セルフプロモーションのためや社内ツールとして、自身で描いた絵やデザインを用いたオリジナルアイテムをつくってみたいと思ったことはないでしょうか。そんな場合に、シルクスクリーンキット「SURIMACCA(スリマッカ)」は便利です。
小ロットから制作できるのはもちろん、シルクスクリーンならではの味わいのある印刷ができます。この【基本編】では、版の作成から印刷までの手順を一通りご紹介していきます。

もくじ

専用サイトからオリジナルの「版」をつくる

「SURIMACCA」は、大阪にある孔版印刷に特化した印刷会社、株式会社JAMが販売しているシルクスクリーンキットです。孔版印刷とは、版に孔(あな)をあけ、そこからインクを押し出して印刷する印刷方法です。シルクスクリーンも孔版印刷の一種となります。

シルクスクリーンをはじめとする孔版印刷の一番の魅力は、版のズレやインクのかすれ、ムラによって出るレトロな味わいでしょう。また、印刷所などでは受けてもらえない(あるいは高単価となる)小ロットでの制作にも向いています。


「SURIMACCA」を使ってシルクスクリーン印刷を行うには、キットや材料の購入とあわせて製版が必要となり、株式会社JAMによるECサイトからオーダーできます。

スリマッカでオリジナルの版を作成し、レトロな味のあるシルクスクリーン印刷を試してみた!
株式会社JAMによるECサイトで「SURIMACCA」のキットや材料を購入できるほか、製版のオーダーもできる「SURIMACCA」の製版はXS、S、M、L、プチ大判とさまざまなサイズがあり、印刷したい大きさに合ったものを選びます。そしてECサイトで製版を購入します。手続きを終えると、10時~19時の株式会社JAMの営業時間内にデータ入稿ができるURLが送られてきます。

データ入稿で製版する場合は、IllustratorやPhotoshopなどで制作し、ai、psd、pdf、jpg、png、gifといった形式で入稿することができます。各製版サイズごとのIllustratorとPhotoshop、PDFのテンプレートファイルが用意されているので、これらを使うと便利です。


原稿は黒(K100%)1色で作成し、罫線は1ポイント以上が推奨さています。Photoshopで作成する場合は解像度が300dpiほど必要です。文字を入力する場合には、アウトラインを取るようにしましょう。

制作した原稿をアップロードし、XS~Lサイズはデータに不備がなければ午前中までにデータチェック完了分は当日に、それ以降の時間になったものやプチ大判以上のサイズは翌日に出荷されます。到着日時を指定してある場合は指定に合わせて送られます。手描き原稿で版をつくることもでき、その場合も黒1色で描き、必ずコピーしたものを郵送で入稿します。


スリマッカでオリジナルの版を作成し、レトロな味のあるシルクスクリーン印刷を試してみた!
MサイズのIllustratorテンプレートを使い、黒(K100%)で原稿を作成
スリマッカでオリジナルの版を作成し、レトロな味のあるシルクスクリーン印刷を試してみた!
原稿を入稿すると版が送られてくる(図案が見やすいよう版を黒い紙の上に置いて撮影)

シルクスクリーン用の「版」をフレームに張る

他のシルクスクリーンキットにはない「SURIMACCA」の特徴は、版を張るフレームがブロックのように組み立て式になっている点です。通常は別のサイズの版で印刷したい場合はその版に合った大きさのフレームを都度購入する必要がありますが、「SURIMACCA」はフレームを組み立てることでさまざまな版のサイズに対応することができます。

今回はMサイズ(印刷可能範囲200mm×310mm)の製版をオーダーしたので、赤の長いパーツ2本、黄色の短いパーツ2本、青の角のパーツ4本を使い組み立てていきます。組み立て時の注意点としては、コの字型にしてから平行に組んでいきます。端から1つずつ組んでいくと、最後の角パーツがハメづらく破損の原因となります。

