2024年11月8日に、AppleからM4チップファミリーを搭載した新MacBook Proが発売されました。外観こそ従来からあまり変わらないものの、チップの性能を中心に大幅な機能強化が図られています。
今回、その16インチモデル(M4 Pro/48GBメモリ)を試すことができたので、実際に動画編集などのクリエイティブ作業に使ってみて買い替えの価値があるかどうかチェックしてみました。
目次
M4チップファミリーを搭載した「16インチ MacBook Pro」
2023年11月にM3搭載MacBook Proが発売されてから、ちょうど1年の時を経てM4チップファミリーを搭載した新モデルが登場しました。

16インチ MacBook Proのスペック
チップM4 Pro M4 ProM4 MaxM4 Max14コアCPU14コアCPU14コアCPU16コアCPU20コアGPU20コアGPU32コアGPU40コアGPUメモリ24GB48GB36GB48GBストレージ512GB512GB1TB1TB価格(税込)398,800円458,800円554,800円634,800円M3チップファミリーを搭載した前モデルと比較すると価格はほとんど変わっていませんが、M4 Pro搭載モデルに関してはメモリが増量されておりコストパフォーマンスはアップしています。とはいえ、もっとも安いモデルでも40万円近くと高額で、気軽に手を出せるような価格ではありません。M3搭載モデルを購入した人だけでなく、M1/M2搭載モデルのユーザーの中にも関心は持ちつつ買い替えを迷っているという人は多いのではないでしょうか。
そこで、ここでは旧モデルから変更された点や、実際に動画編集などで使用してみて進化を感じた部分などを紹介していきます。
オプションでNano-textureディスプレイを選択可能に
M4搭載MacBook Proシリーズは、チップの性能以外にもさまざまな変更が加えられています。本体カラーのバリエーションについては、14インチモデルに残っていたスペースグレイがなくなり、シルバーとスペースブラックの2色展開になりました。今回はスペースブラックを試すことができましたが、真っ黒というよりは従来のスペースグレイに黒みをプラスしたような色合いで、光の当たり具合によっては漆黒にもダークシルバーにも見える複雑な表情が魅力的です。渋くて上品な落ち着きがあって、シンプルにかっこいい。
液晶パネル周囲のベゼルやキーボード、タッチパッドなども黒で統一されているので、ディスプレイを開いて作業する際も気が散りにくく画面に集中しやすいと感じました。


ディスプレイは、従来通りLiquid Retina XDRディスプレイで1,600ニトのピーク輝度を実現しています(HDRコンテンツ再生時)。新モデルではそれに加えて、SDR輝度がこれまでの最大600ニトから1,000ニトにアップし、日中の屋外でも画面がより見やすくなりました。
さらに今回から、パネル表面に光を散乱させるコーティングを施して反射を抑えたNano-textureディスプレイをオプションで選ぶことも可能になっています。試用機にもNano-textureディスプレイが搭載されていましたが、一般的なアンチグレアパネルに比べてにじみが明らかに少なく、発色や黒の締まりがよい印象です。そして反射や映り込みはまったく気にならない……。


Thunderbolt 5や12MPセンターフレームカメラを搭載
本体に搭載されているポートの数はこれまでと同じですが、M4 Pro/M4 Max搭載モデルに関しては従来のThunderbolt 4ポートがすべてThunderbolt 5ポートに差し替えられています(M4搭載モデルは従来通りThunderbolt 4のまま)。

