キヅナツキが描く青春群像劇『ギヴン』がアニメ化されたのが2019年7月のこと。バンドが軸となるボーイズラブ作品である本作のアニメで、「冬のはなし」をはじめとしたバンド・ギヴンの楽曲を手がけ、OP主題歌「キヅアト」を歌ったセンチミリメンタルが、現在公開中の『映画 ギヴン 柊mix』でも主題歌「スーパーウルトラ I LOVE YOU」、そして劇中に登場し、実際に2月21日にシングル「ストレイト/パレイド」をリリースするバンド・syhの楽曲制作も担当。


今回はセンチミリメンタルの温詞と、syhのボーカル・鹿島 柊を演じる今井文也の対談をお送りする。インディーズからメジャーへ――高校生バンドながら階段を上るsyhの音楽について、そして『ギヴン』から放たれる音楽について熱く語り合う。

INTERVIEW & TEXT BY えびさわなち

プラスの感情もマイナスの感情も突破する柊の歌
――作品に関わられるようになって約5年。今、改めて『ギヴン』の印象をお聞かせください。

温詞 僕はバンド・ギヴンの楽曲制作担当として入って、それから主題歌もセンチミリメンタルとして歌わせてもらったのですが、本当にずっと、一体となって歩みを進めてきた大事な作品です。今回も『映画 ギヴン 柊mix』として作品の新しい部分にスポットが当たる回に、それもsyhという新しいバンドの音楽がステップアップして広がっていく展開に関わり、一緒に歩めることにワクワクしました。
楽しみながら制作に挑めました。

――今井さんはいかがですか?

今井文也 OADのアニメ収録以来久しぶりに収録させていただいたのですが、柊としてここまで長くしゃべるのは今作(『映画 ギヴン 柊mix』)が初めてだったので、また新しく柊を深堀り出来ることが嬉しかったですし、そういう部分が5年前との力の入れ具合の違いとしてあったのかなぁ、と思います。TVアニメがスタートした当時は、アニメの現場もそれほど知らない状態だったので。現場の空気に馴染むことに苦労した思い出があるので、そういうところからより繊細な、緻密な人間関係の作業が出来るようになったのは、この5年の変化かなと思います。

――温詞さんからご覧になって、今井さんの演じる柊はどのような印象がありますか?

温詞 今井さんの持っている天性の、人間としての輝きというか、オーラみたいなものは柊に通じるところがすごくあると思いますし、音楽面で一緒にやれたこともすごく嬉しかったです。今までは作中で柊の歌が出てくることはなく、僕が作った音楽を歌ってもらうような機会はなかったので、今回一緒に協力をしながら携われたことを嬉しく思います。
今井さんは、なるべくして柊という役に出会った人ではないかなと思いますね。

今井 嬉しい!

――今井さんご自身も様々な音楽コンテンツに関わられていますが、温詞さんの音楽の印象はいかがでしたか?

今井 ギヴンの音楽を初めて聴いたときから、すごく独特の空気感を感じていました。コンテンツの楽曲として同じ方が作曲していると言っても曲ごとに違う顔を見せるものもありますし、もちろんギヴンでもどの曲も違った個性を持っているのですが、一貫して『ギヴン』の世界観の中の楽曲であることが“芯”となっているのが魅力的ですごいなぁ、と。それはTVアニメでも映画でも。今回syhというバンドの楽曲が新たに書き下ろされて描かれるということで、どんな曲になるのだろう、と楽しみにしていました。いざ自分で歌ってみて、「なるほど、syhとギヴンの違いはこんなふうに出てくるんだな」ということを、現場で、肌で感じました。


――syhのボーカリストとして歌っている立場として、ギヴンの楽曲はどのように受け取っていますか?

今井 寂しさとか悲しさだったり、負の感情を溜めて放っている、というのがギヴンの楽曲の印象としてすごく強いです。もちろん最終的にプラスの感情に繋がってもいくのですが、それでも曲を聴いていると、そのときの悲しい感情や寂しさみたいなものがこちらにも伝わってくるな、ということをギヴンの楽曲からは感じますね。syhの楽曲にも、プラスの感情もマイナスの感情もあるのですが、そこを突破するようなイメージが強いんじゃないかな。ここからどんどん色んなところに広がっていくような勢いや力がギヴンとは違うところなんじゃないか、ということは歌いながら、聴きながら思っていますね。光と影とまでは言わずともコントラストとして出ているような感じがして、違いが楽しめるのではないかと思います。

――温詞さんがギヴンとsyhの楽曲を作る際に意識するのはどんなことなのでしょう。
ギヴンは大学院生・大学生・高校生の混合バンドですが、syhは完全に高校生バンドですし。


温詞 若さゆえの突き抜けやパワー感、テンションの高さをsyhのサウンドでは意識しています。もちろんキャラクター性もありますし、年齢的なもの、それに3ピースという編成の問題もあって、syhのほうがテンション感や感情が外向きなアウトプットで作っていますね。逆にギヴンは内向的というか、感情を内側に内側に掘っていったものをバーンと外に出す感じなので、「内と外」とで差は出ています。

――syhのギターは、ギヴンの立夏が弾いています。その部分では音にこだわりはありましたか?

温詞 ライブハウス界隈で仲の良い人たちや関係値のある人たちでバンドのサポートをするのはよくある話なので、サポートであっても「お仕事です」みたいな感じにはしたくなかったんですよね。
ライブハウス界隈の「サポート頼むよ」みたいな感覚の延長線上でやってほしかったので、サポート然としてもらうよりもメンバーくらいの空気感で迎え入れられて、そのなかでやっていくような関係性を音でも表現したいという気持ちはありました。

技術で見せるより、想いを真っ直ぐに歌う柊の歌唱
――そのsyhの楽曲の中心にある柊の歌唱。どのように作っていかれたのでしょうか。

今井 普段はダンスユニットやアイドルユニットで歌うことが多くて。そういう時は歌の中でもプラスで「ここはキメるぜ!」という表現が多かったのですが、今回はバンドマンのキャラクターで、歌うのもバンドの曲なので、抑揚やビブラートといった技術で見せる表現よりは、想いを真っ直ぐに吐き出しました。しかも高校生という多感な時期のボ-カルということもありますし、そういうところで変に上手く歌おうとするのではなく、気持ちで歌うことを強く出したいな、と。
原作を読んでいると、歌がすごく上手い、そして華がある、と表現されていますし、「もっとこういうところで、こんなふうにニュアンスをつけたほうがいいんじゃないかな」とか色々考えていたのですが、現場で「これ、良いかも」と思ったのは、真っ直ぐな歌い方だったんです。変に色々と考えずにストレートに出す歌い方がハマりましたし、(温詞さんと)お互いに「この歌い方が良いかもね」となりました。それで最終的には真っ直ぐに歌うことを念頭に、2曲とも歌いましたね。

――温詞さん%