広げた。
続くArgonavisも、作中の設定を現実で形にしてくれた出演者の1つ。スペシャルステージに登場した彼らは、『アルゴナビス from BanG Dream!』のオープニング「星がはじまる」を披露。
Aメロ直前に五人が輪になって向き合う光景は、このバンドならではの絆感じるものだ。七星 蓮(vo)を演じる伊藤昌弘が爽やかな歌声を響かせると、曲終盤に通路からそれを見上げる姿が映し出された小笠原が歌唱後にステージに登場し、作中同様にツインボーカルで「STARTING OVER」の歌唱へ。ここでは向き合っての直接的なバトルというよりも360°取り囲んだオーディエンスに向けて各々歌声を響かせ、どちらがより沸かせられるかを競っていたようでもあった。
そして会場にひぐらしの鳴き声が響き渡ると、『ひぐらしのなく頃に業』OPテーマ「I believe what you said」のイントロ流れるなか前半のトリ・亜咲花が登場。ダークでミステリアスな曲に、巧みなボーカルワークで惹き込んでいく。しかもこの曲、イヤモニが故障し自身の声がまったく聴こえていなかったというから驚き。それをまったく感じさせなかった歌声から、シンガーとしての地力を改めて感じさせられた。さて、ここからは2年ぶりとなる会場での“ゆるっとしたキャンプ”タイム。トロッコに乗って1曲目とは真逆の太陽のような歌声で「Seize The Day」を歌い、観客の間近でエネルギーを与えていく。そうして草原のように緑に染まった会場を一周お散歩し歌い終わると、『ゆるキャン△』志摩リン役の東山奈央が登場!そのまま「SHINY DAYS」で、二人でハッピーな歌声を響かせていく。サビでは特別バージョンのダンスも見事に揃えて歌いきった。
後半戦のトップバッターは、客席後方の通路からトロッコに乗って登場した鈴木愛理。
自身がBuono!のメンバーとしてリリースした『しゅごキャラ!』EDテーマ「恋愛♡ライダー」を歌唱しながら通路を駆け抜けていき、メインステージではダンサー二人とともにダンスも交えて歌う。
そんな彼女の隣に“アニソン界の永遠の大型新人”こと鈴木雅之が登場すれば、待望の会場での「DADDY ! DADDY ! DO !」の披露がスタート。ムーディーかつソウルフルな美しい歌声をもって、二人のコンビネーションもしっかり活かして聴かせていく。そしてもう1曲、スタッフからのリクエストもあったという往年の名曲「ロンリー・チャップリン」を歌唱し、会場は夜の世界へ。特に鈴木雅之によるフェイクやアドリブも交えた歌声が、さらにムーディーな雰囲気に浸らせてくれた。
そんな夜の世界から夜明けへと向かうように、「歩いていこう!」で登場したのが東山奈央。夜明け前の星の瞬きのようなサイリウムの光を前に、優しさと温かさをしっかり乗せた歌声で場内を包み込む。歌唱後には、自身が昨年声優デビュー10周年を迎えたことから「今年しかできないセットリストを!」と宣言し、まずは『やはり俺の青春ラブコメはまちがっている。続』のEDテーマ「エブリデイワールド」を由比ヶ浜結衣としてソロ歌唱。ED映像にリンクするかのようにステージ中央に据えられた教室の椅子にそっと手を添え歌い終えると、続いては『はたらく魔王さま!』のOPテーマ「ZERO!!」。イントロ中に、同ナンバーを歌う栗林みな実が登場し、東山も佐々木千穂としてデュエット。TVアニメ第2期制作が決定したタイミングでの胸熱コラボだ。
そして栗林を送り出すと今度は雨宮天が登場し、東山は『ダンベル何キロ持てる?』のジーナ・ボイド、雨宮は同作の奏流院朱美としてのやり取りを展開。そこに鈴木愛理も交えて令和に爆誕した新定番曲「お願いマッスル」へ。ラップ部分はキャラクターとしてまっとうし、歌詞に合わせてサイドチェストなどのポージングも決めて大いに盛り上げてくれた。
想いを重ね、ハッピーな未来への希望で締め括られたDAY2
それに続くスタァライト九九組は、ステージにメンバーのうち八人が先に登場し、そこにリフトアップで小泉萌香(大場なな役)が加わり「再生讃美曲」からパフォーマンススタート。フォーメーションチェンジの巧みさで魅せつつ、美しいハーモニーを聴かせていく。生の舞台を重ねた九人ならではの、練度の高さが為せる技だ。さらにゴスペル調でカーテンコール感もある「私たちはもう舞台の上」でも同様に華麗なフォーメーションチェンジをみせ、ソロでは各人のアピールも交えて“ライブ”というよりまさに“歌劇”的なステージを展開する。そして九九組は今回もカバー曲を披露。今年は『ベルサイユのばら』主題歌「薔薇は美しく散る」を歌唱し、会場を赤く染め上げていった。
