毎年コンスタントにリリースを重ね、キュートでラブリーなポップソングシンガーとしてのカラーも確立してきた大西亜玖璃。6thシングルとなる「曖昧ガール」に収録の2曲、「曖昧ガール」も「恋よりずっと Only you」も、どちらも彼女だからこそ生み出せる世界へと誘ってくれる。
楽曲に感じたこと、込めた想い、MVでのアクションなどに関する答えを聞いていると大西亜玖璃自身の魅力にも引き込まれていく。

INTERVIEW & TEXT BY 清水耕司

「大西さんは曖昧じゃないけど大丈夫ですか?」って
――まず、「曖昧ガール」を受け取ったときの印象から教えてもらえますか?

大西亜玖璃 まず、タイトルを教えていただくときにディレクターさんから、「曖昧ガール」というタイトルなんですけど……、ってすっごく心配そうな顔で言われたんですね。「大西さんは曖昧じゃないけど大丈夫でしょうか?」って。

――(笑)。そこで駄々こねるような方じゃないですよね。

大西 はい。
なんでも「イエス」「イエス」って。

――楽曲も、大西さんらしくて可愛い楽曲ですものね。

大西 私も聴いたとき「自分の楽曲」だな、というところはすごく感じました。「本当に『佐々木とピーちゃん』EDテーマになるのかな?」くらいの気持ちもありましたね。

――タイアップ曲というよりも、大西亜玖璃のための書き下ろし曲のように。

大西 はい。
エンディングっぽくないというところで意外性もありました。でも、エンディング映像を見たら、ミニキャラでのほっこりなテイストになっていたので、そういう朗らかなイメージと合っていると思いました。

――歌唱に関してはどのようなアプローチをイメージされましたか?

大西 サビとかが意外と高くて。しかも、低いところから上がっていくのも大変ですけど、ずっと高音が続くのもスタミナがいるので、そこは大変そうだとは感じました。でもレコーディングは、分けて録ったりやり直したりができるので全然大丈夫でした。あとは、曲の最後が「わたし 曖昧ガール」のあと、音符1個くらいでスッと終わるんですよね。
その締め感というか、いい雰囲気で曲が終われたらいいな、とは思っていました。「もう一回聴いてみようかな」と思えるような。

――いい雰囲気を作るためにどういう気持ちで歌ったんですか? 優しく?

大西 優しく、ではなかったですね。なんだろう。難しい……。宣言? みたいな。


――少し言い聞かせるような。

大西 ですね。あとは、最後の1音のところで「。」をつけるような感じかな。

――確かに、柔らかくて締める感じがありました。特にお気に入りの箇所となるとどこですか?

大西 好きなところというか、サビは歌詞と音のハマりがすごくいいと思っていて。音程は高いんですけど、ハマり方が気持ちいいから歌えてしまうという感覚がありました。
歌い心地はすごく良かったですね、1番も2番も。なので、歌詞を覚える時に1番が「ハッとしてパニック!」だったか「キュンとしてパニック!」だったか、どっちだったっけ? ってなっちゃって(笑)。最初に覚えるときも(頭を抱えながら)「あぁー……」ってなってました。

――歌詞カードを見ながらでもこんがらがっちゃうなら、ライブで披露するときは危険ですね。

大西 考えているような顔をしてたら、「あぁ、難しがってるんだな」と思ってください。

――そんなわかりやすく表情に(笑)。


大西 全部顔に出ます。あ、でも、レコーディングのときは人目がないので表情を気にすることはないんですけど、むしろすごく笑顔で歌っていた気がします。可愛い楽曲なので、明るく歌えたんだと思います。

――歌詞に登場する女の子について、イメージを膨らませながら歌いましたか?

大西 はい。ざっくりとですけど、恋に悩む可愛い女の子、みたいなイメージがありました。自分とは違うな、って感じで。

――違うというのはどういう点で?

大西 この子はすごく詩人みたいな考え方をしているなって。勿論、歌詞ということもあるんですけど、「キミがいない日々はピンクのない桜の花みたい」とか。あと、「キミがいる日々は全部乗せのクレープの味みたい」ということは、全部乗せのクレープを最高だと思っている女の子ってことじゃないですか? 私、全部乗せじゃなくていいので。

――なるほど(笑)。それは私もです。

大西 バターとシュガーだけで美味しい気がしちゃうんですけど、でも、そういうところが恋に舞い上がっている感じがしますよね。楽しい気持ちになれるって素敵なことですし、歌うときはその世界観に入らせてもらいましたね。だから、「ショーウインドウ越しのわたしは」って歌っているときは自分の姿をイメージしていました。この女の子の顔を想像して、ではなく。

――歌詞の中の女の子を自分と同化させて。

大西 そうですね。いつもそんな感じだと思います。

――その意味ではMVの撮影はいかがでしたか? 終始笑顔の内容になっていて、恋する女の子を演じる感覚だったのでしょうか?

