『横浜DeNAベイスターズ』広告ビジュアル/2023/横浜DeNAベイスターズ
●Art Director&Designer:榮良太[博報堂]
広告ビジュアル『横浜DeNAベイスターズ』の使用フォントを解説
今回は、プロ野球球団「横浜DeNAベイスターズ」の広告ビジュアルの使用フォントについて、デザインを手がけた榮良太[博報堂]さんに取材。エッジの効いたインパクトのあるキャッチコピーの文字やデザインコンセプトなどを紹介します。

*本記事はデザイン構成において重要な「フォント」の選定プロセスや加工方法を、プロの実例から紐解いてデザイン制作に役立てる連載です。

目次

【広告ビジュアル『横浜DeNAベイスターズ』のデザインコンセプト】
勢いを感じさせる文字で選手の情熱や意志の強さを表現

プロ野球・横浜DeNAベイスターズの2023年開幕シーズンビジュアルおよびシーズンを通して掲載されるメッセージビジュアル。メッセージビジュアルはベイスターズの監督・選手紹介を兼ねたもので、全部で24種類用意されている。本記事では、そのうち牧秀悟選手のビジュアルをピックアップして紹介する。いずれのビジュアルも、チームの優勝に賭ける情熱と強い想いが、監督および選手たちの写真や飛び散ったインクの飛沫、筆のかすれ、勢いを感じさせるタイポグラフィなどで表現されている。

アートディレクターの榮良太さんによれば「2023年のビジュアルのテーマは『勝利の血潮』。絶対に優勝するぞ! という選手の想いや覚悟、情熱が身体の中から滲み出て吹き出しているイメージで制作しました。メッセージビジュアルでは、選手の動きにリンクするよう至るところに飛沫=血潮をあしらって、その意志の強さを表現しています。開幕シーズンビジュアルでは、堂々と立っている選手たちの背景に『V』の字を大きく配置して『優勝』への強い決意をイメージさせました」とのことだ。

広告ビジュアル『横浜DeNAベイスターズ』の使用フォント01:「オリジナル」
筆で書いたような右肩上がりの文字で勢いを

広告ビジュアル『横浜DeNAベイスターズ』の使用フォントを解説
2023年の「シーズンスローガン“横浜頂戦”」部分
広告ビジュアル『横浜DeNAベイスターズ』の使用フォントを解説
2022年の「シーズンスローガン“横浜反撃”」部分
広告ビジュアル『横浜DeNAベイスターズ』の使用フォントを解説
「メッセージ」部分キャッチコピー「横浜開幕」やメッセージ「俺を頼れ。俺に任せろ。」、シーズンスローガン「横浜頂戦」部分は、ビジュアルのテーマに合わせて作り起こされたオリジナルの文字。筆で書いたような右肩上がりのデザインで、チームの“勢い”や優勝に賭ける強い“想い”が表現されている。上図と上中図は、今年のシーズンスローガン「横浜頂戦」の文字と昨年のシーズンスローガン「横浜反撃」の文字の比較。下図は、メッセージ部分。


榮さんによれば「昨シーズンは『2021年の最下位から這い上がってやる!』という気持ちを込めて右肩上がりの尖った勢いのある文字を制作しました。惜しくも2位で終わりましたが、『今年こそ必ず優勝してみせる!』という気持ちで今回の書体を作っています。昨年の文字の印象を継承しつつも、さらに勢いを感じさせるように、キービジュアルで使用している書道の筆のかすれのニュアンスを取り入れて“昨年の進化バージョン”を目指しました」とのことだ。

広告ビジュアル『横浜DeNAベイスターズ』の使用フォント02:「ゴシックMB101 B」
太めの風格あるゴシック体で堂々とした印象に

広告ビジュアル『横浜DeNAベイスターズ』の使用フォントを解説
「リードコピー」部分
広告ビジュアル『横浜DeNAベイスターズ』の使用フォントを解説
「ゴシックMB101」(モリサワ)リードコピー「頂への戦いをはじめようか。」部分の文字は、骨太で風格あるゴシック体「ゴシックMB101」(モリサワ)に。監督や選手たちの強い想いを表現するため、ウェイトは太めの「B」が選択された。榮さんによれば「『絶対に優勝するぞ!』という強い意志を込めたかったので、太めのゴシック体で堂々とした力強いイメージにしました」とのことだ。

広告ビジュアル『横浜DeNAベイスターズ』の使用フォント03:「Bombardier Regular」
直線的で知的な欧文書体を選択

広告ビジュアル『横浜DeNAベイスターズ』の使用フォントを解説
欧文部分
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欧文部分
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「Bombardier Regular」(Apostrophic Labs)チーム名や選手名の欧文部分は、カクカクした直線的なフォルムが印象的な「Bombardier Regular」(Apostrophic Labs)がベースに。あえて他の要素とは異なるイメージの書体を使うことで全体のデザインにメリハリがつけられている。榮さんによれば「背景の書のエネルギッシュかつ情熱的で有機的な形に対して、冷静で知的なイメージの直線的な書体を選ぶことで、画面の中に緩急をつけました」とのこと。

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