アニメーション映画「北極百貨店のコンシェルジュさん」の主題歌「Gift」が注目を集めるソロアーティスト・Myuk。11月5日に下北沢ADRIFTにて2公演開催された彼女の自主企画イベント“Knockin’ On Night Door Vol.5”は、楽曲の主人公や彼女のシンガーとしての心情をじっくりと味わえる時間であり、彼女がやわらかさと優しさの中に、様々な感情を込めることができるシンガーであることを再確認するライブだった。
このレポートでは、その第1部の模様を書き残す。

TEXT BY 沖さやこ
PHOTOGRAPHY BY 松原裕之

瑞々しいボーカルで多彩に染め上げる、色とりどりのラブソング
夜空を彷彿とさせる穏やかなストリングスのSEが流れると、サポートメンバーの大久保友裕(Gt)、西野恵未(Key)、andropの前田恭介(Ba)、the peggiesの大貫みく(Dr)に続き、ブルーグリーンとブラックのドレスに身を包んだMyukが登場。「フェイクファーワルツ」でこの日の幕を開けた。アコースティックギターを抱えたギターボーカルスタイルの彼女は、可憐さと毒気を併せ持ったボーカルと、ワルツのリズムで展開するサウンドスケープが、エモーショナルかつ艶やかに会場一帯を包み込んだ。

「弱気になってしまうとき、すべてを捨ててしまいたくなる。たぶんきっと、そんなあなたを待っている世界がある」

ギターを置きハンドマイクスタイルになったMyukは、西野のピアノに乗せて台詞を呟くと、「シオン」を歌い出す。
その声は、深い愛情に満ちた歌詞に祈りを込めるようだ。「星に願いを」ではピアノとボーカルのみだったところに徐々にアコースティックギター、リズム隊が加わり、音のレイヤーをドラマチックに重ねる。そのサウンドデザインは夜空を彷彿とさせ、張り裂けそうな気持ちをメロディに乗せるMyukの声からは、冬の空を白く染める光景が思い浮かんだ。

挨拶を済ませたあとは「冬にぴったりのこの曲を」と告げ、心地良いリズムのイントロに乗せて「Snow」へ。シティポップテイストのサウンドに、幸せを味わうような甘い歌声を響かせる。がらりと声色を変えるわけではないのに、曲によって異なる輝きを宿らせることができるのは、彼女のボーカルの特徴の1つであろう。
再びアコースティックギターを構えて披露した「あふれる」は、主人公が抱える片思いならではの恋心が自分の心に乗り移るような感覚になるほどだった。

「自分を好きになれない。誰かみたいに上手に生きられない。あの日君を見ていたのは、それを全部壊してくれたから」

再びハンドマイクスタイルになり台詞を真っ直ぐに口にすると、歌い出したのは「アイセタ」。大きな愛情が綴られた同曲と、Myukの真摯で伸びやかな高音が、会場を陽だまりのように包み込んだ。

Myukのライブにドラマーが参加するのは今回が初めてのこと。
つまり、彼女にとって初めてのフルバンドセットのライブである。「まさか自分が歌っている後ろでみくちゃんがドラムを叩いてくれる日が来るなんて、高校生の頃はまったく想像していなかった」と語る彼女は、ドラマーの大貫について「みくちゃんは能力者だと思っていて。みくちゃんの周りにはハッピーなオーラがふわふわと浮かんでいて、その場にいるみんながいつの間にかハッピーになっているんです」と大貫の参加に喜びの表情を見せた。


Myukの人生が育んだ音楽とリスナーへの愛情
フジファブリックの「若者のすべて」のカバーに続いて披露した「Pancake」ではUS的ポップスとユーモラスなボーカルワークで魅了すると、「皆さん一人ひとりに素敵な贈り物が届きますように」と告げ「Gift」を歌唱する。力強く澄み渡ったボーカルは、歌詞のとおり木漏れ日が届くように眩しかった。「フルバンドで演奏するのを楽しみにしていた」と話した「愛の唄」では凛々しさのある歌声と、彼女の音楽に対する気魄が綴られた歌詞が痛快に響く。
彼女の音楽への、そして自分の音楽を聴いてくれる人への愛情が、健やかに躍動した。

「自分がわからず、ふさぎ込んだ夜。周りを気にして愛想笑いしたこと。歌を歌えば、わたしに戻れた。歌を歌えば、新しいわたしに出会えた。歌を歌えば、あなたに出会えた。
この声が届くなら――」

