世界が壊れゆくなか、召喚された24人の王と共に世界を救う物語「ユアマジェスティ」(以下、「ユアマジェ」)。個性豊かで偉大なる王たちの戦いをプレイしている間、彼らが歌う楽曲が流れ続け、バトルゲームと音楽アプリの融合ともいえるこの「ユアマジェ」では、王の声を担当する声優と歌を担当するシンガーがそれぞれ別のキャストで存在する。
つまり24人の王を表現するのは48人の“演者”なのだ(現在もSINGER未公開の王を含む)。

ゲームのリリースから4ヵ月。2月25日にKT Zepp Yokohamaで「ユアマジェスティ」初のライブ“MAJESTIC LIVE”が開催となり、声優とシンガー合わせて23人が登場した。そんな王たちとの熱い夜をレポートする。

TEXT BY えびさわなち

奔放なドラマと圧倒されるほどの個性の強い歌で体感する「ユアマジェ」の世界
ステージ中央に置かれた玉座が王の存在を示すKT Zepp Yokohama。会場が暗転すると「ユアマジェ」ならではのドラマティックなSEが流れ出し、舞台上に王たちの姿が並ぶ。
ゲーム内の衣装そのままに、威風堂々と立つ彼らに拍手が送られると、小役人を演じる坂泰斗、月城日花がゆっくりと口を開く。滅亡の危機に瀕している世界。エネミー(化け物)が出現し、人々を襲うようになった世界。住民には倒すことのできないこのエネミーのせいで彼らは寄る辺ない想いで息を潜めて生きることしかできない。そんな暗闇の扉を開いた光。それは———。


「開けよ。扉を開けよ」。響いたのは凛としたヴァージニアの声。そして玉座の隣に立ったSINGERを務める小林マナと大山真志が歌い出す「Pledge of Gold」。今回のライブにヴァージニアのCVを担当する高橋李依、クロードのCVの伊東建人の出演はないものの、空間を震わせるほどのパワフルな歌声からヴァージニアとクロードがどんな王であるのかが伝わってくるような生命力に満ちたボーカルで、ライブの幕開けを高らかに宣言するかの如く歌い上げられ、評議会の衣装を着たダンサーたちが王の歌に熱を加えた。

続けて王たちの朗読劇。
先陣を切ってエネミーに切り込むラキ(CV:大橋彩香)と愛を持って世界を救うべくラキを追随するルル(CV:石見舞菜香)にサティス(CV:中村桜)も続き、盾を持ち、王を守ろうと小役人も戦闘へと身を投じていく。一向に衰えないエネミーに痺れを切らしたコンスタンス(CV:矢作紗友里)が炎の攻撃を加える。また別の戦場では美しき麗人・テオ(CV:森なな子)が戦い、初心者である小役人をサポートしていた。エネミーへの攻撃はこの世界に転生してきた王にしかできない。その王を守ることができる存在こそが神から盾を与えられた小役人なのだ。

小役人の奮闘を目にし、奮戦するミコ(CV:田所あずさ)、敵を倒したいと前線へと出ていくマーニャ(CV:三澤紗千香)と好奇心いっぱいで前線へと躍り出るドラクリヤ(CV:日笠陽子)。
そんな小役人を誉めるムーダン(CV:五十嵐裕美)は「心せよ。ここから始まるのじゃ。世界を救済する長い旅が――」と、空へと送るように呟いた。


ソロで、デュエットで、王たちが己の心の声を届ける
王たちの会話の終わりに劇的なピアノのイントロと共に登場したのは慈悲深く献身的な贖罪王である反面天罰王としての表情も持つルイゼットのSINGER・浅場佳苗。会場を沸かせた「New world, New me」では、真っ白でふわふわな女の子らしい衣装に身を包んだ浅場の甘い歌声がキャンディポップでキュートなトラックに乗る。続いたのは葬礼王にして蠱惑王でもあるカンタレラのSINGER・星咲花那の歌う「天使のクラリオン」だ。
カンタレラがそのまま飛び出してきたような眩いばかりの緑の衣装で歌う彼女を、フロアは緑の光で迎えた。

