「Tokyo 7th シスターズ」や「D4DJ Groovy Mix」の開発などでも知られる株式会社DONUTSが手がけるスマートフォン向けアプリゲーム「ユアマジェスティ」。プロジェクト発表当初は謎に包まれていた内容がついにリリースを迎え、徐々に明らかに。
そして、リスアニ!WEBでは「RPG×音楽の魅力に迫る!」をテーマに連載中。

第3回目は魅力溢れるキャラクターを生み出したリードデザイナーのDONUTS・KOYANO氏に話を聞く。総勢24人もの王たちはどのようにして生まれたのか。「ユアマジェスティ」の世界へとユーザーを誘うために、彼らにどんな想いを込めたのか――。

INTERVIEW & TEXT BY えびさわなち

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【連載】「正義」と「狂気」がテーマのRPG「ユアマジェスティ」――RPG×音楽の魅力に迫る!


絵を描きたいという想い。そして「ユアマジェスティ」との出会い
――まずはゲームのお仕事をされるようになったきっかけを教えてください。


KOYANO 元々美術をやっていて、ゲーム業界に入りたいなと思ってはいました。最初はUI(ユーザーインターフェース)から入ったものの、半年くらい仕事をした頃に「絵を描きたい」と思うようになり、路線を変更したんです。今から12、13年前くらいにキャラクターに関わるお仕事をするようになりました。その頃は全然上手に描けなくて、周りの方に面倒を見てもらいながら版権物の絵寄せの仕事(イラストを描く仕事)をやらせてもらっていくなかで作画監督というポジションもいただくようになって。今から2年前にDONUTSに転職しまして、それまでの経験を活かしながら働いております。

――そして「ユアマジェ」との出会いがあった。


KOYANO はい、DONUTSで新規案件をやるということで、ディレクターの塚口(綾子)さんから「キャラクターデザインはどうですか?」と声をかけてもらいました。。一旦、社内コンペに参加させていただき、そこで出したキャラクターデザインからリードデザイナーとして関わることになりました。

――「ユアマジェ」のリードデザイナーへとKOYANOさんを導いた社内コンペですが、最初のお題はどんなものだったのでしょうか。

KOYANO 「高級感のある王様を描いてください」というものが表向きのテーマでしたが、裏テーマとしては「魅力的な女性に踏まれてもいい」というワードがありました。最初のコンペで描いたのがカンタレラだったのですが、踏まれるのなら素足がいいなと思って、裸足に白いサンダルを履いた女の子を描きました。


――裏テーマも最初からあったんですか?

KOYANO 最初にコンペの参加者が集められて、口頭でその説明を受けました。

――最初に描かれたラフがカンタレラだったとのことですが、それはご自身が候補の王の中から選ばれたのでしょうか?

KOYANO そうです。最初に6人のキャラクターのプロフィールをいただいて、そのなかで好きなものを選んでくださいとのことだったのでカンタレラを選びました。

――そのカンタレラを描く際に意識したのはどんなことでしたか?

KOYANO いくつかあるのですが、カンタレラの前世のモデルになった人物が「一族で毒を扱っていた、という説をとる」という設定だったんです。蠱惑的で少し陰のある感じが出るように、そして仕草や表情に品を感じるような姿を意識しました。あとは「膝」です。


――膝!?

KOYANO カンタレラは「少女っぽい雰囲気で描いてください」という内容だったので、少女といえばきれいな膝だろうと思って、最初に膝を、そして素足を描いてから豪奢なサンダルでデコレーションされているスタイルにしようと思いました。当時塚口さんと「膝は少女の特権なので」と、語ったことがありまして。ドレスを描いてほしい塚口さんと、膝を出したい私自身の想いの葛藤が衣装に出たのがカンタレラでした。とにかく脚を見せたいという想いがあったんです。王族のドレスってボディラインが隠れてしまうんですよね。もう少しボディラインが出る形だと魅力にも繋がると思っていたので、絶対に脚を出したいと思っていました。



全24人の王、そして彼らを取り巻く人々が生まれた背景とは
――コンペを経てリードデザイナーとしてコンテンツを引っ張っていく立場になられました。作品に対して、コンペに向き合っていた頃にはどんな印象がありましたか?

