INTERVIEW & TEXT BY 森 朋之
10年間の中で感じた時代の流れ、これからの使命
――約2年3ヵ月ぶりとなるニューアルバム『Open α Door』が完成しました。まずはAimerさんご自身の手ごたえを聞かせていただけますか?
Aimer かなり久しぶりのアルバムなんですよね。『Walpurgis』を出したのが一昨年の4月で、その後は10周年イヤーと銘打った「残響散歌」をはじめとした色々なリリースがあったり、初めてのアリーナツアーを回らせてもらったり。駆け抜けるように活動したあと、一旦落ち着いて振り返って、腰を据えてアルバムの制作に取り掛かったんですよ。こうして出来上がってみると、なるべくしてなったアルバムだなと思いますね。
――10周年の活動のなかで感じたことも反映されている?
Aimer そうですね。この10年のなかでたくさんの感情を体験してきて、嬉しいこともあったし、辛い想いもあって……一番得た大きいものって何だろう?と考えると、“居場所”だなって思ったんです。居場所とは何かというと、1つ1つ、「こういうものがいいかな」と思いながら作ってきた音楽を受け取ってくれて、聴いてくれる人がいること、そういう関係をちゃんと作れたということだなって。音楽家としての自分と一緒にいてくれる人がいることって、本当に幸せなことだなと改めて実感したんですよね。それと同時に、居場所を守り続けること、維持し続けること、もっと大きくしていく使命が自分にはあると思っていて。
――新たな役割が生まれた、と。
Aimer それはすごく大変なことだし、そのためには今まで知らなかったことを知っていく必要がある。私と、聴いてくれる人たちの居場所のために、色々なものに触れたり知らなかった扉を開けてみたり。このアルバムに対しては、そういう想いが強いんですよね。時代の流れも、どこかで意識していましたね。デビュー当初は部屋にこもって制作していたし、目の前のことだけでいっぱいいっぱいだったんです。年数を重ねていくうちに、素晴らしい才能を持ったアーティストがたくさん出てきたり、サブスクが浸透したり、色々な変化があって。それこそこの数年の大きな出来事もそうだし、AIが色々なところで使われるようになったり、今までとはまったく違う世界が訪れようとしているんじゃないかなと思うこともありますし。アルバムタイトルに“α”を付けたのも、そのことと関係しているんです。“α”はすべての起源、始まりという意味があるらしくて、それはまさに今の時代だなと。
――新しい扉を開けるという想いと、これから始まる新しい時代が重なっているんですね。アルバムの収録曲からも、Aimerさん自身のリアルな感情が伝わってきました。まずはリード曲の「Resonantia」。
Aimer 「残響散歌」と対になるような曲を作ってみたいという想いがあったんですよね。「残響散歌」はこちらが想定していた以上に大きな反響があったし、「私のアッパーな曲を好んで聴いてくれる人がこんなにいるんだな」と強く実感して。そこに応えられる曲がアルバムの中にもう1曲あってもいいのかなと。最近のライブでみんなで盛り上がれるような曲を何曲か続けるコーナーがあるんですが、そういうパートをアルバムの中で作ってみたい気持ちもありました。「Resonantia」はラテン語で“共鳴”という意味があって、「残響散歌」で私と出会ってくれた方々、もちろんずっと前から聴いてくださっている皆さんを含めて、自分と共鳴し続けてくれたらいいなという想いも込めてます。
――アルバムには『テレビアニメ「鬼滅の刃」遊郭編』エンディングテーマ「朝が来る」も収録。改めてお聞きしたいのですが、『テレビアニメ「鬼滅の刃」遊郭編』とのコラボレーションはAimerさんのキャリアにとってどんな意味があったと思いますか?