Myukの本音と楽曲に描かれた物語を繋ぐ台詞の行く先は、TVアニメ『約束のネバーランド 第2期』EDテーマの「魔法」。“どうか覚めない夢を見させてよ”や“物語を終わらせたくないさ”など、歌詞の一つひとつがMyukの願いのように響いてくる。アーティストとしての彼女の姿が色濃く表れた本編ラスト3曲は、彼女の心の奥に触れるようなとても清らかな時間だった。

アンコールを受け登場し、「賑やかなステージで心強かった」と語った彼女は、高校生の頃に弾き語りでライブ活動を始め、上京後に大久保と2人編成でライブをするようになり、Myukとして活動を始めてから“Knockin’ On Night Door Vol.1”で西野が、前回の“Vol.4”で前田が、今回の“Vol.5”で大貫が参加したことに触れると、「少しずつ仲間が増えて、冒険をしている少年のような気持ちです」と感慨に浸る。

そしてライブは1人でも楽しい場所であり、仲間が増える場所であってほしいということ、来年の東名阪福を回る「concert tour 2024 “Arcana”」の開催と1月27日(土)の“リスアニ!LIVE 2024”の出演について、弾き語りで活動していた頃には考えられないことであることを話すと、「歌を歌うことは苦しいことや悲しいことを乗り越える手立てだと思っています。少し厚かましいかもしれないけど、歌で皆さんの毎日を肯定していきたい。
この時間のことを心の片隅に置いておいて、忘れないで覚えておいてくれたら嬉しいです」と続け、またライブで時間を共有できたら、と願望を語った。

最後に披露したのは、最新シングル曲であるTVアニメ『豚のレバーは加熱しろ』EDテーマ「ひとりじゃないよ」。彼女の歌を聴いている時間は、彼女の愛情に包まれていることと同義であると実感する歌声だった。1人で音楽を始めたからこそ、そして今もソロアーティストとして活動するなかで少しずつ仲間が増えたからこそ書けた歌詞であり、歌える歌なのだろう。彼女の人生が、音楽に新しい輝きをもたらしていた。彼女は歌えば歌うほど、新しい感情が芽生え、視野が広がる。彼女の歌声の指し示す景色に、思いを馳せたくなるライブだった。

■Knockin’ On Night Door Vol.5
<1st stage セットリスト>

1.フェイクファーワルツ
2.シオン
3.星に願いを
4.Snow
5.あふれる
6.アイセタ
7.若者のすべて
8.pancake
9.Gift
10.愛の唄
11.魔法
EC1.ひとりじゃないよ

●ライブ情報
“Myuk concert tour 2024 「Arcana」”

2024年2月3日(土)名古屋 CLUB UPSET
2024年2月4日(日)大阪 バナナホール
2024年2月6日(火)福岡 Gate’s7
2024年2月11日(日)東京 SHIBUYA PLEASURE PLEASURE

[チケット]
全自由席 ¥4,500(税込/ドリンク代別)
※東京公演のみ:全席指定 ¥5,000(税込/ドリンク代別)

●MV情報
「ひとりじゃないよ」

「Gift」

●リリース情報
Myuk
「ひとりじゃないよ」
発売中

【期間生産限定盤(CD)】
品番:AICL 4419
価格:¥1,500(税込)
※アニメ描き下ろしデジパック仕様/ジャケットイラストステッカー封入

1. ひとりじゃないよ
2. ひとりじゃないよ (Acoustic version)
3. ひとりじゃないよ (Instrumental)

Myuk
「Gift」
発売中

品番:AICL 4418
価格:¥1,500(税込)

1. Gift
2. Gift (Acoustic version)
3. Gift (Instrumental)

●イベント情報
リスアニ!LIVE 2024
2024年1月27日(土)SATURDAY STAGE
開場15:00/開演16:00(予定)
2024年1月28日(日)SUNDAY STAGE
開場14:00/開演15:00(予定)

会場
日本武道館

Myukは1月27日(土)SATURDAY STAGEに出演!

チケット(※すべて全席指定)
1月27日(土)SATURDAY STAGE、1月28日(日)SUNDAY STAGE
¥10,000(税抜)/¥11,000(税込)

詳細はこちら

関連リンク
Myuk 公式サイト
https://myuk.jp/

Myuk 公式X
https://twitter.com/myukmusic