KOYANO 「王道のRPGを作りたい」というお話だったのですが、たしかに王道感はありつつも、元々塚口さんの作品を知っていたので一癖も二癖もあるんだろうなぁということは思っていました。最初にすでに世界観の設定があったのですが、想像していたものとは違って、王道RPGだけどSFっぽさもある。そこは面白い組み合わせだなと感じていました。

――そこからデザイナーとして関わられていかれたKOYANOさんですが、制作中の打ち合わせなどで出た印象的なキーワードや表現はありましたか?

KOYANO ディレクターにはいろんなタイプがいると思うんですが、塚口さんはキャッチボールをしながら作っていくタイプの人で、迷ったときには道筋を明瞭に出してくれるし、こちらの投げ返しが変化球になっていても受け止めて、お互い話し合えたのは制作しやすかったです。

――迷われたのはどんなことでしたか?

KOYANO キャラクターが24人もいるので、雰囲気が被ってしまったこともあったんです。
自分的には似ている気はしていなかったのですが、出した際に周囲からの反応として「被ってない?」ということもあって。ただ、そういうときにはキャラクターの設定自体をガラリと変えてもらったこともあったんです。例えばルルとアンジューはそうでしたね。そういった経緯については面白いな、と思っていました。キャラクターの設定を変えちゃうのか!と。最初はルルも現在のアンジューのような方向性で組み立てていたので、今のようなルルになっていく過程は面白かったですね。初稿ではもっとお姉さんっぽい感じで描いていたんです。キャラクターの入れ替えがあったことで、既存のイメージとは違った姿になったのかなと思います。あとはイラストをたくさん描いていく際のこともすごく考えました。

――というと?

KOYANO 王様なので衣装についても緻密に作ると思うのですが、その後、色々なイラストを描いていくときに「イラストを描き続けていく将来、苦労しすぎないようにしたい」と思い、衣装のデザインを担当してくださった方に「簡略化してください!簡略化してください!」と何度もお願いしていた記憶があります。

――女性は脚やデコルテ、露出部分なども意識されたかと思いますが、クロードをはじめとした男性キャラクターについてはどのようなことを注視されましたか?

KOYANO キャラクターの性格が姿から出るといいなと思っていました。ちょっと面白かったのはシノンです。最初は正統派なイケメンのつもりで描いていたのですが、結構不幸なキャラクターでかなり罪の意識を内側に持っているキャラクターでもあるので「目つきを悪くしてください」といったオーダーを受け取るたびにどんどん正統派イケメンから外れていったんです。最終的には性格が姿にあらわれた、いい意味で一味違うイケメンになったと思います。これこそが女子向けではないアプローチでもあるんだろうなと思いました。

――全部で24人もいる王たちですが、キャラクターデザインにはどれくらいの時間を要したのでしょうか。

KOYANO 1日2体で2日ずつやっていたので、2ヵ月くらいでした。立ち上げからフィックスまでそれくらい掛かりましたが、その間もほかの仕事もしていた感じだったので、おそらく実質的には1ヵ月くらいで王24人をはじめ、小役人や評議会メンバー……30人くらいのキャラクターデザインをしたのかなと思います。先程もお話をしましたが、迷ったときにも道筋を示してもらえる環境も大きかったので、それくらいの時間で出来たんだろうと思います。


性格が良いから狂気の表情が描けない……!?
――「ユアマジェ」の世界観は王たちの姿が象徴的だと感じますが、彼らの姿から世界観を届けるために大切にされたのはどんなことですか?

KOYANO 最初は王道でロイヤルかつ鮮やかな印象のものを作ろうと思っていました。王様の肖像画という部分を意識し、絵画的な手法や技法を取り入れてコンセプトアートを作成いたのですが、途中でタイラントについて考えていくときに、タイラントでは逆に裏テーマにあるSFチックでサイバー感あるものを強く意識するようになりました。グリッジというノイズが走るようなエフェクトを入れたり、バグって背景がジャキジャキと歪むようなところを取り入れたいな、と。最初は正統派な見た目ですが、裏でガラッと変わるというビジュアルがコンテンツのフックになるなと思いましたね。

――今、話題にも上がった「コンセプトアート」。MVにも登場するこのイラストは絵画的でありアートとしても完成されたものですが、これもまた「ユアマジェ」の個性だと感じます。最も意識するのはどんなところですか?

