安倍元総理銃撃事件からまもなく4年。事件をきっかけに明らかになったのが、宗教2世の存在と被害です。

「教団の否定」と「自身の出自」の間で今も苦しむ旧統一教会2世の男性を取材しました。

「銃撃事件をきっかけに自分が被害者だと初めて気づいた」

「旧統一教会がなければお前は生まれなかった」自らの出自に苦し...の画像はこちら >>

 今年4月、親が旧統一教会を信仰する2世たちが記者会見を開きました。

(旧統一教会2世 野浪行彦さん)「安倍晋三銃撃事件をきっかけにして、多くの2世たちが声を上げました。それがきっかけで私は自分が(旧統一教会の)被害者だということに、初めて気づきました。今現在2世たちはある意味、残酷な状況に改めて直面しようとしています」

 野浪行彦さん。旧統一教会を信仰する両親のもとに生まれました。

安倍元総理銃撃事件 山上被告の犯行の背景に「母親の信仰と献金」

「旧統一教会がなければお前は生まれなかった」自らの出自に苦しみ続けた宗教2世 銃撃事件に感じた「責任」 トラウマと向き合い“2世同士のつながり”呼びかけ「教団の清算手続きが終わっても2世の人生は終わらない」
MBS

 2022年7月8日、山上徹也被告は奈良市で安倍晋三元総理を銃撃し殺害したとして、奈良地裁から無期懲役の判決を言い渡され、大阪高裁に控訴しています。

 山上被告が犯行に及んだ背景にあったのは、母親の旧統一教会への信仰と1億円以上の献金、そして、それらを苦に自殺した兄の存在でした。

“合同結婚式”で結ばれた両親 物心ついた頃から信仰を強制

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 野浪さんは物心がついた頃から両親に信仰を強制されていたといいます。

(野浪行彦さん)「毎朝、毎晩、祭壇の前で教祖へ絶対服従を誓うという、そういうことをしていた」

 両親は教団が主催する合同結婚式で結ばれたため、信仰に反発すると存在を否定されたと話します。

(野浪さん)「『旧統一教会がなければそもそもお前は生まれていなかったんだ』というふうに言うわけですよ。それって本当に嫌なことなんです。旧統一教会という憎しみの対象があって、その憎しみの対象がなければそもそも自分は存在していないというわけですよね。その絶望感みたいなのがすごくありましたね」

フランス人女性と結婚 “普通の家庭”が築けると思った矢先…

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 18歳で家を出たあと、フランス人の女性と結婚し、旧統一教会のことを隠しながらフランスで生きてきました。

 妻が身ごもり、ようやく“普通の家庭”が築けると思った矢先、安倍元総理の銃撃事件が起きました。

(野浪行彦さん)「みんなが見て見ぬふりをし続けてきて、みんなが旧統一教会の問題をなかったことにし続けてきた結果、事件が起きたわけですね。

ものすごく事件への責任を感じた。自分自身も教会の問題を見て見ぬふりをしてきた一人だったということへの強い反省もありました

「家族のそばにいてはいけない」妻と離婚し日本に帰国

 ふたをしたはずの旧統一教会に対する恐怖が蘇り、感情のコントロールができなくなりました。

 結局、「こんな自分が家族のそばにいてはいけない」と思うようになり妻と離婚、1歳の娘を残し、2024年6月、日本に帰国しました。

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 帰国後、自身の怒りや恐怖と向き合うため、トラウマ治療が専門のクリニックに通い始めました。

幼少期からのトラウマが原因の「複雑性PTSD」と診断

(白川医師)「ずっと思ってきたことですよね。『私は生きていてはいけない』と。どうしてですか?」
(野浪さん)「教会によって生み出されたという気持ちが一番あるので。『生み出しやがって』という気持ちが一番ありますかね
(白川先生)「怒りや抗議?感情としては」
(野浪さん)「怒りですね」
(白川医師)「対象は?」
(野浪さん)「本当にすごく大きな巨大な邪悪な何か、という感じがします」

 両親の信仰による幼少期からのトラウマが原因の「複雑性PTSD」と診断されました。

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(こころとからだ・光の花クリニック 白川美也子医師)「子どものころの本当に苦しい心的な内容をやり過ごし、やり過ごし生きてきた方が、本当にこれっておかしなことだったんだよねということが分かって、それでそのころのことが全部出てきたんだと」