大きな拍手が湧いたのはテオのSINGER・松岡侑季の登場だった。“いかさん”として動画投稿でその名を知られるシンガーであり、新たに「ユアマジェ」に登場したばかりの松岡の歌う、新曲「ケセラセラ、Baby」にフロアは熱い反応で応えた。

声優によるドラマパートでは、自由奔放な王たちに戸惑う住民たちの声を受けた小役人の想いに、思わずゲームでの出来事を思い出す。スマホの中で紡がれる物語の中で生きる王たちと共に歩む冒険の日々の臨場感を朗読劇で味わいながら、ステージは再びライブパートへ。マーニャとコンスタンスが歌うデュエット「Via-Anarchy」の妖艶かつ耽美でダークなメロディがフロアを駆け巡る。
ゴシックでキュートな衣装のマーニャのSINGER・秋奈、妖しくも美しい衣装に身を包んだコンスタンスのSINGER・前島麻由がステージ上を奔放に動きまわりながら歌声を響かせた。

「扉を開けよ」の始まりの声にも象徴されるように、まさに物語の軸に存在するヴァージニア。その歌声だけで彼女の鮮烈なまでの存在感とパワ-を感じさせる小林マナによる「アンリミテッド・クイーン」では力強いボーカルが会場を赤く染めていたのが印象的だった。続いたのはミコが歌う「あかつきの祈り歌」。精霊王にして冒涜王であり、精霊の声を聞くミコのSINGERである000は、ミコの雰囲気のままに和の空気を帯びた独特のダンスナンバーを甘くかわいらしく、しかしどこか神気を滲ませる歌声で聴かせた。ダークだけれどドラマティックで熱を感じさせるマーニャの「Voron」ではエモーショナルな彼女を秋奈がその歌声で届けると、クロードがその身に宿る滾る熱をストレートに歌に乗せた「end of new worlds」を轟かせ、今宵のドラマパートには登場しないクロードの人となりまでも、大山のボーカルがオーディエンスに刻み付けていくようだった。


SACREDとTYRANT。王の二面性はその音楽にも現れる
ムーダンをストーリーテラーに王たちの旅路を送るドラマパート。戦いを離れた日常での和やかな様子から王たちと共にエネミーに立ち向かう評議会と対立する秘密結社のこと、王たちのただ1つの願い、そして思惑が紡がれていく。次の旅へ向かう王たちの背中を押すように、続いた1曲はラキの「Ride on the beat」だ。享楽王にして虚栄王という面も持つラキのSINGER・YURIKAはご機嫌なダンスポップチューンを軽やかな歌声と跳ねる言葉でハッピーに響かせた。圧倒的なパワーボーカルが響くロックナンバー「The Shadow Witch」はコンスタンスのナンバー。拳が上がり、大きく揺れる様を見遣る前島が笑みを浮かべた直後、深淵から響くようなバラード「鏡華翠玉」が会場の空気を一変させる。

ムーダンが歌う月夜のような静けさを持つ優美なナンバーをSINGER・小太刀瑞姫が見事に歌い上げる。慧星王であり同時に悪夢王であるムーダン。預言者さながら未来を感じる彼女の神秘性が歌に息づく。静謐な空気を打ち破ったのはマクシムスの「Ruler of Vengeance」。聡明な老紳士の姿の修復王にして骸骨王でもあるマクシムスのSINGER・冠徹弥が温厚なマクシムスの体内で渦を巻くような熱さを、タフなビートとヘビーなロックサウンドに乗せる。フルサイズで聴けるからこその展開の多さで、マクシムスの攻撃力の高さを感じさせた。

マクシムスの歌で戦闘の激しさを感じさせたところでドラマパートへ。彼の強さと老練な手腕を称える王たち。エネミーの色が濃くなってきた町での様子が王たちの会話から伝わってくる。そんななかでSACREDとTYRANTの両面での言い合いなど、王の姿を堪能させた。ルイゼットの仄暗い表情を感じさせる「Floraison」、地の底から響かせるようなムーダンの「小夜啼鳥、嘆きて」、愛に生きるルルの狂気が色濃く滲むジャジーな「mort d’amourr」とTYRANT曲で魅せるライブパートに。ルルのSINGERである春奈るながフランス人形のような衣装で聴かせるTYRANT曲は、かわいらしいルルのゾッとするような顔をその歌声に宿していた。

