W杯でも…やまないアスリートへの誹謗中傷 どうすれば?
7月2日に帰国したサッカー日本代表。多くのファンからねぎらいの声が聞かれた一方で、一部では心無い批判や誹謗中傷の言葉をSNSなどでぶつけている人もいます。
なぜ誹謗中傷は絶えないのか?FIFAなども対策に乗り出していますが、さまざまな課題があるようです。
スポーツは「誰のせい」の議論になりやすい?FIFAは約53万件の投稿を削除
FIFA(国際サッカー連盟)は6月、今回のワールドカップ開幕以降にSNS上に書き込まれた投稿のうち、約53万件を「選手や監督らへの誹謗中傷と特定し削除した」と発表。前回大会で削除された28万7000件を1週間で上回ったということです。
日本人選手に向けても次のような投稿がみられました。
・責任取ってサッカー辞めないの?
・お前のせいで負けた
・普通に戦犯だわ
・今後2度と代表に出ないでね
・謙虚さのないガキは必要ない
・切腹して謝罪せよ
アスリートの誹謗中傷問題に詳しい高橋駿弁護士は、スポーツには勝敗があるので負けると「誰のせい」といった議論になりやすいといいます。試合でミスが目立つと「こいつのせいだ」「制裁を」などと誹謗中傷へ発展してしまうということです。
競技団体によるSNSモニタリングが始まったのは実は最近!?
一方で、誹謗中傷の数が増えているかどうかは「現時点ではわからない」と高橋弁護士はいいます。理由の一つに、統計化がこれまで技術的に困難で、最近になって行われるようになったことが挙げられます。
実は、各競技団体などがSNSをモニタリングし始めたのは“つい最近”のこと。
【各競技団体のモニタリング開始時期】
日本陸上競技連盟:2025年9月 世界陸上の日本選手団をモニタリング
日本高校野球連盟:2026年3月 センバツ期間中 選手・審判・関係者を守るため
日本プロ野球選手会:2025年10月 CS・日本シリーズ期間 選手や選手の家族らも調査
日本野球機構(NPB):2026年7月 審判員に対する誹謗中傷監視システム導入
いつ・どんなときに・どんな言葉で、どれくらいの量の誹謗中傷が行われるのか、実態把握がまさに始まったところなのです。あまりにも広いネット空間をどこまでモニタリングするのかといった、コストが絡んだ課題もあります。
どこからが誹謗中傷?「線引き」の問題
SNSの誹謗中傷には「線引き」の難しさもあります。
「死ね」や「殺す」といった言葉は分かりやすい誹謗中傷の例ですが、では、例えば「代表の資格なし」はどうなのか?どこからが誹謗中傷にあたるのでしょうか。
高橋駿弁護士に聞くと、誹謗中傷かどうかは投稿の回数や文脈などを踏まえ、最終的には裁判官が個別に判断するとした上で、「線引きはすべきではない」という見解。
具体的に線引きを決めると「ギリギリの表現」を狙って投稿する人が現れると指摘します。
まずは1人1人が「この言葉を言われれば相手は嫌じゃないか」という感覚を養うことも大事かもしれません。
投稿者の特定はしやすくなったが…それでも高いハードル
SNS事業者が投稿を規制することはできないのでしょうか?
2022年、プロバイダ責任制限法が改正し開示請求がしやすくなったことで、投稿者の特定がしやすくなりました。特定には、以下の2段階を踏む必要があります。
(1) SNS事業者に対しIPアドレスなどの開示を求める
(2)(1)でわかった情報をもとに通信会社などへ問い合わせて契約者の氏名・住所などの開示を求める
特定すれば刑事・民事訴訟へ進むことができます。
しかし、ここまでして訴訟を起こすのは時間と労力に見合わないといった指摘もあります。
さらに、中には海外事業者など開示請求に応じない事業者がいる(※応じなくても今は罰則はない)ため、投稿者特定に至らないケースがあるということです。
SNS事業者にとっては、人の悪口などの攻撃的な投稿ほど注目・拡散されやすく、つまりは広告収入につながりやすい事実もあります。
事業者が自分たちの利益を優先するのか、公共性を優先して誹謗中傷をなくそうと動くのか…。開示請求に応じない事業者がいる背景には、もしかするとそうした“利益”の側面が潜んでいる場合もあるかもしれません。
誹謗中傷する人 他人を制裁して快感を得る「正義中毒」のケースも
そもそも、誹謗中傷をする人が絶えないのはなぜなのでしょうか。
ストレスのはけ口や炎上商法、承認欲求などの理由もあるものの、中には「正義中毒」の人もいると高橋弁護士は指摘します。
人は他人を制裁したときに脳内にドーパミンが出て“気持ちよく”なり、悪いと分かっていてもやめられない場合があります。対策するには罰則を厳しくする必要があるということですが、根本的解決は難しい問題かもしれません。
また、高橋弁護士の実感として、誹謗中傷の投稿は近年、中学生・高校生・大学生といった若者に増えているとのこと。
若年層への教育・啓蒙はもちろんですが、オーストラリアやイギリスなどで導入されているSNSの利用規制が必要な段階に来ているかもしれないとの見解も示しています。
(2026年7月2日放送 MBSテレビ「よんチャンTV」より)

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