Aimer 「“Aimer”って何て読むの?」って言われることがあんなに多かった時期は、デビュー当初以来でしたね(笑)。それくらい、色んな国の方や色んな年代の方、たくさんの方に曲が届いたんだなって。「残響散歌」によって、それこそ自分が触ったことのない扉を開けた感覚もあったし、その先にある世界に立って曲を作ることも出来ました。色々な意味で触発された楽曲になりましたね。
――「群青色の空」は穏やかな感情が伝わってくる楽曲。
Aimer 「群青色の空」はアルバム制作の最後に出来た曲。楽曲を並べてみたときに「こんな雰囲気の曲が欲しいな」と思って、そのイメージに近いサウンドになってます。テーマとしては、夕方から夜になる瞬間ですね。まだ明るさも残っているけど、星もきらめいているっていう。そういう時間帯を切り取った曲がなかったんですよね、今まで。
――夕暮れと夜空の間、いわゆる“マジックアワー”と呼ばれる時間ですね。
Aimer そういう瞬間は自分も大好きなんですけど、曲にしたことはなかったんですよね。どちらかというと深夜というか、深い時間帯のことを歌うことが多かったので。夕方って、その日のニュースが入ってくるじゃないですか。普段は悲しいニュースのほうが多いし、「悲しい出来事ばかりがどうしてこんなに早く伝わるんだろう?」と思っていたんですが、そうじゃなかった日があったんです。心温まるニュースが多くて、こういう日もあるんだなって……そのことがすごく印象に残っていたんですよね。ニュースが悲しくなかったというだけで、明日、明後日、その先の毎日にも希望が持てそうな気がして。
「この場所を守るためにも、もっと色んなことを知らないといけない」
――「I know U know」(サントリー「TOKYO CRAFT(東京クラフト)」CM ソング)には手拍子の音が響いていて。ライブ映えしそうな曲ですね。
Aimer まさに、ライブを意識して作った曲ですね。私がワンマンライブを始めたのはデビューから何年か経ってからで、結構遅かったんです。自分のライブのスタイルに関しても「こういう感じかな」と思えたのは、実は最近で。10周年イヤーで長いツアーを回ったり、アリーナツアーを開催するなかで、ライブに来てくれる人たちの気持ちが前よりもわかってきた気がしたんですよ。それは難しいことではなくて、自分が一生懸命チケットを買って、ライブに行っていたときと同じような気持ちなんじゃないかなって。皆さんと自分の気持ちが通じ合えている感覚もあるし、それをもっと強くしたいと思って作ったのが「I know U know」ですね。
――ステージに立つことも楽しくなってきていますか?
Aimer そうですね。それこそ最初は暗がりのなかで歌っていたんですけど、たくさんの方が会場に集まってくれているのに、そのことを心から信じられていなかったんです。試されてるような気がしたし、「失敗したらどうなるんだろう?」みたいな不安もあって。
――「spiral dance」はエレクトロ・テイストの楽曲。この曲もライブで盛り上がりそうですね!
Aimer そうなんですよ。打ち込みの踊れるような曲があってもいいのかなと思って。歌詞については、世の中を見渡してみると、不幸な出来事の多くは点と点がバラバラだったり、線が交差してないことが原因になってる気がしているんです。日常の些細なことから国と国のことまで、すれ違いや掛け違いによって良くないことが起きる。「spiral dance」では、「点も線も全部グチャグチャに混ぜちゃおう」と歌っているんですよ(笑)。
――“涙の海を超えて 大人になったって言うけど キラキラの喜びだけを 降らせたいから”という歌詞も素晴らしいですね。現実を直視しながら、それでも前向きに生きていこうという意思が感じられる。
Aimer ありがとうございます。たしかにそうなんですよね。辛いことや苦しいことは決してなくならないし、生きていたらどうしても悲しいことが起きてしまう。でも、ライブに来ているときはみんなで一緒に、この瞬間を共有しようっていう。そのなかで生まれる感動も、10周年のライブで何度も実感しました。
――そして最後に収められた「SKYLIGHT」も、このアルバムを象徴する楽曲だなと。
Aimer 制作しているときから「アルバムの最後に収録したい」と思っていました。「SKYLIGHT」は“天窓”のことで。「天井の近くの窓から光が差し込んで、それを見上げている」というイメージの曲ですね。それも自分らしいなって思うんですけど、「ドアを開いて、そこからガンガン先に進んでいく」というわけではなくて、私の音楽を聴いてくれている人たちと一緒に、ひとまず扉に触って、開けてみるという感覚なんですよ。そこから景色を覗いてみるというのが、今回のアルバムの役目なのかなって。「SKYLIGHT」も、この先のことを明確に語っているわけでも、今までの10年のまとめでもなくて、光が差している窓を見ているときの気持ち、その瞬間の胸の鼓動や高まりを切り取ってみたかった。そういう曲をアルバムの最後に入れたかったんですよね。
――なるほど。楽曲のバラエティも広がりに伴って、ボーカリストとしての表現も多彩になっている印象があります。Aimerさん自身はどう感じていますか?