スリマッカでオリジナルの版を作成し、レトロな味のあるシルクスクリーン印刷を試してみた!
(1)Mサイズの製版では長いパーツ(赤)2本、短いパーツ(黄色)2本、角のパーツ(青)4本を使用する
スリマッカでオリジナルの版を作成し、レトロな味のあるシルクスクリーン印刷を試してみた!
(2)まずコの字型にしてから、平行に組んでいく
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(3)コの字型にせず、1個ずつ繋げていくと、最後のパーツがハメづらく破損の原因となる
スリマッカでオリジナルの版を作成し、レトロな味のあるシルクスクリーン印刷を試してみた!
(4)「SURIMACCA」のフレームを組み立て終えたところフレームを裏返し、インクや水が凹みに入るのを防ぐため、真ん中の溝より内側部分にマスキングテープを貼ります。そしてシリコンゴムを各辺の7割ほどの長さに2本ずつカットします。


スリマッカでオリジナルの版を作成し、レトロな味のあるシルクスクリーン印刷を試してみた!
(5)フレームを裏返し、真ん中の溝より内側にマスキングテープを貼る
スリマッカでオリジナルの版を作成し、レトロな味のあるシルクスクリーン印刷を試してみた!
(6)フレーム裏の真ん中にある溝に入れるシリコンゴム。フレーム各辺の7割ほどの長さに、2本ずつカットする版のツルツルした面を上にしてフレームの上に乗せ、版の上からフレーム中央の溝に1本ずつシリコンゴムを指で入れていきます。このとき中央からシリコンゴムを押し込み、向かい合う辺から順に行うと、版が歪みにくくなります。さらにローラーでシリコンゴムを奥に入れます。

スリマッカでオリジナルの版を作成し、レトロな味のあるシルクスクリーン印刷を試してみた!
(7)版をフレームに乗せたら、フレーム中央の溝にシリコンゴムを真ん中から指で入れる。このとき、写真の1~4の順番のように向かい合う辺から入れていくと版が歪みにくい
スリマッカでオリジナルの版を作成し、レトロな味のあるシルクスクリーン印刷を試してみた!
(8)ローラーでシリコンゴムを溝の奥に入れ込む。
一度に押し込まず、最初は優しく、3回くらいローラーをかけて押し込んでいく版のはみ出た部分はローラーの反対側を使い溝に押し込むか、ハサミでカットします。そして、2本目のシリコンゴムも同様の手順でローラーを使い溝に入れていきます。そうすると版がシワや歪みがなくピンと張った状態になります。網戸の張り替えと同じような要領です。刷るものから版を少し浮かせるため、ピンクの浮かしパーツを4つの角にハメめます。

スリマッカでオリジナルの版を作成し、レトロな味のあるシルクスクリーン印刷を試してみた!
(8)ローラの反対側ではみ出た版を溝に押し入れ、2本目のシリコンゴムも各辺に入れていく
スリマッカでオリジナルの版を作成し、レトロな味のあるシルクスクリーン印刷を試してみた!
(9)角にピンクの浮かしパーツを取り付けるフレームとシリコンゴム、ローラー、浮かしパーツに加えて印刷時に使うスキージーはまとめて「SURIMACCAセット」として販売されています。
それぞれバラで購入することも可能です。

 

手づくりの楽しさが味わえる「印刷」と「乾燥」

今回は布バッグに印刷していきます。印刷面を平らにするためと裏側に色が写らないようにするため、バッグの中に厚紙やクリアファイルなどを入れます。そしてバッグの上にフレームに張った版を置き、印刷したい位置に合わせます。

スリマッカでオリジナルの版を作成し、レトロな味のあるシルクスクリーン印刷を試してみた!
(1)布に印刷する際は、厚紙やクリアファイルなどを敷いて印刷面を平にし、裏側に写らないようにする
スリマッカでオリジナルの版を作成し、レトロな味のあるシルクスクリーン印刷を試してみた!
(2)版を張った「SURIMACCA」のフレームを、図版の位置を合わせて布バッグの上に置くインクをよく混ぜ、ヘラなどで版の図版の上の方にたっぷりと置きます。スキージーを45度の角度で持ち、手前に引いていきます。このとき、別の人に押さえてもらうか、別売りの「SURIMACCAホルダー」などでフレームを固定すると、ズレずに印刷できます。版の上やスキージーに付いて残ったインクは、乾燥する前であればまた使うことができるので、すみやかに容器に戻しましょう。

