2002年10月から放送を開始した『機動戦士ガンダムSEED』。作品の名刺のように世界中のファンから愛される最初のOP「INVOKE -インヴォーク-」を歌ったT.M.Revolution(西川貴教のソロプロジェクト)は、その後「Meteor -ミーティア-」、「Zips」、「ignited -イグナイテッド-」、「vestige -ヴェスティージ-」と楽曲で作品と寄り添ってきた。
2005年10月に『機動戦士ガンダムSEED DESTINY』が最終回を迎えた以降も人気は衰えることなく、続編を待ってきたファン。同じく続編の誕生を心待ちにしてきた西川貴教が約20年の時を経て届ける『機動戦士ガンダムSEED FREEDOM』の主題歌「FREEDOM」で届ける想いとは――楽曲プロデュースに小室哲哉を迎えた本作について、作品への想いと共に聞く。

INTERVIEW & TEXT BY えびさわなち

20年の想い、結実
――「INVOKE -インヴォーク-」で『機動戦士ガンダムSEED』と出会ってから22年になろうとしております。西川さんと『機動戦士ガンダムSEED』の出会いは、それまでのアニソンの流れの中でも新たな潮目になったと感じますが、今、改めてどのようなことを感じていらっしゃいますか?

西川貴教 潮目になったんですよね、結果的に。それまでのアニメとポピュラーミュージックの関係性を見てみると、例えば4クールぶち抜きでの放送となったアニメ『るろうに剣心』は、1クールごとに主題歌を変える、という新たなビジネスモデルを開拓した画期的な作品になったと思うんです。そこで数々のアーティストが頭角を現していきましたが、その一角として僕も実際に「HEART OF SWORD ~夜明け前~」で楽曲を知ってもらうことになりましたし、この曲をきっかけに歌番組などにお邪魔をして、今があると言っても過言ではありません。
ただ、アニソンファンから見れば「アニメと楽曲がリンクしていないじゃないか」と思われるようなところもあって、もっと濃いめの、主人公や必殺技を連呼するようなアニソンが求められてもいましたが、僕はどちらも好きだったんです。ポピュラーミュージックに育てられてきましたし、アニメも大好き。それなら作品の世界観をきちんと踏襲しながら、自分の楽曲としてライブで歌える曲をやりたいよね、ということで「INVOKE -インヴォーク-」が完成した。「世の中的な潮目」という部分については皆さんの受け止め方だと思いますが、僕自身としてはすごく大きな出来事でしたね。ここでやったアプローチを見て、「それならうちでも主題歌を歌って欲しい」とか「そのやり方をやって欲しい」と手を挙げてくださる方が出てくるようになりましたから。それからは「西川さんでお願いします」と言っていただけるようなことも増えていった感じでしたね。
この作品と出会って、ある種このやり方を開拓したことがその潮目を作った、と思ってくださる人がいるのであればすごく嬉しいです。

――そんな西川さんにとって「ガンダムSEEDシリーズ」はとても深い関係性のある作品となっています。当時のことでとても記憶に鮮やかな出来事というとどんなことがありますか?

西川 スタートの「INVOKE -インヴォーク-」に至るまではもちろんですが、僕にとってすごく大きかったのは『機動戦士ガンダムSEED DESTINY』ですね。『ガンダム』というIPのクオリティを担保するために3年に一作を作っていくという流れの中で、シリーズとしてすぐ次を、という流れがありつつも1年のインターバルを開けて制作された「ガンダムSEEDシリーズ」でしたが、あまりにも『SEED』の成果がめざましかったこともあって、続くシリーズでは新しいアーティストにチャンスを与えてあげて欲しい、ということもあり、多くのアーティストが手を挙げていたと聞いています。それでも、福田己津央監督が、僕と一緒にやりたいと言ってくださったんですね。監督が強い意志で僕の主題歌で、という気持ちを貫いてくれたことで「ignited -イグナイテッド-」が出来上がりました。
それくらいの覚悟を見せてくれた監督と作品ですから、僕も同じく強い覚悟を持って作品に寄り添うぞ、という気持ちでした。だからこそ『SEED』の劇場版が「もう可能性はないんじゃないか」という雰囲気になっていた時期も「僕が生きている以上、劇場版はあります」って言い続けましたし、「僕が諦めない限り、絶対に作品は作られます」と発信し続けてきましたからね。

――最終回を終えたあとも『機動戦士ガンダムSEED』シリーズと共に歩んできた時間ですね。

西川 特に『SEED』は、よくあのタイミングで出来たなと感じるんです。少し開いた時期はあったものの、『SEED』の前作は『∀ガンダム』。「全てのガンダムの肯定と否定」と銘打って富野由悠季監督が全ての執念を込めた弾丸のような、全身全霊渾身の一撃で放った作品。
焼け野原になった状態に対して何を作るのか、というところに「SEED(種)」。その焼け野原に種を蒔く作品だった、というイメージを持っているんです。その作品で、僕の音楽活動をずっと見てくださっていた福田監督が「一緒にやりたい」と言ってくれた。ガンダムが好きだった僕と、相思相愛の出会いでしたし、そして監督は僕の想いへ贈り物としてキャラクター(ミゲル・アイマン)を作ってくださいました。その資料をいただいたときには、「これが僕のキャラクター!本当にいいんですか?」と驚きましたね。そのとき僕が言った「これって宇宙世紀なんですか?」という言葉に「この人は本当にガンダムが好きなんだな」と改めて感じたと監督がおっしゃっていました。


――『機動戦士ガンダムSEED DESTINY』で演じられたハイネ・ヴェステンフルスとして「ザクとは違うんだよ、ザクとは」というセリフもありました。あれこそ『機動戦士ガンダム』へのリスペクトも強く出た言葉でしたね。

西川 それまで頑なに『機動戦士ガンダム』がバイブルで、触ってはいけない神の啓示のような存在だったけれど、福田監督は冒頭からザクを出しますし、今回の映画でもそういった『ガンダム』へのリスペクトはありますからね。その表現って、すごく現代的ですよね。HIP HOPというか……あくまでもサンプリングで、以前の作品へのリスペクトを込めてトラックメイクする感覚と似ていて、音楽界で当たり前になりつつあるような音楽的なカルチャーがアニメにもある気がしてすごく良かったですね。監督が楽曲を大事にしてくださることも知っているし、監督の表現のアプローチからも音楽的なものを感じました。


――音楽を大切にされる福田監督だからこそ、作中での「Meteor -ミーティア-」の起用になったと以前伺いました。

西川 あれはアルバム曲で、作品への書き下ろし楽曲ではなかったけれど監督が気に入ってくださった結果、機体の名前にも使われましたし、あの曲は今でも『機動戦士ガンダムSEED』を象徴する曲になっていますよね。

小室哲哉と共に作りあげた「FREEDOM」
――『機動戦士ガンダムSEED FREEDOM』がついにファンの元へ。続編の誕生をずっと心待ちにしておられた西川さんですが、主題歌のオファーが来たときにはどのような想いがありましたか?

西川 率直に嬉しかったです。そこに至るまでに色々なことがありましたし、やっと新作を届けられるんだな、という想いもありました。さぁ、この想いに、この大きな責任をどういう形で果たしていくべきなのかな、と悩み考える時間がありました。

――制作にあたって福田監督とはどのようなお話をされたのでしょうか。

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