大西 以前から自然体の私をMVで撮りたいと監督さんやプロデューサーさんは思っていたみたいで。普段から私は自然体すぎるくらいですし、MVもいつも普通にしてはいるんですけど。今回は、「より可愛らしい感じで自然体な大西亜玖璃を」ということでした。楽屋でしゃべっているときみたいに。しかも、犬目線で撮影したらきっと可愛いし、ファンのみんなも喜ぶだろうし、私もワンちゃんが登場するので嬉しいし。

――Win-Winだろうと。

大西 だから、演じるというよりも「休日の私」というイメージでしたね。最初の登場シーンも「日差しがまぶしいね」という気持ちですね。「あ、今日休みだ。ふふ♪」みたいな。でも、普段の私は家の中であんなにおしゃれしてないですけど。犬も飼っていて素敵なお家だし。あそこは「私の家」設定らしいんですけど。姫ですよね(笑)。

――大西さんといえば心の中で「おむすび」という名の犬を飼っていることも知られていますが、いつの間にそんなに犬好きに?

大西 なんと言っても!私の2ndシングル「初恋カラーズ」のMVでワンちゃんと共演していまして。

――あぁ! 工藤プロデューサーの愛犬のちゃんこですね。あそこで恋に落ちたんですか?

大西 そうなんですよ、ずっと猫派でした。今も猫は大好きで動画も見ているんですけど、あのときに「犬ってこんなに尊くて可愛い生き物なんだ」と思って、「じゃあ、ちょっと犬派に変わります」ってなりました。そのあとも休日にペットショップで犬を眺めていたら、一回抱っこさせてもらっちゃって。「絶対犬だ!」ってなりましたね。我慢しましたけど。

――良かった。意志が強くて。

大西 はい、強い意志で。最初に「買わないですよ。見てるだけなんですよ」って店員さんに釘を刺していたのに、「今日は平日なのであまり人と触れ合っていなくて。抱っこした方が人間に慣れますので」なんて言われたので抱っこだけしました。ずーっと見てたからかもしれない。

――店員の罠にハマるところでしたね。危なかった。

大西 危なかった(笑)。

――MVに登場したクロエとの共演はいかがでしたか?

大西 ちゃんこは男の子だったので何にでも興味津々な感じだったんですけど、クロエちゃんは女の子ということもあっておしとやかで。おやつがあっても来たり来なかったり。抱っこされるのは苦ではないみたいでしたし、本当に穏やかなワンちゃんでしたね。すごく可愛かったです。

――撮影向きの子ですね。登場時に大西さんが抱っこしているときは全く動かないのでぬいぐるみかと思いました。

大西 ですよね。顔も可愛いから、よりぬいぐるみ感がありますよね。

――MVで着た衣装もとても可愛かったですが、大西さんのお気に入りポイントも教えてもらえますか?

大西 実はいろいろと衣装の候補を用意していただいて、最初は別のものになりそうだったんですけど、「曖昧ガール」のイメージはピンクっぽいと思ったのと、ニットだったので選ばせてもらいました。

――ニットがお好きなんですか?

大西 撮影現場が寒くて、あったかいのが着たかったんです(笑)。でも、毛糸の感じが部屋着感を出していて良かったです。ジーンズも、サイドにハートの模様がラインみたいに入っているのが可愛いくて好きです。

――ヘアピンも可愛いですね。

大西 三角の。ですよね。でも、つける前に髪型をセットするとき、お団子らしいお団子ヘアではなかったので、大奥みたいになるのかと心配になっちゃって。

――それは心配になりますね(笑)。

大西 それかサザエさんみたいになるのかと。でも、いつもお願いしているメイクさんだから「絶対大丈夫だよね」と思い、静かにしていたら、服を着たときにはいい感じになっていて、ピンも可愛くつけてもらったので良かったです。

楽しんでもらえるならファンがいる場所に
――『曖昧ガール』のキービジュアルでも白文鳥と一緒に写っていますが、ただ、あちらは小道具ですよね?

大西 そうです。命を宿していなくて。思いのままです。

――言い方がダーク(笑)。キービジュアルやジャケット撮影での思い出となるとどんなことが浮かびますか?