 治療を始めて半年ほどで、少しずつ症状が改善したといいます。

2世として旧統一教会の問題を自ら発信するように

 野浪さんは、自らも2世として旧統一教会の問題を発信するべきだと感じ、教団から受けた被害についてSNSに投稿したり、損害賠償を求めた裁判を起こしたりしています。

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(飯田正剛弁護士)「初めて、いわゆる宗教2世の当事者の生の声を聞くという、その意味で本当に衝撃の連続というか。こんな形で統一教会が加害行為をして、具体的にこういう形で生の人間が被害を受けているんだと。当事者が声を上げることの意味は、われわれ代理人弁護士がやることとは全然次元が違う」

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 妻や娘とは離婚後1年以上連絡を取っていませんでしたが、治療などによって気持ちが落ち着き、今年に入ってからは週に1回程度ビデオ通話をしています。

(野浪行彦さん)「(2人には)愛しているということを伝えたいし、父親としての務めを精いっぱい果たしていきたいという気持ちは伝えたいですね」

旧統一教会に解散命令 高額献金などによる被害申し出の受け付け開始

 今年3月、東京高裁は旧統一教会に解散を命じました。

 教団は最高裁に特別抗告していますが、教団の財産についてはすでに清算人による「清算手続き」が行われていて、高額献金などによる被害申し出の受け付けが5月20日から始まっています

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 被害が申告できる期間は1年間

この間にできるだけ多くの2世が申告できるよう、野浪さんはSNSを通じて知り合った同じく2世の田村一郎さん(仮名)とともに、2世同士の情報交換の場として「連絡会」を立ち上げました。

「自分たち2世が仲間としてつながり合える、最後の大きなチャンスかもしれない」

(田村一郎さん(仮名))「『これは団体が必要だ』と野浪さんから熱く言われて、やるしかないだろうってなったのがきっかけ」
(野浪行彦さん)「被害の自覚がない人が過半数で、そういう人と連絡が取れたらいい。私たちが訴えるというよりも、連絡をしてほしいという、待つ気持ちが強い」

「旧統一教会がなければお前は生まれなかった」自らの出自に苦しみ続けた宗教2世 銃撃事件に感じた「責任」 トラウマと向き合い“2世同士のつながり”呼びかけ「教団の清算手続きが終わっても2世の人生は終わらない」
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 連絡会立ち上げの際の記者会見では、全国の2世たちにこう呼びかけました。

(野浪行彦さん)「この清算というものが自分たち2世が互いに仲間としてつながり合える、最後の大きなチャンスになるかもしれないということです。清算の是非はともかく、清算に関して情報共有をしていくだけでも、それがいつか何かの役に立つことがあるかもしれません。本当にどのような立場の2世でも構いません。信仰の有無は問いません。とにかく連絡が欲しいです

約30人の2世からの連絡 「本当に苦しい思いをしてきたんだなと…」

 2世の人たちが申告のため情報交換する連絡会を野浪さんたちが立ち上げて約1か月が経ちました。

 すでに30人ほどの2世から連絡が来たといいます。

(野浪行彦さん)「本当に苦しい思いをしてきたんだなという感じの連絡が多いですね。本当に話すだけでもお互いにすごく意味のあることなのかなと思っています」

「旧統一教会がなければお前は生まれなかった」自らの出自に苦しみ続けた宗教2世 銃撃事件に感じた「責任」 トラウマと向き合い“2世同士のつながり”呼びかけ「教団の清算手続きが終わっても2世の人生は終わらない」
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 清算手続きのための連絡会ですが、同じ2世として、「痛み」や「悩み」も分かち合えます。

(旧統一教会2世)「(旧統一教会を)やめないよりは、やめたほうがよかったですけど、やめたからって人生バラ色ってわけではないんです。やめたらマイナスからのスタート
(野浪さん)「本当にマイナスからのスタートですよね」

「清算が終われば旧統一教会的にも世間的にも終わりとなるが…」

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 これまで教団に翻弄され孤立してきた分、これからの人生は互いに支え合いながら生きていけたらと野浪さんは話します。

(野浪さん)「清算が終わったら、清算人的にはそれで終わりだし、旧統一教会的にもそれで終わりだし、裁判所的にもそれで終わりで、世間的にもそれで終わりとなるんですけど、そういうのが終わっても、旧統一教会の2世の人生というのは終わらないわけですよ。

清算後にも残るような2世同士の、仲間同士のつながりが築けたらいいなと思っています

(2026年6月10日放送 MBSテレビ「よんチャンTV」より)

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