Aimer 前作の『Walpurgis』をリリースしたときに、自分の歌い方というものが少し見えたかなと思ったんです。「こういうふうに歌ったら、Aimerらしいな」というのがわかった気がしたというか。だからこそ、その後は色んな歌い方を試してきたんですよね。リリース作品もライブもそうなんですけど、それまでは怖くてできなかったことも含めて、自発的に色んなアプローチをやってみて。今回のアルバムの制作のなかで新しい自分の歌声、今だからこそ出来る自分のアプローチも活かせたのかなと。歌の面でも新しい扉を開けられた実感がありましたね。
――ボーカルの模索は、今も継続中なんですか?
Aimer 続いてますね。この先の10年、20年を見据えたときに、今の時点で自分の歌が確立したり、安定するのはつまらないかもしれないなと思っているんです。ずっとアップデートさせていきたいですね。
――アルバムの完全生産限定盤に収録された 10 周年記念ライブ「Aimer 10th Anniversary Final “Cycle de 10 ans”」(2022年10月/大阪城ホール)の映像についても聞かせてください。今振り返ってみると、どんなライブでしたか?
Aimer どのライブも自分のすべてで臨んでいますが、このときのライブは特別な想いがありました。まず、ワンマンライブで大阪城ホールのステージに立つのは初めてで、アリーナツアー自体も初めてだったんですけど、音の鳴りというか「自分の曲、自分から出てくる歌がこんなふうに響くんだ」とすごく新鮮だったんです。自分の部屋に閉じこもって歌っていた曲がこんなにたくさんの人に届いていて、感情を共有できているという実感もあって。“居場所”の話にも繋がりますけど、「この場所を守るためにも、もっと色んなことを知らないといけないな」と思ったライブでしたね。
――10周年のアニバーサリーを経て、アルバム『Open α Door』に辿り着いて。この先に繋がる作品になりましたね。
Aimer そうですね。こうやって音楽をやらせてもらって、10年以上が経って。今思っているのは、人間的な部分はどうしても音楽に現れるということなんです。歌詞にどんな言葉を乗せるか?というだけではなくて、作品全体、あるいはライブパフォーマンスにも必ず自分自身が出てくる。そういう意味でも、この道を志す前、デビューする前の人生よりも、もっとたくさんのことを知って、経験しないといけないと思っています。
――素晴らしいと思います。ちなみにAimerさんは、元々新しいこと、知らないことに対して積極的な性格なんですか?
