AV女優がAV女優になる動機は、様々だ。

「『エッチが大好きで、天職かと思ったから』、『蒼井そらちゃんに憧れて』、『有名になりたいから』などのポジティブな動機が、ここ10年で急上昇しましたが、昔から変わらず一番多いのは『金』です。

先日も元芸能人の単体AV女優さんにインタビューしましたが、『家族が病気で入院し、お金が欲しかったから』と告白。ダメ元でそのまま原稿にしたところ、もちろんその後の事務所チェックで、ガッツリ削られました」(AVライター)

 AV女優でも単体としてアイドル売りされている女優の本音は芸能人と同様で、一般人はなかなか知ることができないということらしい。

 だが、企画女優は別だ。自由に発言できる立場にいる彼女たちの言葉は、こちらが予測不可能な面白さをはらんでいることがある。

「宝島」(宝島社)で連載中の「新・名前のない女たち」は、毎回AV女優のありのままをえぐり出している数少ないインタビュー企画のひとつだ。

 最新号である4月号もやはり、仰天必至の言葉がズラリと並ぶ。

 インタビュアー・中村淳彦氏の前に現れたのは、〈気品と華のある熟女で、港区的な上品さを醸しだしていた〉、時任明菜・53歳。彼女は初っ端から、「借金まみれの身」であることをぶっちゃける。だが、そこはよくある話。さらりと流そう。

 そんな彼女の素性は、「旦那が社長で私が専務で宝石ブランドを起業」して、「ずっと宝飾業界で働いていて、大展開していた」業界の有名人だという。ブランド名を聞いた中村氏も〈有名ブランド〉としていることから、一般的にも知られているブランドなのだろう。


 どれだけ儲けていたかと言えば、〈客単価は30万円~50万円、1日100万~150万円平均して売り上げてた〉というから、順風満帆という言葉がしっくりくる。

 が、転落は突然訪れる。

「2008年のリーマンショックでなにもかも失いました」

 まず、自社ブランドが入っていた「百貨店全体がおかしくなった」といい、売り上げが激減。「一階で20万円以上の商品は売ってはならない」ことになり、「実質的にダイヤモンドの販売ができなくなった」という。

 以後、百貨店販売から撤退した彼女は、〈全国の各百貨店やデパートの宝飾催事をまわった〉が、不況は生半可な深刻さではなかった。後はお決まり。〈銀行への返済ができなくなり、資金がショートした〉。それが彼女の、AV女優になった動機だった。

「銀行返済のためにAV女優になったんです。少しでもお金になるかなって」

 ここで初めて具体的な数字が出るのだが、現実的ではない額に思考が追いつかなくなる。

〈銀行への支払いは月400万円〉

 2014年、サラリーマンの平均年収は442万円。それを彼女は、たった1ヶ月で稼がねばならなかった。
とうてい無理な話だと思うが、なんと彼女は、〈AV出演と催事の販売を繰り返し、なんとか400万円作って〉支払っていたというのだ。

 さらに驚くべきは、AV女優になったことを会社の従業員に話し、その上「旦那や旦那の親にも話した」ということ。これには中村氏も驚きを隠せなかったが、それに対して逆に彼女は〈「え?」と驚いた顔〉をしていたそうだ。

 そんな旦那が、ある日突然、消える。これもよくある話だが、やはり規模が違うのだ。

「旦那が300万円くらいの在庫を全部持って逃げちゃったんです」

 連帯保証をしていた彼女に降りかかった会社の借金、その額、1億3000万円。借金をしているAV女優は多いが、まさかこんな数字が企画AV女優の口から出るとは誰も思うまい。

 さらにすごいのは、自己破産をせず、AVのほかにも〈様々な仕事に手を出して、現在も朝昼晩関係なく働きまくっている〉結果、「今のところなんとかなっている」と、一連の話を〈笑いながら話している〉ところだろう。

 その壮絶な境遇に驚かされたかと思いきや、本当に度肝を抜かれるのは、彼女の"強さ"だったとは。何があっても懸命に生きることの清々しさを、ときにAV女優は教えてくれるのだ。
(羽屋川ふみ)

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