大西 実は、『佐々木とピーちゃん』のエンディング主題歌が決まるずっと前、「夢で逢えなくても/指先ハート」と同じ日に撮影していたんです。だから、どんな曲になるのかもわからないから、「どの衣装がいい?」と聞かれても「え? わかんないないです」ってなっていました。でも、最終的に楽曲の雰囲気とめちゃめちゃピッタリで。

――大西さんの楽曲ですと、ハードロックな「Elder flower」もエンディング主題歌でしたから。

大西 ダークな感じになる可能性もありましたよね。良かったです。

――ジャケットでのファッションについても大西さん的オススメポイントをぜひ。

大西 三つ編みを垂れさせた感じにリボンが4つくらいついた髪型もすごく可愛いし、パステル系な色合いの衣装もすごく可愛いし、イヤリングと胸元についているボタンがマッチしていたのも可愛かったですね。

――可愛いポイントが目白押しですね。

大西 あとは靴のリボンがめっちゃ可愛かった! ヒールはすごく高いんですけど。

――ではそこにも注目してもらいましょう。続けて、カップリング曲の「恋よりずっとOnly you」についても教えてもらえますか? こちらも大西さんらしくて愛らしい曲ですね。

大西 これもお気に入りですね。スタッフさんもかなり気に入っていたので収録することになりました。

――楽曲を受け取ったときの大西さんの第一印象は?

大西 私、小倉唯さんが大好きじゃないですか?

――はい。

大西 そんな私の姿を見て、推しを思う曲を作ろうと思ったらしくて。だから、私が小倉唯さんを慕う歌詞になっているんですよ。受け取ったとき、歌詞を書いてくれた東乃(カノ)さんから一言コメントが添えられていて。そんなことも初めてだったのですごく驚きました。「私が小倉唯さんを好きなことバレてるんだ?」って思いました。でも、自分のための楽曲というのは嬉しかったですね。

――では、歌詞にすごく共感できました?

大西 なんかもう「わかる、わかる」って感じで(笑)。

――感情移入しながら歌えました?

大西 レコーディング自体は本当にスムーズだったんですけど、家で聴いていたときはいろいろと考えました。小倉唯さんのことを知った中学生のときのピュアな気持ち、「見つけちゃった!」みたいな気持ちで歌うのがいいのか。それとも、今も好きではあるので憧れのような気持ちで歌うのがいいのか。ただ、今の自分にピッタリな歌詞ではあったので、「普段の私がしゃべっている感じがいいのかな」と思って、今の自分らしい歌い方でやらせてもらいました。「曖昧ガール」が元気な歌い方だったので対比もつけたくて。

――タイトル通り、あくまで恋愛感情とは違う表現で。

大西 はい。恋愛感情ではないので。

――特に感情移入できた歌詞はどのあたりですか?

大西 「たったひとりのあこがれの人」とか「どんな瞬間も宝物」とか「天使が舞い降りた」とかは共感できましたね。

――「天使が舞い降りた」は実際に言っていましたしね。

大西 はい。なので反映されていてビックリしました。「何を見ながら歌詞を書いたんだろう?」って思いましたね。

――難しく感じた部分はありましたか?

大西 本心から歌ってはいたんですけど、例えば「ah まぶた閉じたら逢いにきて」ってあるじゃないですか? でも実際にお会いしたら「ah」じゃないというか。台詞で言うとしたら「あぁーっ、今のもう可愛いですーっ!」て感じになるので。

――楽曲の雰囲気が変わっちゃいますね。

大西 変わっちゃいますね。なので、「どれくらいなら裏返っていいのかな」って考えながら、「いい雰囲気」になるように歌っていました。

――大西さんを表した曲ということで、歌のニュアンスなどは大西さん主導で進めていきましたか? ディレクターと相談する部分も多かったですか?

大西 歌のイメージについては(作・編曲の)木村(孝明)さんから、この曲の前に作ってもらった「指先ハート」とは全然雰囲気が違うので、ということを聞いていて。「ああいうキュルキュルとした、ラブリーでキュートな歌い方ではない方が嬉しいです」というお話でした。そこは自分のイメージと一致していたので、「じゃあ大丈夫かな」という感じで歌いましたね。木村さんにも「イメージ、合っています」と言っていただけました。

――確かに、穏やかで落ち着いた大西さんを感じられる「いい雰囲気」の楽曲になりましたね。

大西 そうですね。ちょっとロマンチックな雰囲気が出せた気はします。

――2024年になってから最初のシングルとなりますが、今年の目標はありますか?

大西 本当に個人的なところでいえば、健康に気をつけたいです。去年はイベントも延期させてしまったので。

――ファンクライブイベント『カラーりんぐ!』のことですね。ただ、病気はやむなしかと思います。不健康や不摂生の結果ではないんですよね?

大西 そうなんですけど、もう病気をしたくないと思ったんですよね。よくわからない