Funky、Free、Fine、Future……様々な想いが詰まった『F』は、聴き方、趣向、目まぐるしく変化する音楽シーンに身を置くファンキー加藤が、とことん自分自身と向き合い、葛藤も苦悩も不安も全部さらけ出した最新アルバムである。今まででいちばん人間味が強いがために満身創痍の“ズタボロ”な姿もあった。
しかし、それでも前に進もうと立ち向かうファンキー加藤のリアルな歌だからこそ、最高にカッコ良いのだと思う。

【動画】自身2番目に過酷な撮影の末、完成した「終われない歌」MV


■「ファンキー加藤、何があったの!?」というぐらい衝撃的なものにしたかった

──最新アルバム『F』が完成。「終われない歌」のMVはなかなかの問題作になりましたね(笑)。

ファンキー加藤:「ファンキー加藤が新曲リリースします、MVが出来ました」というのを客観的に考えたときに……歌詞に合わせたドラマ仕立てのきれいなMVを作ることもできたけど、例えばYouTubeで公開したとして、どれくらいの人が観てくれるのか? と思ったんですね。いっそのこと完全に振り切って「ファンキー加藤、何があったの!?」というぐらい衝撃的な映像・サムネイルにしたほうがクリックしてくれるなと。ファンキー加藤を嫌いな人にこそ、クリックして欲しいと思って作りました(笑)。


──加藤さんの並々ならぬ覚悟も感じました。

加藤:覚悟はありました。事務所の社長には「音楽の芯の部分から逃げていないか?」と問われもしましたが、正論だけじゃどうにもならないとも思ってるんですよね。これが正解なのかはわかりませんが、確実に面白いものが出来ましたし、これで反響がなかったら、いつでも社長に土下座する覚悟もできています(笑)。

──「終われない歌」もそうですが、アルバムを通して真っ裸ですべてをさらけ出す姿勢にグッときました。

加藤:MVの話になりますが、最初は内容も力加減もヤワで。
「これじゃ弱い!」とビンタ、チョップ、タイキックは体がブレるくらいやってもらいました。そのおかげで意地でも歌い切ってやるぞと必死になりましたし、痛みがリアルに伝わるものになったんじゃないでしょうか。

■ファンキー加藤はたくさんの人に支えてもらっている

──2018年に発表した前作アルバム『今日の詩』から『F』まで、どんな期間でしたか?

加藤:2019年はソロデビュー5周年イベントをやって、『OUR MIC FES』『八王子エイド』を開催。あとは40代に突入し、どうポジティブに考えても人生折り返しだなと思ったら考えることが多々あったり……そういった自分の経験が、今作の作品づくりにめちゃくちゃ反映されましたね。

──音楽に限らず、積極的にメディア露出もされ、いち視聴者として感じたのは“覚悟を持ってプロレスしてる”なと。

加藤:あはは(笑)。
一時期は引きこもってましたけど……僕は矢面に立ち続けなければいけないなと。今は「終わらない歌」にもある“さぁ向かい風をくれ”って気持ちです。高く飛ぶために向かい風も必要だと思えています。

──“さぁ向かい風をくれ”という気持ちになれた、“腹を括った瞬間”というのはあったのですか?

加藤:うーん……最初は自信を持てなかったし、歌えないって気持ちも強かったんですけど、たくさんの人に支えてもらっているんだということを痛感して徐々に覚悟ができた、という感じですね。今は音楽の聴き方・届け方も変わり、こうやってアルバムを出せること自体が貴重で。その喜びや感謝の想いが募っていたうえでより強く覚悟もできたので、『F』は一曲一曲、時間と労力をかけて丁寧に作っていきました。


■嫉妬したり、焦りを感じても、僕はファンキー加藤を貫くしかない

──「夢のカケラ」ではベリーグッドマンと共演してますが、若い世代は意識しました?

加藤:これもまた事務所の社長との話なんですけど、若い子たちの才能はすごいと愚痴をこぼしてたら「お前はオールドスクールだよ。で、どうする?」とストレートに言われまして。さっきまで愚痴ってたわりに僕は「ファンキー加藤を貫きます!」って答えていて。若い才能に嫉妬したり、焦りを感じても、僕はファンキー加藤を貫くしかないんだってその言葉に気づかされたんです。「今の本音の愚痴はすごく届いたから、それを歌詞にしていけば届くはずだ」と背中を押してくれたので、俺にしかできないファンキー加藤節がどこかにあるはずだと自分を信じて曲作りに挑めました。ただ、改めて考えてみると、もう少し慰めるような優しい言葉があっても良かったと思いますけどね(笑)。