Aimer そういうモードのときは、すごく積極的になるし、外にもどんどん出ていきますね。でも、普段は割と家にいます(笑)。
●リリース情報
Aimer 7thフルアルバム
『Open α Door』
7月26日(水)発売
■mora
通常/配信リンクはこちら
ハイレゾ/配信リンクはこちら
【完全数量生産限定盤(CD+Blu-ray)】
品番:VVCL2270-2273
価格:¥8,910(税込)
<Blu-ray>
・「Aimer 10th Anniversary Final “Cycle de 10 ans”」(2022.10.16大阪城ホール)ライブ映像
・Music Video
1.残響散歌
2.Resonantia
3.Deep down
4.朝が来る
5.オアイコ
6.escalate
7.あてもなく
同梱豪華仕様
・「Open α Door」ジグソーパズル
・スペシャルBOX
【初回生産限定盤(CD+Blu-ray)】
品番:VVCL2274-2275
価格:¥5,500(税込)
<Blu-ray>
・MUSIC VIDEO
1.残響散歌
2.Resonantia
3.Deep down
4.朝が来る
5.オアイコ
6.escalate
7.あてもなく
【初回生産限定盤(CD+DVD)】
品番:VVCL2276-2277
価格:¥4,400(税込)
<DVD>
・MUSIC VIDEO
1.残響散歌
2.Resonantia
3.Deep down
4.朝が来る
5.オアイコ
6.escalate
7.あてもなく
【通常盤(CD)】
品番:VVCL2278
価格:¥3,300(税込)
<CD>※全形態、CD収録内容は同じとなります。
1. Open α Door
作詞:aimerrythm 作曲:永澤和真 編曲:玉井健二、永澤和真
2.残響散歌(『テレビアニメ「鬼滅の刃」遊郭編』オープニングテーマ)
作詞:aimerrhythm 作曲:飛内将大 編曲:玉井健二、飛内将大 Horn Arrangement:本間将人 Produced by 玉井健二
3.Resonantia(アルバム「Open α Door」リードトラック)
作詞:aimerrhythm 作曲:百田留衣 編曲:玉井健二、百田留衣 Horn Arrangement:五十嵐 誠 Produced by 玉井健二
4.Deep down(TVアニメ『チェンソーマン』エンディング・テーマ)
作詞:aimerrhythm 作曲:永澤和真 編曲:玉井健二、百田留衣 Produced by 玉井健二
5.朝が来る(『テレビアニメ「鬼滅の刃」遊郭編』エンディングテーマ)
作詞:梶浦由記 作曲:梶浦由記 編曲:梶浦由記 Produced by 梶浦由記
6.オアイコ(ABEMAオリジナル恋愛番組『オオカミちゃんとオオカミくんには騙されない』主題歌)
作詞:aimerrhythm 作曲:永澤和真 編曲:玉井健二、永澤和真 Produced by 玉井健二
7.群青色の空
作詞:aimerrhythm 作曲:竹次幸司 編曲:玉井健二、大西省吾 Produced by 玉井健二
8.I know U know
作詞:aimerrhythm 作曲:大濱健悟 編曲:玉井健二、南田健吾 Produced by 玉井健二
9.escalate(アニメ『NieR:Automata Ver1.1a』オープニングテーマ)
作詞:aimerrhythm 作曲:春尾ヨシダ 編曲:玉井健二、大西省吾 Produced by 玉井健二
10.spiral dance(トップバリュ「食べてみた! joy nuts & ガトー・ソワイユ」CM ソング)
作詞:aimerrhythm 作曲:Misty mint 編曲:玉井健二、百田留衣 Produced by 玉井健二
11.あてもなく(アニメ『王様ランキング 勇気の宝箱』エンディング・テーマ)
作詞:aimerrhythm 作曲:飛内将大 編曲:玉井健二、飛内将大 Strings Arrangement:室屋光一郎 Produced by 玉井健二
12.SKYLIGHT
作詞:aimerrhythm 作曲:飛内将大 編曲:玉井健二、飛内将大 Produced by 玉井健二
パッケージ封入特典
「Aimer Fan Club Tour “Chambre d’hôte”」特別招待応募ハガキ(各公演2組4名様)
●ライブ情報
Aimer Fan Club Tour “Chambre d’hôte”
10/6(金)Zepp Nagoya(愛知県)
10/13(金)~14日(土)Zepp Namba(大阪府)
10/27(金)Zepp Sapporo(北海道)
11/2(木)KT Zepp Yokohama(神奈川県)
11/11(土)仙台GIGS(宮城県)
11/18(土)Zepp Fukuoka(福岡県)
11/22(水)~23日(木祝)Zepp Haneda(東京都)
チケット料金
・スタンディング¥7,500(税込/整理番号付き)
・2階指定席¥8,500(税込)
申し込みはこちら
関連リンク
Aimer 公式サイト
https://www.aimer-web.jp/
Aimer 公式Twitter
https://twitter.com/Aimer_and_staff
Aimer 公式YouTube
https://www.youtube.com/user/aimerSMEJ