2023年末に、株式会社産業経済新聞社が「14回創作漢字コンテスト」の結果を発表しました。「100年後まで残る漢字を作ってみませんか」というテーマで作品が募集され、2万927点もの作品が集まったコンテストです。
【目次】
第14回では、最高賞である「白川創作漢字最優秀賞」に、94歳の森本喜代治さんが考案した「かんがえすぎ」という漢字が選ばれました。森本さんは、デイサービスの合間時間に創作漢字を楽しんでいるそうです。
最優秀賞の「かんがえすぎ」。
「考」の6画目の終筆が4画目の「左はらい」を突き抜けているデザインまた、入賞作品のうち最年少の7歳の応募者が創作した漢字も必見です。「とびばこ」という文字で、そちらも工夫が凝らされた楽しいデザインに仕上げられています。
最年少の入賞作品の「とびばこ」。
「箱」の「つくり」の部分で、人が跳び箱を跳ぶ様子が表現されている
各種のアプリで操作する場合、ゼロから描画したり図形を組み合わせたりして作字もできます。さらに手軽な方法は、ベースとなる文字のフォントを選び、「文字のアウトライン化」を行ってから調整する方法でしょう。
文字をアウトライン化する前のテキストデータの状態
アウトライン化した後は図形扱いのオブジェクトとなる注意しなければいけないのは、文字をアウトライン化すると、その後は「僕」を「私」に変えるような文字修正が簡単にはできなくなることです。レイヤーの複製や別名での保存などを活用し、必要に応じて「加工前」と「加工後」の状態を分けておくと安心でしょう。
テキストデータの状態
アウトライン化した状態図形化されて「ダイレクト選択ツール」でアンカーポイントを選択できるようになるので、あとは「考」の6画目の終筆が4画目の「左はらい」を突き抜けるようにパスを変形すればOKです。作例では、終筆にアンカーポイントを追加してからパスの変形を行いました。
アンカーポイントを選択できる
パスを移動させて文字の変形に成功
アウトライン化した状態
まずは「目」の部分を変形あとは「たけかんむり」の右側を「人」に変えればOKですが、パスを変形して「人」にするのは少し手間がかかりそうです。そこで「人」の文字や、「今」のように「ひとがしら(ひとやね)」の部首を持つ漢字、「銀」のように「かねへん」の漢字などを活用します。作例では「今」をアウトライン化して「人」の部分のみ取り出し、「たけかんむり」の右側と取り出した「人」のパーツを置き換えました。
別の文字からパーツを流用
2つの文字の組み合わせで作字に成功このように、複数の文字のパーツを組み合わせる手法も、作字においてはとてもメジャーで効率的な処理です。
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2つの受賞作品の例をもとに作字の処理の基本を紹介しましたが、このほかにも「文字の一部を記号に置き換える」「文字の一部を消す」「文字をパーツごとに色分けする」など、作字にはさまざまなアイデアのネタがあります。「創作漢字コンテスト」は、デザインのインスピレーションが広がるきっかけにもなるので、特設Webサイトで公開されている受賞作品の一覧をチェックしてみるのもオススメです。
株式会社産業経済新聞社
URL:https://sousaku-kanji.com/
2024/01/10
その結果をもとに、本記事では作字デザインの基礎について紹介していきます。
【目次】
デザインの作字と発想が似ている「創作漢字コンテスト」
「創作漢字コンテスト」は、各時代の日本の世相や生活などを表現した漢字1文字を創作して応募できる企画です。新たに生み出した漢字の形(デザイン)に加え、その漢字の読み方や意味、解説、例文などが総合的に審査されています。基本的に応募作品は、既存の漢字に変形を加えるなどの加工が行われたものが多いです。第14回では、最高賞である「白川創作漢字最優秀賞」に、94歳の森本喜代治さんが考案した「かんがえすぎ」という漢字が選ばれました。森本さんは、デイサービスの合間時間に創作漢字を楽しんでいるそうです。

「考」の6画目の終筆が4画目の「左はらい」を突き抜けているデザインまた、入賞作品のうち最年少の7歳の応募者が創作した漢字も必見です。「とびばこ」という文字で、そちらも工夫が凝らされた楽しいデザインに仕上げられています。

「箱」の「つくり」の部分で、人が跳び箱を跳ぶ様子が表現されている
文字の変形加工にはアウトライン化が必要
このような文字の加工は、デザインの表現でもインパクトのある大きな効果を発揮します。特にロゴやタイトルなど、大きなサイズで目立つ箇所での処理が有効です。各種のアプリで操作する場合、ゼロから描画したり図形を組み合わせたりして作字もできます。さらに手軽な方法は、ベースとなる文字のフォントを選び、「文字のアウトライン化」を行ってから調整する方法でしょう。
アウトライン化するとフォント情報が破棄されて、文字をテキストデータとしてではなく図形として扱えるようになります。


最高賞の作品「かんがえすぎ」の形を作ってみる
それでは実際に、「14回創作漢字コンテスト」の最高賞に選ばれた「かんがえすぎ」のような文字の形をAdobe Illustratorで作ってみましょう。まずはベースとなる「考」の文字を入力してフォントを決め、書式メニュー→ “アウトラインを作成” を実行します。



複数の文字の組み合わせで「とびばこ」の形を作る
次に、最年少受賞作の「とびばこ」の形をIllustratorで作る方法について考えていきます。まず「かんがえすぎ」の例と同じく、ベースとなる「箱」の文字をアウトライン化し、右側下方の「目」の部分を台形へと変形させて跳び箱のイメージに近付けます。



なお、文字をパーツ別に選択して取り扱うためには、文字のアウトライン化の後にオブジェクトメニュー→ “複合パス” → “解除” およびオブジェクトメニュー→ “グループ解除” を実行しておくとスムーズです。場合によっては、複合パスを解除しないままで、なげなわツールなどを活用して時短するのも良いでしょう。
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2つの受賞作品の例をもとに作字の処理の基本を紹介しましたが、このほかにも「文字の一部を記号に置き換える」「文字の一部を消す」「文字をパーツごとに色分けする」など、作字にはさまざまなアイデアのネタがあります。「創作漢字コンテスト」は、デザインのインスピレーションが広がるきっかけにもなるので、特設Webサイトで公開されている受賞作品の一覧をチェックしてみるのもオススメです。
株式会社産業経済新聞社
URL:https://sousaku-kanji.com/
2024/01/10

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