そんな赤の世界に登場した大黒摩季は、まず富永TOMMY弘明とともに「Anything Goes!」を披露。スタンドマイクを持ち振り回しながら力強い歌唱で会場の熱をさらに高めていくと、富永と入れ替わりにGRANRODEOと「あなただけ見つめてる」を歌唱。90年代バスケアニメの金字塔『SLAM DUNK』のEDテーマが、『黒子のバスケ』の主題歌を多数歌ってきたアーティストとのコラボで歌われるという歴史的な瞬間を迎える。
それもただ単に両雄並び立っただけではなく、ハモリも交え対等なバランスで歌われ融合していた点に、大きな価値があったように思った。
そして最後は鈴木雅之やスタァライト九九組とともに「ら・ら・ら」を歌い、往年の名曲で会場全体を1つにまとめてくれた。
J-POP界のレジェンドからバトンを受けたのは、長きにわたってアニソンシーンの第一線で活躍し続け、今年も新曲2曲を携えてきた栗林みな実。1曲目のデジタルロック「残酷な夢と眠れ」を、持ち前の煌めくような歌声に強さをぐっと込めて叩きつけていくと、歌唱後には“アニサマ”で歌える嬉しさについて「スタジオリハで泣きそうになった」というエピソードとともに語ると、もう1曲、自身初となる劇場アニメ主題歌となった「Just the truth」を歌唱。ミドルナンバーに一本芯の通った歌声を乗せて気持ちよく歌い上げると、後奏では晴れやかな微笑みとともに音にたゆたっていた。
TrySailは、波音とカモメの鳴き声響くなか、“アニサマ”という“港”に2年ぶりに到着。まずは最新ナンバーであるシリアスなデジタルチューン「誰が為に愛は鳴る」を、スタンドマイクを用いて力強く歌唱。曲明け「様々なカラーの曲を持ってきました!(麻倉もも)」と宣言すると、続いて「Free Turn」へ。同じくアグレッシブな曲だが、より未来や希望を感じさせる楽曲の中では三人の歌声もまた違うカラーへと変化する。
そしてラストナンバーへ……と思ったら、そのイントロが「HAPPY BIRTHDAY」へと変化し、誕生日当日だった雨宮天へのバースデーサプライズが!驚く雨宮の表情がモニターに映されるなか、浸る間もなく「adrenaline!!!」へと突入。年月を重ねド鉄板曲と化したこの曲で観客を楽しませ尽くしていく。後奏中には雨宮が「最高の誕生日になりました!」と笑顔で口にし、三人揃ってのジャンプエンドで締め括った。
続いては、スペシャルステージに登場したオーイシマサヨシの出番。「インパーフェクト」を1コーラス歌唱したのちトロッコに乗りメインステージに向かうと、その先にはDYNAZENONが。メインステージでDメロの最高音を高らかに響かせた隣で、天に拳を突き上げるDYNAZENONの姿も非常にエモい。曲明けには”“アニサマスタッフや観客、そしてこの日来られなかった“在宅組”への感謝を述べ、その想いを歌・パフォーマンスの両面に込めて「ロールプレイング」へ。“アニサマという名の住所は僕らの中にある”と歌詞を替え高らかに歌って胸を熱くさせながら、間奏のダンスでは「キンカンのうた」のポーズも織り込むオーイシは、やはりどこまでもエンターテイナーな存在だ。そこから一転、シリアスな空気の中で「英雄の歌」を歌唱。最初から力の限り歌う彼の姿と1サビ後の切実な表情は、思わず引き込まれるもの。心に響きまくる、全力のステージだった。
そしてDAY2のトリ・angelaは、2019年に亡くなった山内“masshoi”優のドラムセットとともにステージに。angelaのサポートバンドのメンバー、さらにはアニサマバンドのメンバーでもあった彼への黙祷を捧げると、彼がドラムを叩いていた曲を2連続で披露。「シドニア」では発声NGなルールを逆手に取って最初の「打ち砕け」をatsuko(vo)がAメロ直前まで力強く伸ばし歌い上げて惹きつけると、サイリウムの色が蒼く変わった「叫べ」も力強く歌って場内のボルテージを上げにもかかる。
曲明けには一転して普段どおり笑いどころも散りばめられたMC、そして振付講座から歌い始められたのは最新曲「アンダンテに恋をして!」。ダンスに加えて軽快なポップナンバーに乗せた観客のクラップも場内を包むと、そのままラストナンバー「乙女のルートはひとつじゃない!」へ。ゴージャスかつ勢いのあるハッピーソングが場内を巻き込んでいくと、1サビ後には出演アーティストが一気に登場してのコラボソングに。“きっと来るハッピーな未来にごきげんよう”のフレーズが終盤に来るこの曲が勢揃いで歌われる光景は、今年の“アニサマ”でのラストナンバーとしては最適解すぎた。