KOYANO 狂気の顔の部分はかなり個性として強いものになっていると思っています。最初の頃は狂気の顔を描いて渡しても「まだ弱い」と言われ続けた記憶があります。最終的には「KOYANOさんって性格が良いんだね」という感じの言い方になっていき……(笑)。「性格が良いから私には狂気の顔が描けないのか!?違うだろう!」と自分に問いかけながら描き続け、殻を破った経験でもありました。全然描いたことのない表情だったので、挑戦を重ねさせてもらったことも個性に繋がったのだと思っています。

――特に狂気の表情で苦戦されたのはどのキャラクターでしたか?

KOYANO みんな苦労しましたが、特に大変だったのはクロードの狂気です。クロードは正義と狂気がシームレスなタイプなので、狂気に振りきって描いても普通じゃん?みたいな感じになってしまい、差が出し辛くて。逆にそこでの差を出しやすかったのはアディでした。かわいい感じと、目をかっ開いてキマっている感じは想定しているところに着地がしやすかったですね。ただクロードは本当に大変でした。最初に着手したのですが、最後に完成したほどで。。衣装のパーツも細かいですし、斜めにコードが入るので絵で描くときに立体感が出しにくいこともあり「これはどこで切り返すんだろう」と悩みましたし、表現も難しかったです。それにキャラクターの中で一番背が高いので、同じ画角にほかのキャラクターを入れたときに整合性が取りにくいんですよ。ヴァージニアと並べるときにも、どの画角で並べようかと悩みました。それから、ハリーも悩みましたね。

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――ハリーも?

KOYANO 当初のキャラクターのイメージからもっとチャラくなったんです。品は保たなければいけないですし、乙女ゲームに出てくるタイプとはまた違うベクトルでのチャラ男ですから。皮肉っぽい表情やいたずらっぽい顔になったりとコロコロと変化する表情をつけることはもちろん、髪が長いけれど女性っぽくなってもいけないため、色々な落とし穴があって大変でした。ほかにスタフカは初稿をセルフボツにしたキャラでした。最初は普通に立たせていたのですが、このキャラクターは中身が子供だけれど転生したときに実際の自分の年齢よりも年上になっているんです。だから背伸びをしているキャラクターとして設定しまして、つま先立ちをして胸を張っているのはその設定を反映しています。一生懸命に胸を張って生きています。……だいたい男の子の苦労話になっちゃいますね(笑)。

――女性キャラで苦労されたのはどのキャラクターですか?

KOYANO それが、女性キャラクターについてはあまり迷うことはなかったんです。強いて言えば、ルルとアンジューとアディが似ないようにしたのは苦労しましたね。そういえば「テオの顔がKOYANOさんらしくない」と同僚から謎のリテイクをもらいました(笑)。試行錯誤の結果、テオは初稿からは顔つきを変えましたね。目元を凛とさせて、頬ももちっとした感じではなくシャープな印象に繋げるようにしました。24キャラみんな、輪郭から体型から目の大きさ、目の形、背の高さといったすべてが本当に違うので、デザイナーとしてはかなり腕の鳴る仕事でした。

――小役人のデザインはなぜ現在の方向になったのでしょうか。

KOYANO 王様がみんな派手なので小役人は地味にしてほしいとディレクターからの発注があったんです。それであまり主張がなく、表情も豊かではない感じで、あまり背も高くなく、どこにでもいそうなありふれた人物にしようと思いました。あくまでも縁の下の力持ちで、目立たない存在にしました。

音楽とイラスト。双方が影響し合って生まれる「ユアマジェスティ」の世界
――クリエイターとして、このコンテンツに関わることで楽しめたのはどんなことでしたか?

KOYANO 全部を楽しくやらせていただきました。この現場(ユアマジェスティのイラストチーム)は、ゼロの部分からお話を聞いて構築することも多いんです。普通であれば参考画像を用意してもらって「こういう絵をください」という発注をもらって描くのですが、「ユアマジェ」ではむしろ先に歌の資料が届いて、参考楽曲などを聴きながら想像を膨らませて絵を描いていくので、その作業が新鮮でした。曲のラフがあがるたびにまた絵に反映させるのが楽しいです。皆さんの歌声もすごく素敵なので、すごいなと思いながら絵を描いています。

――楽曲とのコラボで絵が描かれるからこその出来事はありましたか?

