手書き時代のスコアボード(左)と手書き時代の選手名板(右)
提供:阪神電気鉄道株式会社株式会社モリサワが、阪神甲子園球場のスコアボードで使われてきた伝統の「甲子園文字」を受け継ぎ、「甲子園フォント」としてデジタルフォント化することを発表しました。2024年12月頃に完成する予定で、2025年シーズンから実際に球場で使用されます。


【目次】

阪神甲子園球場も邦文写植機も100周年

今回の「甲子園文字」のデジタル化は、阪神甲子園球場とモリサワの100周年記念共同プロジェクトとして実施されることが決まりました。

阪神甲子園球場のスコアボードの独特な手描き文字を受け継ぐ「甲子園フォント」をモリサワが制作
モリサワは、2024年7月24日(水)に創業者の森澤信夫氏らが「邦文写真植字機」を発明してから100周年の節目を迎えることを記念し、多彩な企画を展開しています。一方、阪神電気鉄道株式会社が運営する阪神甲子園球場も、2024年8月1日(木)で開場100周年です。

今回のプロジェクトを記念し、2024年4月17日(水)には、阪神甲子園球場で開催される阪神タイガース公式戦で、モリサワによる初の冠協賛試合の実施も予定されています。

1983年までのスコアボードで使われた手書き文字

阪神甲子園球場の初代のスコアボードは木製で、甲子園球場が開場した翌年の1925年に誕生しました。1934年に2代目のスコアボードになり、木製からコンクリート製に変化しています。この2代目スコアボードは、戦火を乗り越えて約半世紀にわたって使用されました。

阪神甲子園球場のスコアボードの独特な手描き文字を受け継ぐ「甲子園フォント」をモリサワが制作
初代スコアボード
提供:朝日新聞社
阪神甲子園球場のスコアボードの独特な手描き文字を受け継ぐ「甲子園フォント」をモリサワが制作
2代目スコアボード
提供:阪神電気鉄道株式会社1983年までのスコアボードでは、職人の手書きによる毛筆文字が使われていました。
その独特な字形が多くのファンに親しまれてきた「甲子園文字」です。1984年に選手名や得点スコアの表記は電光化されますが、それまではスコアボードの中で “文字書き” の職人が活躍していました。「甲子園文字」による特有の味わいの演出の秘訣は、“人間味のある文字” だったのです。

阪神甲子園球場のスコアボードの独特な手描き文字を受け継ぐ「甲子園フォント」をモリサワが制作

電光掲示になっても大切に受け継がれてきた伝統

1984年にスコアボードは電光掲示に改修されましたが、「甲子園文字」の伝統を受け継ぎ、球場の職員がオリジナルの文字データを制作しました。選手名やチーム名の表記に、手書きの時代を踏襲した字体が使用されています。手書きの黒板から電光掲示方式に変わっても、黒地のボードに白色ブラウン管を採用することで、先代のスコアボードの姿が再現されました。


阪神甲子園球場のスコアボードの独特な手描き文字を受け継ぐ「甲子園フォント」をモリサワが制作
電光化されたスコアボード
提供:朝日新聞社今回の共同プロジェクトは、そのように阪神甲子園球場が大切に受け継いできた「甲子園文字」を、現代の実用に即した「甲子園フォント」として制作するものです。

“文字のプロフェッショナル” であるモリサワが、どのようにその “伝統” を次世代に適したかたちに “つなぐ” のか注目です。なお、新しい「甲子園フォント」は、より多くの人にとっての読みやすさに配慮したUD(ユニバーサルデザイン)フォントがベースとなることも発表されています。

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「甲子園文字」については、今回の発表を通じてその歴史から学べることも多く、とても興味深いニュースでした。2024年12月頃のデジタルフォントの完成と、2025年3月に実際に阪神甲子園球場のスコアボードで使用される様子が今から楽しみです。

株式会社モリサワ/阪神電気鉄道株式会社
URL:http://www.morisawa.co.jp/
URL:https://hanshintigers.jp/

2024/03/21

阪神甲子園球場のスコアボードの独特な手描き文字を受け継ぐ「甲子園フォント」をモリサワが制作