ようするに、安倍首相は「デフレマインドを払拭するためには財布のひもを緩めろ」と言うのである。あくまで「ここにおられるエコノミストのみなさん」に向けた発言とはいえ、消費増税によって国民に負担を強いておいて、挙げ句「財布のひもを緩めろ」とは、まったくふざけているとしか言いようがない。「デフレマインドを払拭」したいのであれば増税など実行すべきではなかったし、むしろ財布のひもを緩めてほしいのなら、いまからでも消費減税を検討すべきだ。
実際、消費増税が国民の生活に大きな打撃を与えていることは、総務省が今月6日発表した10月の家計調査の結果からもあきらかだ。2人以上世帯の1世帯当たり消費支出(物価変動を除いた実質)は、前年同月比で5.1%減。マイナスに転じるのは11カ月ぶりで下落幅は3年7カ月ぶりの大きさ。前回の消費増税時(2014年4月)は4.6%減だったから、今回の増税は前回以上のインパクトになっているのだ。
だが、安倍政権は消費増税の影響をまったく認めず、西村康稔経済再生担当相は「台風の影響」などと述べ、安倍首相は国民の生活も顧みずに「金を使え」と迫る。これでは現実を無視した無能総理だと自ら宣言しているようなものではないか。
しかし、安倍首相のふざけた言動はこれだけにとどまらない。この期に及んで、さらに大企業優遇を打ち出したからだ。
というのも、12日に決定した2020年度の与党税制改正大綱では目玉のひとつとして「オープンイノベーション促進税制」の創設を掲げたが、これは大企業が設立10年未満などの条件を満たしたベンチャー企業に1億円以上を出資した場合、出資額の25%を減税するという。さらに、次世代通信規格である5Gを整備する企業などにも投資額の15%を税制控除するというのだ。