KOYANO カンタレラの楽曲「Lily of the Valley」についてなのですが、ラフは青空を描いていたんですけど、完成間際に夜になっていたんです。制作の途中で「やっぱり色味が綺麗だからもう少し濃くしよう」とか「こういうライティングにしよう」と進めていたら、夜の設定ではないけれど絵は夜っぽい雰囲気になってしまうことがあり……ただ、届いた楽曲の歌詞に“青空”が入っていたんです。「それならば、もう少し明るくして青空にしていこう」と直しました。音楽と絵のラリーで出来上がっていくのは面白いですし、印象にも残っています。

――そんなゲームがリリースされ、ハロウィンやクリスマスなどシーズンイベントも開催されながらユーザーに浸透してきた今、「ユアマジェ」の魅力はどこにあると思われますか?

KOYANO キャラクターがバトルで動いて、大技を発動すると歌が流れるところはいつ見ても面白い作りだなと思っています。あとは放置しているときにオートで音楽が流れますし、周回しやすいことも魅力的ですよね。周回中に携帯が使えなくなるけれど、そこで魅力ある音楽が流れると楽しいなと感じます。

――では最後に小役人の皆さんへメッセージをお願いします。

KOYANO いつも「ユアマジェスティ」を遊んでくださりありがとうございます。本作のゲーム性だけでなく、音楽・イラスト・シナリオなどをトータルで楽しんでくださっている皆さんのお声を聞き、とても嬉しく思っています。今後も期待にお答えできるよう、頑張っていきたいと思います。

●アプリ情報
「ユアマジェスティ」
配信形式 :スマートフォン(iOS、Android)向けアプリ

App Store:
https://apps.apple.com/jp/app/id1638694688
Google Play ストア:
https://play.google.com/store/apps/details?id=jp.ne.donuts.ttyf

<ストーリー>
世界が壊れゆく中、
召喚される24の偉大なる魂。
「王をあがめよ、さらば救われん」
破壊に満ちた世界で、
正義と狂気の旅が始まる。

【キャスト】
希望王/絶望王 ヴァージニア CV:高橋李依/Singer:小林マナ
孤高王/烙印王 クロード CV:伊東健人/Singer:大山真志
贖罪王/天罰王 ルイゼット CV:佐倉綾音/Singer:浅場佳苗
葬礼王/蠱惑王 カンタレラ CV:竹達彩奈/Singer:星咲花那
精霊王/冒涜王 ミコ CV:田所あずさ/Singer:000
享楽王/虚栄王 ラキ CV:大橋彩香/Singer:YURIKA
雷鳴王/忘却王 マーニャ CV:三澤紗千香/Singer:秋奈
香貴王/弑逆王 サティス CV:中村桜/Singer:くろくも
豪運王/強欲王 ハリー CV:酒井広大/Singer:松浦航大
慧星王/悪夢王 ムーダン CV:五十嵐裕美/Singer: 小太刀瑞姫
騎士王/蹂躙王 ザン=エクエス CV:新祐樹/Singer: ???
流浪王/兇弾王 テオ CV:森なな子/Singer: 松岡侑李
清冽王/断罪王 クララ・ケリー CV:大西沙織/Singer:上野優華
勝利王/残骸王 シノン CV:寺島拓篤/Singer: JINSEOK
失楽王/棺桶王 スタフカ CV:宮崎遊/Singer: ???
悪魔王/堕落王 ドラクリヤ CV:日笠陽子/Singer: ???
ハートの女王/傀儡王 アディ CV:山根綺/Singer:金子理江
求愛王/偏愛王 ルル CV:石見舞菜香/Singer:春奈るな
叛逆王/残忍王 カマラ CV:加隈亜衣/Singer: ???
修復王/骸骨王 マクシムス CV:山野井仁/Singer: ???
探求王/異形王 ゴエティア CV:青耶木まゆ/Singer: ???
魔女/復讐王 コンスタンス CV:矢作紗友里/Singer:前島麻由
陽心王/悪意王 ヘレナ CV:大原さやか/Singer:藤川千愛
薔薇王/欺瞞王 アンジュー CV:外石咲/Singer:門山葉子
局長 パラス CV:和優希
局長 ノクシーヌ CV:拝師みほ
局長 フィロ CV:大塚剛央
ジッキョ CV:阪口大助
カイセツ CV:伊藤健太郎
主人公(男) CV:坂泰斗
主人公(女) CV:月城日花
※未発表のシンガーキャストは今後楽曲とともに随時公開してまいります

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