ブラック企業? Amazonで労働組合結成! 組合委員長が告発する社員追い出し工作と異様な懲戒処分の実態

ブラック企業? Amazonで労働組合結成! 組合委員長が告発する社員追い出し工作と異様な懲戒処分の実態
横田増生『アマゾン・ドット・コムの光と影』(情報センター出版局)

 世界的ネット通販会社であるアマゾン。2014年度の売上高は日本法人単体で79.12億ドル。取り扱うジャンルは書籍・雑誌をはじめとして、食品や電化製品、はたまた自動車まで販売している。ワンクリックで商品を購入できる便利さから、ヘビーユーザーも多い。

「アマゾン帝国」とも呼ばれる同社だが、一方で世界的にその労働環境の過酷さが大きな問題となっている。

 今年8月にはニューヨークタイムズにて長時間労働や密告、追い出し工作などの過酷な労働環境が暴露された。

 ニューヨークタイムズでの告発記事に対して、アマゾン創業者ジェフ・ベゾス氏は「この記事は私の知っているAmazonや、私が毎日共に働くAmazon社員について書かれたものではない」「我々はそのような非情な行いは決して許せない」(「Forbes JAPAN」ウェブ版、8月18日付「全文掲載『アマゾンはブラック企業』批判へのジェフ・ベゾスの反論」より)と弁明したものの、世界的にアマゾン従業員の怒りは高まっている。

 すでにイギリス、フランス、ドイツ、ポーランドのアマゾンで労働組合が結成されているが、アマゾン・ジャパンでも世界で5カ国目となる「アマゾン・ジャパン労働組合」が結成された。

 アマゾン・ジャパン労働組合が置かれる東京管理職ユニオンには、従業員からは10件以上、労働環境の過酷さなどについて労組結成前から相談が来ていた。

 アマゾン・ジャパンは従業員のメディアへの露出が懲戒処分の対象になるといわれているからか、現役正社員からの告発はなされていなかったが、労組も結成された現在、その闇は暴かれつつある。

 まず本稿では冷酷な従業員の評価システムを挙げよう。

 そのキモは徹底した相対評価だ。仮に従業員全員が素晴らしいパフォーマンスを発揮しても、従業員の成績には順位が付けられてしまう。結果、ローパフォーマー(低評価の従業員)がその業績に関わらず必ず一定の割合で作り出され、淘汰されることになってしまうのだ。

 しかも評価基準は、勤務への態度、姿勢、関係性、全てがチェックの対象となっているのだが、実際には不明確であるという。

 従業員からすれば、何をもってローパフォーマーの烙印を押されてしまうのかが分からない。不明確な基準での相対評価、となれば、従業員はリストラ対象となることへの恐怖とプレッシャーに常に晒され、社内が重苦しい空気に支配される。

 実際、社内はギスギスし、アマゾン・ジャパンでも、ローパフォーマーのなかに自分が入らないために同僚を密告したり、足を引っ張り合うといった行為がまかり通る状況であるという。

 また、業務における懲戒処分のハードルが低いこともアマゾン・ジャパンでの労働環境の問題点としてあげられる。日常的な仕事で、問題点の指導を受けることすら、懲戒に該当すると決められているのだ。アマゾン・ジャパン労働組合が置かれる東京管理職ユニオンの鈴木剛執行委員長は以下のように指摘する。
 
「病気やメンタルの疾患から復帰したような人がローパフォーマーとして狙い撃ちされることもあります。これは労働契約法第5条の安全配慮義務違反にあたると考えます」

 心身の不調に陥る、日常的なちょっとした指導を受ける、それらが全てリストラへの一里塚とされてしまう職場なのだ。

 まさに労働者の地獄、としか言いようがないが、このアマゾン・ジャパン、さらにローパフォーマーとなった従業員に対するリストラの手法もなかなかエグい。

 それは同社におけるPIP(業務改善プラン Performance Improvement Plan)のあり方に端的に現れている。

 PIPとは外資系企業を中心にリーマンショック後に導入されている「パフォーマンスに問題があるとされる社員に業務命令として目標を与え、その達成状況を確認しながら業績改善を図る」という制度だが、実際は辞めさせたい従業員を退職させるためのリストラ手法として使われている。

 これは、達成不可能な目標を設定したり、逆に本人のキャリアと比べて余りにも過少なノルマを設定し、従業員のプライドと意欲を削ぐ、といったものが告発されている。

 このPIP、アマゾン・ジャパンでも大いに「活用」されているのだが、それは他社と比べても、露骨な追い出し工作としての実態を持つ。

「アマゾン・ジャパンのPIPが他社と比べても際立っている点は、PIPそのものが懲戒処分に組み込まれていることです。そしてPIPを受ける過程で、解雇を含むペナルティを受けることが記された誓約書に執拗にサインを迫られる。サインを拒めば業務命令違反として懲戒処分を示唆されます。サインを迫ること、面談時に退職を誘導することなどは民法709条の不法行為、退職強要にあたる可能性があります」(鈴木執行委員長)

 他社のPIPも十分に悪質なのだが、アマゾンの場合は、より露骨に解雇目的のために運用されているといっていいだろう。PIPを懲戒処分として位置づけることは、労働契約法上の懲戒処分において必要とされる「社会的相当性」という観点から見ても大いに疑問である。

 また、PIPを受けることになると、労働時間も通常の労働に加え、絶え間ない改善を要求されるPIPの業務が加わることになるため、非情な長時間労働に従事することとなり、従業員の疲弊は相当なものになるという。

 しかも、今回のケースでは従業員に対し直属の上司が「自主退職かPIPを受けるか」と二者択一を迫り、また「PIPは退職に導くためのシステムであり、私なら選ばない」と語ったという。

 一定の割合で産み出されるローパフォーマー。彼らを退職に追い込む手段として、PIPをフルに活用しているのだ。

 不明確な評価基準、職場には密告が蔓延、過酷な懲戒の制度。そして制度的に産み出されるリストラ対象者。これがネット時代の寵児における労働の現実だ。

 アマゾンに潜入取材を敢行した著者による横田増生『アマゾン・ドット・コムの光と影』(初版・情報センター出版局、のち朝日文庫)では以下のように書かれている。

〈アマゾンも日通も、人が長つづきしないことを、露ほども気にしていないことだった。 ここでは、アルバイトとは募集広告を打ちさえすれば、陸続とやってくる"使い捨て人材"の異名でしかない。
 ある業界関係者はこう話す。
「アマゾンは正社員の定着率も良くないですからね。とくにできる人ほど独立したり、ほかの会社に移っていきます。それを見ると、つくづくアマゾンは人よりシステムで持っている会社なんだなあと思います」〉

 著者が潜入したのは2002年だが、人を交換可能な機械の部品のように扱うアマゾンのシステムはこの頃から存在していたわけだ。

 このようなシステムのきしみが、現在の世界各国における労働組合の結成に端的に現れているといってよい。

 何でもワンクリックで手に入れることができるという、アマゾンの充実したサービスを我々は享受している。だが、その裏にはこのような過酷な労働環境があることは認識しておくべきだろう。
(高幡南平)

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