──そこで「今だけを信じて」や「終われない歌」といった、今だから歌える曲を書いて。

加藤:そうですね。応援ソングを10年以上も歌ってきて、人を励ます言葉も尽きてきてるんですが。そこからひねり出したり、角度を変えてみたりして作り上げました。

■音楽の魔法をかけて、力に変え、歌っているところはある

──人を励ますだけでなく、自分を奮起する言葉が特に刺さって。「40」は同世代として力をもらいましたよ。


加藤:やはり最初の矛先は自分自身でしたからね。自分が痛くなるくらいのフレーズが生まれたりすると、よっしゃ! と思う反面、イタタタタ……と思ったり。そこに音楽の魔法をかけて、力に変え、歌っているところはありますね。

──アルバム全体通した印象として、すごく明るくてカラッとしてますしね。

加藤:そこはファンキー加藤らしく、“カラッと熱く”は意識しましたし、内側からジワッとこみ上げてくるものも詰め込むことができたんじゃないかなと。やはり、つねにライブを意識して曲作りをしていたので、人の心を揺さぶる熱がないといけないなと。

──ご自身の中で手ごたえのある曲はどれですか?

加藤:「八王子キッド」かな。ビートたけしさんの「浅草キッド」をオマージュした曲でもあるんですが、『八王子エイド』でLITTLEくんと再会したことをキッカケに出来た曲で。地元を舞台に、デビュー前後に七転八倒していた日々を曲にするのがすごく楽しかったです。

──ノスタルジーに浸るのでなく、前を向くために過去を振り返る曲になってますよね。

加藤:過去と現在、ほんの少し先の未来くらいが連動してる曲が好きなので。

■ファンキー加藤の5年後、10年後

──アルバムを掲げたライブハウス、ホール会場でのツアーも控えていますが。

加藤:ホールは演出面も考えられるんですけど、ライブハウスは過度な演出がないぶん、一対一のぶつかり合いで誤魔化しも効かないので、意外と緊張もあり。ツアーが事前に決まっている中でのアルバム制作で、ライブの反応も綿密に打ち合わせして作ったので、すごく楽しみでもあります。

──40代になった今、5年後、10年後はどうイメージしていますか?

加藤:考えたことなかったなぁ……ずっとそうだけど、目の前のことを精一杯やるということの繰り返しですね。『OUR MIC FES』も『八王子エイド』もまたやりたいし、ユーミン(松任谷由実)さんと北島三郎さんとホルモン(マキシマム ザ ホルモン)に出てもらう『八王子フェス』もやりたい! やりたいことはまだまだたくさんあるんで、5年後も10年後もとにかく歌い続けて、「今も生きてるぜ! 歌い続けてるぜ!」っていうのをいつまでも叫び続けたいですね。

INTERVIEW & TEXT BY フジジュン

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【プロフィール】
ファンキーカトウ/1978年12月18日、東京都八王子市生まれ。2013年、FUNKY MONKEY BABYSを解散。2014年2月にシングル「My VOICE」にてソロデビュー。『OUR MIC FES』を主催するなど、精力的に活動中。

【ライブ情報】
※新型コロナウイルスの感染拡大状況により公演日程に変更が生じる可能性がございます。開催に関する最新情報につきましてはアーティスト公式サイトにてご確認ください。

『ファンキー加藤 ライブツアー“F”』

■ライブハウスツアー
04/19(日)広島・SECOND CRUTCH
04/25(土)兵庫・神戸VARIT.
04/26(日)京都・KYOTO MUSE
05/09(土)鹿児島・CAPARVO HALL
05/10(日)福岡・DRUM LOGOS
05/16(土)長野・松本Sound Hall a.C
05/17(日)新潟・新潟Live Hall GOLDEN PIGS RED SATGE
05/23(土)北海道・旭川CASINO DRIVE
05/24(日)北海道・帯広 MEGA STONE
05/30(土)岩手・盛岡CLUB CHANGE WAVE
05/31(日)福島・Club SONIC iwaki
06/06(土)茨城・水戸LIGHT HOUSE
06/07(日)栃木・HEAVEN'S ROCK宇都宮VJ-2
06/13(土)大阪・umedaTRAD
06/19(金)東京・恵比寿LIQUIDROOM
07/31(金)静岡・Live House 浜松窓枠【※4/11の振替公演】

■ホールツアー
10/10(土)埼玉・さいたま市文化センター 大ホール
10/02(土)愛知・名古屋市公会堂
10/31(土)香川・サンポートホール高松 大ホール
11/03(火・祝)宮城・東京エレクトロンホール宮城
11/15(日)神奈川・相模女子大学グリーンホール 大ホール
11/28(土)岡山・岡山市民会館
12/05(土)福井・越前市文化センター 大ホール
12/26(土)大阪・NHK大阪ホール

【リリース情報】
2020.04.01 ON SALE
ALBUM『F』