TEXT:大谷和利(テクノロジーライター、原宿AssistOnアドバイザー)
Apple Musicでは、iTunesにもともと保存されていた手持ちの楽曲に関して、Apple側のカタログと自動的に照合するようになっている。
しかし、あるアーティストの異なるアルバムに同一曲が収録されていた場合、先にマイミュージックに追加したアルバムは全曲問題なく表示されるのに対し、重複した曲が、後から追加したアルバムの楽曲リストには表示されなかったりする(つまり、そのアルバム内では聴けない)のは、各アルバムのコンセプトを尊重するうえで問題を感じる。特にAppleは「音楽をデジタルデータではなくアートとして扱いたい」といったメッセージを発信しているのだから、なおさらだ。
また、原因不明ながら、Apple Musicをオフにした途端、手持ちの4700曲もの楽曲データが消えたという海外ブロガー(http://www.loopinsight.com/2015/07/22/apple-music-is-a-nightmare-and-im-done-with-it/)も存在するので、いずれにしても、自分が「所有する」楽曲データについては、バックアップを取っておくべきではある。
個人的に悩ましかったのは、ごく少数ではあるが、手持ちの楽曲がApple Musicのカタログとマッチした際に、同名の異なる楽曲に置き換わってしまった点だ。これは、手持ちの楽曲と同じ曲がカタログにはなく、別アーティストによる同名の曲が存在していたために起こったのだが、両者のアーティスト名やジャンルなどのメタデータは異なっており、本来であれば別の楽曲として認識される条件が揃っていた。
改めて音楽の世界を見回すと、案外、タイトルが同じ曲や、異なるアーティストによる同一曲のカバーレコーディングが多いことに気がつく。そこで、読者のみなさんにも同様の症状が起こった場合、筆者が試みた対処法が有効と思われるので、紹介しておくことにする。それは、iTunes側で手持ち曲のタイトル自体にハイフンや括弧を付け、たとえばアーティスト名を追加するというやり方だ。
とても単純な方法だが、筆者の場合にはこれで不具合は解消された。もしもの際に役立てば幸いである。
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[筆者プロフィール]
おおたに・かずとし●テクノロジーライター、原宿AssistOn(http://www.assiston.co.jp/) アドバイザー。アップル製品を中心とするデジタル製品、デザイン、自転車などの分野で執筆活動を続ける。近著に『iPodをつくった男 スティーブ・ ジョブズの現場介入型ビジネス』『iPhoneをつくった会社 ケータイ業界を揺るがすアップル社の企業文化』(以上、アスキー新書)、 『Macintosh名機図鑑』(エイ出版社)、『成功する会社はなぜ「写真」を大事にするのか』(講談社現代ビジネス刊)。