エネミーの出現も増え、ミコは精霊の声が上手く聞こえなくなるなか、一行は目的地である“何もない国”に近づいていく。そんな最中、先詠みによりムーダンのお告げがあり、円盤を拾う小役人たち。旅路の休憩にめでたい1曲を披露するというテオとラキが、2023年の新春曲であるご機嫌パーティーチューン「Let’s celebrate!!」を歌い上げる。YURIKAによるラップと松岡のメロディックなボーカルが会場をあっという間にダンスフロアに変えると、煌めきの1曲に続くルルの歌う「ふたりの魔法はあんぶらっせ♡」が響く。まさにふんわりかわいらしいルルがそのまま息づく1曲は、小役人という名のオーディエンスを笑顔にしてしまう。さらにステージがキュートな色に染められた「Sweet Melty Magic!」。2023年のバレンタインイメージソングである新曲が早速ライブで聴けるとは!星咲と秋奈の可愛らしいパフォーマンスに、緑とピンクの光がフロアを埋めた。


戦闘の激化が歌から伝わる。音楽が聴かせる王たちの生きる“瞬間”。
「我輩ちゃん、曲なくてマジハブなんですけどォ!歌わせろーー!」とドラクリヤ(CV:日笠陽子)が叫ぶ(現在ドラクリヤのシンガーは未発表)。ドラクリヤの歌声も早く聴いてみたいところだ。そんなドラクリヤを宥める一行はついに“何もない国”に辿り着く。閉ざされた門を開いた彼女たちは先へ進んでいく。そこにあったものとは……。戦いの熾烈さを感じさせたのはマクシムスの歌うラウドロック調の新曲「March for Revenge」、ラキのアグレッシヴなラップで聴かせる「Through the dark side」、コンスタンスが色香たっぷりに響かせた新曲「哭」、ミコの歌う不協和音的な音階とエモーショナルなビートが紡ぐ「月の光、陽の陰り」と 様々な楽曲がスリリングな瞬間へとオーディエンスを誘う。ここで小役人が1つの覚悟を持って大きな決意をする。ゲームの物語は、いつしかステージの上でリアルに色付き、神々しいイントロから力強い歌声が響く。

ヴァージニアとマーニャが歌う「ユアマジェスティ」の“もう1つの”テーマ曲「Obey the Majesty」。戦う小役人が、王たちが浮かぶ。強大な盾を手にした双子の小役人。そして容赦なく剣を振り下ろす王たちの姿が。パワフルな小林のボーカルと秋奈のしなやかな歌声のユニゾンに胸が熱くなる。ひとまず無数のエネミーを退けることに成功した王たち。光差す世界を包み込むように、ルイゼットとミコこと浅場と000が歌い上げる「Resonance」は彼らだけでなく、KT Zepp Yokohamaも、そして配信で見守る小役人たちをも包み込むようだった。

拍手が沸き起こるなか、カンタレラが“終わりのはじまり”を歌う「Finale.」がアンコールに。まるで先ほどまでの戦闘からまた新たな戦いが幕を開ける、その狼煙のように。そんな1曲から「ユアマジェスティ」の始まりの1曲「Pledge of Gold」を小林と大山が歌い、冒頭と同じく出演者がステージ上にラインアップして、ライブはグランドフィナーレを迎えた。歌にあるように我々は小役人としてここに立つ王を信じて、彼らの前で盾を持って戦場に立つのだ、という想いが胸に改めて宿る。そんなライブだった。

●ライブ情報
ユアマジェスティ 1st LIVE 「MAJESTIC LIVE」
2023年 2月25日(土)開場
会場:KT Zepp Yokohama

■出演者
田所あずさ / 大橋彩香 / 三澤紗千香 / 中村桜 / 五十嵐裕美 / 森なな子 / 日笠陽子 / 石見舞菜香 / 矢作紗友里 / 坂泰斗 / 月城日花

小林マナ / 大山真志 / 浅場佳苗 / 星咲花那 / 000 / YURIKA / 秋奈 / 小太刀瑞姫 / 松岡侑李 / 春奈るな / 冠徹弥 / 前島麻由

<セットリスト>


関連リンク
「ユアマジェスティ」公式サイト
https://yourmajesty.jp/