スリマッカでオリジナルの版を作成し、レトロな味のあるシルクスクリーン印刷を試してみた!
(3)インクをよく混ぜる。今回は「くすみブルー」を使用
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(4)版の図案の上の辺りにインクをたっぷり置く
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(5)スキージーを手前に引き、版の上からインクを満遍なく押し出していく
スリマッカでオリジナルの版を作成し、レトロな味のあるシルクスクリーン印刷を試してみた!
(6)布バッグにフクロウが印刷されたインクが乾くと布に定着し洗濯も可能になりますが、乾燥には少し時間がかかります。置き場所と時間の余裕があれば自然乾燥でもよいですが、ドライヤーで表面を乾かし、クッキングシートを乗せた上からアイロンをかけると短時間でしっかりと乾燥させることができます。

スリマッカでオリジナルの版を作成し、レトロな味のあるシルクスクリーン印刷を試してみた!
(7)ドライヤーで、触っても手にインクがつかなくなる程度まで表面を乾燥させる
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(8)クッキングシートの上からアイロンをかけることで、インクを中まで乾燥させられる。温度は布の材質に合わせ、スチームは使わない印刷が終わったら、インクが乾かないうちに版やインクを塗ったヘラ、スキージーを水洗いします。インクが落ちたら版はやわらかい布や紙などで水気を拭き取り、ドライヤーで乾かします。そして、フレームを組んだ手順を遡るように、シリコンゴムや浮かしパーツを外し、版を外します。シリコンゴムは再利用できるのでとっておきましょう。版は一度きりの使用が推奨されていますが、自己責任のもとまたフレームに張って再利用することもできます。その場合は、図案部分に傷がつかないよう丸めて筒に入れたり、クリアファイルに挟んだりして保管しておくとよいでしょう。

スリマッカでオリジナルの版を作成し、レトロな味のあるシルクスクリーン印刷を試してみた!
(9)使い終わった版はインクが固まる前に柔らかいスポンジなどを使って水洗いし、ドライヤーで乾かす
スリマッカでオリジナルの版を作成し、レトロな味のあるシルクスクリーン印刷を試してみた!
(10)ローラーの後ろを使って溝からシリコンゴムを取り出し、版を外していきます

まとめ

一般的にシルクスクリーンは版の作成や印刷などに専門的な機材や材料が必要となりますが、「SURIMACCA」ではECサイトで手軽にオーダーすることができます。フレームも組み立て式なので、サイズに合わせて組み立てられ、収納場所をとりません。今回の作例は試し刷りなしの一発勝負でしたが、初心者でも簡単に刷ることができました。

シルクスクリーンは小ロットでも、それなりに多い枚数でも印刷が可能です。そのため、印刷会社などに発注するほどでもない枚数のものを印刷するのに適しています。また、版のズレやインクのムラ、カスレが手刷りならではの味となります。自身で描いた絵や作成したデザインに、機械で印刷するのとは一味違った、新鮮な表情を加えることができるでしょう。また、版を洗えば別の色で印刷することもでき、一つひとつ違った刷り上がりにすることも可能です。

SURIMACCAの版は複数回使えますが、何百枚も手刷りをするのは大変です。印刷枚数が無理のない範囲に収まる場合に向いているでしょう。また、たくさん刷ると版も痛んでくるので、半永久的に使えるものではありません。

今回は【基本編】として版の作成から印刷までの手順をご紹介しましたが、続く【応用編】では、多色刷りの方法などをご紹介していきます。

※応用編「インクの使い方を工夫しながら、スリマッカでさまざまなシルクスクリーンの印刷表現を楽しもう!」はこちら

DATA製品名:SURIMACCA(スリマッカ)
実売価格:製版990円~、インク770円~、SURIMACCAセット4,840円(すべて税込)
公式サイト:https://surimacca.com/
発売元、公式ECサイト:https://jam-p.com/
Amazon:https://www.amazon.co.jp/dp/B097BLDGB8/

スリマッカでオリジナルの版を作成し、レトロな味のあるシルクスクリーン印刷を試してみた!