そのまま“アニサマ2021”テーマソング「なんてカラフルな世界!」を全員で歌唱。にぎやかにハッピーにDAY2は締め括られた……かと思いきや、ステージ上ではオーイシが万感の想いからか号泣。元々は“Animelo Summer Live 2020 -COLORS-”のテーマソングとして生み出された曲を、2年越しに会場で観客を前に歌えた感慨が、どんなときもエンターテイナーに徹してきた彼の心のダムを溢れさせるのも仕方のないこと。涙声で「サイコーの夏をありがとー!」と自分の言葉で2年分の想いを届け、改めてDAY2は大団円を迎えたのだった。
次々と多彩なCOLORがステージに現れグラデーションをなし、最後には想いの結晶がステージを彩ったDAY2。負けず劣らず豊かな個性とパワフルなボーカリストの集った最終日・DAY3の模様も、引き続きレポートをお届けする。ぜひお楽しみに!
TEXT BY 須永兼次
“Animelo Summer Live 2021 -COLORS-”DAY2
2021年8月28日(土)@さいたまスーパーアリーナ
【SET LIST】
M1. 紅蓮華 / GRANRODEO×栗林みな実
M2. 情熱は覚えている / GRANRODEO
M3. セツナの愛 / GRANRODEO
M4. MANIFESTO / GYROAXIA
M5. LIAR / GYROAXIA
M6. 渡月橋 ~君想ふ~ / 鈴木愛奈
M7. ヒカリイロの歌 / 鈴木愛奈
M8. No Continue / 鬼頭明里
M9. Tiny Light / 鬼頭明里
M10. over and over / 井口裕香
M11. 白金ディスコ / 井口裕香
M12. キミがいたしるし / halca
M13. 時としてバイオレンス / halca feat. 邪神ちゃん
M14. 星がはじまる / Argonavis
M15. STARTING OVER / Argonavis feat. 旭 那由多 from GYROAXIA
M16. I believe what you said / 亜咲花
M17. Seize The Day / 亜咲花
M18. SHINY DAYS / 亜咲花△東山奈央
M19. 恋愛♡ライダー / 鈴木愛理
M20. DADDY ! DADDY ! DO ! / 鈴木雅之 feat. 鈴木愛理
M21. ロンリー・チャップリン / 鈴木雅之 feat. 鈴木愛理
M22. 歩いていこう! / 東山奈央
M23. エブリデイワールド / 由比ヶ浜結衣
M24. ZERO!! / 栗林みな実×佐々木千穂
M25. お願いマッスル / ジーナ・ボイド&奏流院朱美 feat. 鈴木愛理
M26. 再生讃美曲 / スタァライト九九組
M27. 私たちはもう舞台の上 / スタァライト九九組
M28. 薔薇は美しく散る / スタァライト九九組
M29. Anything Goes! / 大黒摩季 feat. 富永TOMMY弘明
M30. あなただけ見つめてる / 大黒摩季×GRANRODEO
M31. ら・ら・ら / 大黒摩季 with 鈴木雅之 feat. スタァライト九九組
M32. 残酷な夢と眠れ / 栗林みな実
M33. Just the truth / 栗林みな実
M34. 誰が為に愛は鳴る / TrySail
M35. Free Turn / TrySail
M36. adrenaline!!! / TrySail
M37. インパーフェクト / オーイシマサヨシ
M38. ロールプレイング / オーイシマサヨシ
M39. 英雄の歌 / オーイシマサヨシ
M40. シドニア / angela
M41. 叫べ / angela
M42. アンダンテに恋をして! / angela
M43. 乙女のルートはひとつじゃない! / angela with ANISAMA FRIENDS
M44. なんてカラフルな世界! / アニサマ2021出演アーティスト
(c)Animelo Summer Live 2021
関連リンク
「Animelo Summer Live 」公式サイト
https://anisama.tv/2021/index.html
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