内部文書の再調査を宣言した安倍政権だが、案の定、その腰は重い。文書やメールが実在するのか/したのかなんて1日もあれば調べられるだろうに、結果報告はきょうもなし。
だが、官邸がいくらごまかしても、疑惑は止まらない。きょうもまた別の角度から、新たな証言・事実が出てきた。
そのひとつが、松野博一文科相の"虚偽答弁"の発覚だ。2016年9月6日に松野文科相が加計孝太郎理事長と、文科省OBで加計学園理事を務めていた豊田三郎氏と面談していたことについて、松野大臣は「(その場は)大臣就任への挨拶をいただいた」「獣医学部にかんする話は一切なかった」と答弁していたが、きょう、その席に同席した関係者が"加計学園側が獣医学部の構想を大臣に直接伝えていた"と証言していることをTBSが伝えたのだ。
内部告発が続いている文科省だが、今度は文科省トップの松野大臣自らが"事実の隠蔽"を行っていたことが明らかにされたというわけだ。これでは、文科省の内部資料がないことにされてしまったのも当然だろう。
今後も、松野大臣が官邸の意を受けて疑惑隠蔽に動くのは必至で、そうした隠蔽を阻止するためにも、マスコミと野党はこの虚偽答弁を徹底追及して、松野を辞職に追い込む必要がある。
そして、もうひとつ判明した新証拠は、加計学園が昨年11月に実施したボーリング調査にかんする事実だ。本日の『羽鳥慎一モーニングショー』(テレビ朝日)では、今治市が情報開示した資料7840ページ分の検証途中経過を放送。そのなかで判明したのは、2016年10月31日に加計孝太郎理事長が獣医学部予定地のボーリング調査の申請書を今治市に提出。
そもそも、国家戦略特区による獣医学部新設の事業者に加計学園が選ばれたのは、今年の1月20日のこと。にもかかわらず、昨年11月の段階でボーリング調査が行われていたことには疑問の声があがっていた。
だが今回、番組が明らかにした資料によって、まだ京都産業大学にも獣医学部新設の可能性があった段階で、ボーリング調査が申請されたその日に今治市がそれを承諾し、土地調査が開始されるという"異常事態"が起こっていたことが判明。これには番組の取材に応じた不動産コンサルタントの長嶋修氏も「申請から自治体の承諾を得られるのは、少なくとも数日から1週間はかかる」「そもそも土地調査をするのは、基本的にこの土地で建設するという確証がないと行わない」と指摘している。
まるで森友学園を彷彿とさせる話だが、なぜ、このような無茶苦茶な工程を今治市は踏んだのか。それは「加計学園の獣医学部新設は決定事項」であり、「内閣府の指示」があったからとしか考えられない。
事実、きょうの同番組ではこのこと以外にも、内閣府が今治市に働きかけた数々の証拠が報道された。
本サイトでも、ジャーナリストの横田一氏が指摘していたが、今治市が開示した大量の資料のなかには、内閣府が「加計学園ありき」で動いていたことを示すさまざまな資料があった。番組はそれらをピックアップ。2016年8月3日に内閣府から今治市職員に対し、〈各者でスケジュールの共有を図り、当事務局からも、そのスケジュールに合わせ、進捗を確認できる体制をつくるべく(中略)今治市のスケジュール表を作成願います〉と書かれたメールが送られていたこと、翌4日に今治市が作成したスケジュール表には「H30.4月開学予定」「(2016年12月に私有地の)無償譲渡案」と書き込まれていたことを紹介した。
また、今治市企画課が作成し、2016年10月25日に市議会で配られた資料でも、「スケジュール感」として〈内閣府としても最速で平成30年4月の開学を目指していることが伺える〉という記述があることを報じた。
何度も言うが、加計学園が事業者に決定したのは今年1月であり、事実上、ライバルだった京産大が脱落したのも、国家戦略特区諮問会議が〈広域的に獣医学部が存在しない地域に限る〉と決定した昨年11月9日のことだ。しかし、今治市の資料を見れば、それ以前の時点から、内閣府とともに2018年4月開学ですりあわせしてきたことが示されている。
ここで問題になってくるのは、一体いつから獣医学部新設は「加計学園ありき」で進められたのかということだろう。きょうの『モーニングショー』では、この点について、テレビ朝日の玉川徹氏が重要な指摘を行った。
玉川氏は、現在、校舎の建設工事を行っている今治市のキャンパス予定地の映像を見ながら、今年1月の決定から半年でかなり工事が進んでいることを疑問視。その上で、「内閣府がこういうスケジュール(2018年4月開学)で進めなさいって2015年時点くらいから言っているとすれば、こういうふうに準備できますよね」と述べたのだ。
そう。自由党の森ゆうこ議員が国会で追及したように、今治市職員の出張記録によれば、2015年4月2日に同市企画課長らが「獣医師養成系大学の設置に関する協議」のために首相官邸や内閣府を訪問していたことがわかっている。これは今治市が国家戦略特区として獣医学部新設を提案する約2カ月前のことだ。
この事実に対して萩生田官房副長官は「面会記録は破棄した」の一点張りで、まさに森友学園問題と同じ無責任極まりない逃げ方をしているが、籠池泰典氏と財務省の面談と同じで一地方の職員が面会したいと言ってきたとしても、首相官邸や内閣府の官僚がおいそれと応じるはずがあるまい。
しかも、この今治市職員と首相官邸、内閣府の面会から約4カ月後の8月の人事で、高等教育局長だった吉田大輔氏が辞職。「週刊新潮」(新潮社)はこの吉田氏の人事について"吉田氏は加計学園の獣医学部新設に強硬に異を唱えていた。
国家戦略特区として獣医学部新設を提案する以前から官邸ならびに内閣府が異例の対応を行っていたその事実からも、加計学園は官邸主導で強硬的に進められていたのはたしかだ。つまり、文科省の文書だけを調査したところで、その全容が解明されるはずがない。番組内で、玉川氏はこうも指摘していた。
「(文科省は)言われたからやった側なのであって、なんで『やれ』と言ったのかは、文科省を調べても出てこない。だったらそれは内閣府だとか官邸のトップレベルだとか、もっと言えば"総理の指示があった"と文書に書いてあるんだったら、総理を調べなきゃいけない。第三者が総理を含め調査しなければ、総理が言った『徹底した調査』にはならないんですよ」
安倍首相に「徹底した調査」をする気などないのは明らかだが、今治市の資料だけでもここまでの証拠が出てきたのだ。安倍首相が権力を私物化したこの一大不正、まだまだ追及・検証を終わらせるわけにはいかない。