Thunderbolt 4とThunderbolt 5の違い
規格Thunderbolt 4Thunderbolt 5帯域幅40Gbps80Gbps(ブースト時:最大120Gbps、下り40Gpbs)PCIePCIe Gen.3 x4PCIe Gen.4 x4給電最大100W最大240WThunderbolt 4ではPCIeサポートがボトルネックになって外付けSSDなどの転送速度は約4,000MB/秒止まりでしたが、Thunderbolt 5では理論上約8,000MB/秒まで対応できます。そのため外付けストレージでも内蔵SSDと同等以上のスピードでデータ伝送することが可能に。ファイルサイズの大きな動画などを扱うユーザーには魅力的なポイントと言えるでしょう。
サポートするディスプレイについては、チップによって次のように異なっています。
M4 MacBook Proがサポートするディスプレイ
チップM4M4 ProM4 MaxThunderbolt経由6K/60Hz×2台6K/60Hz×2台6K/60Hz×3台HDMI経由8K/60Hzまたは4K/240Hz8K/60Hzまたは4K/240Hz8K/60Hzまたは4K/240HzUSB-C経由DisplayPort 1.4準拠DisplayPort 2.1準拠DisplayPort 2.1準拠Thunderbolt 5に変更されたことで大きな影響がありそうなのが、4K解像度以上のUSB-Cディスプレイを使用するユーザーです。Thunderbolt 4はUSB-C(DisplayPort Alt Mode)経由だと映像出力の規格がDisplayPort 1.4となり、ディスプレイ ストリーム圧縮 (DSC) なしではリフレッシュレートは4Kで120Hzまで、8Kで30Hzまでとなります。しかしThunderbolt 5だとDisplayPort 2.1準拠となり、DSCなしでも4K/240Hzや8K/60Hzに対応可能です。同規格に対応したゲーミングモニターなどの高リフレッシュレートディスプレイを持っている人は、M4 Pro/M4 Max搭載モデルであればUSB-C経由でもその性能を最大限に活かすことができそうです。


M4 Proの実力は? 実際に動画編集をしてみた
前述の通り、16インチ MacBook Proはチップの性能の違いなどで4モデルラインアップされています。今回はそのうち、M4 Pro(14コアCPU/20コアGPU)と48GBメモリを搭載したモデルを試すことができました。M3以前の世代では、チップ名にMaxがつくモデルのみファンの回転を上げてパフォーマンスを上げる「高出力モード」や、パフォーマンスを抑える代わりにファンの音や電力も低減する「低電力モード」が利用できましたが、M4世代ではM4 MaxだけでなくM4 Proでも利用可能になっています。そこでここでは、エネルギーモードを「低電力」「自動」「高出力」に設定し、それぞれベンチマークやクリエイティブアプリを動かしてパフォーマンスの変化を調べることにしました。参考までに、一部のベンチマークについてはM2 Pro(12コアCPU/19コアGPU)を搭載した14インチ MacBook Proの結果も併記しておきます。

CINEBENCH R23の結果
モード低電力自動高出力参考(M2 Pro)マルチコア12289234172342914785シングルコア1517227022941613次に、CINEBENCH 2024の結果は次のようになりました。
CINEBENCH 2024の結果
モード低電力自動高出力GPU638891609279CPU マルチコア78317431741CPU シングルコア121178175さらに、Geekbench 6を試したところ、次のようになりました。
Geekbench 6の結果
モード低電力自動高出力参考(M2 Pro)マルチコア13965226822288514061シングルコア2595389439642625OpenCL553996960769957-Metal93364113740113760-ベンチマークテストの結果を見ると「自動」と「高出力」では大きな差はなく、誤差程度と考えてもよさそうです。ファンの音が聞こえ始めるタイミングや音の大きさなども、あまり変わりはありませんでした。
ちなみに、ファンが最大限で回転してもサーッという控えめな音しかせず、夜中に静かな場所で使っていても気になることはありませんでした。「低電力」だと、そのサーッという音もしないくらい静かです。それでいてM2 Proとあまり変わらないパフォーマンスが出ているわけで、M4 Proの性能と省電力性の高さに驚きます。
続いてAdobe Premiere Proを使って動画編集を試してみましたが、その動作の軽さに驚きました。
もともとM2 Pro搭載MacBook Proでも快適に編集できていたのですが、M4 Proだとさらにサクサク軽快に作業できる印象です。

動画の書き出し時間
出力形式エンコード方法書き出し時間低電力自動高出力参考(M2 Pro)4K/60fps/h.265ハードウェア5分16秒755分15秒885分15秒345分58秒574k/60fps/h.265ソフトウェア17分30秒008分35秒518分35秒6813分19秒74FHD/60fps/h.264ハードウェア2分53秒871分34秒881分32秒662分8秒66※4K/60fps、5分10秒のH.264動画素材をAdobe Premiere Proで書き出した速度を計測
M2 Pro搭載MacBook Proでも書き出し速度は十分速い印象でしたが、それがさらに高速になっています。フルHDくらいの動画なら「低電力」でもストレスなく編集できそう。「自動」と「高出力」の差はわずかなので、ふだんは「自動」に設定しておいて、バッテリー駆動時間や静かさを優先したい場合などに「低電力」を使うのがよいかもしれません。
動画を書き出している最中のCPU履歴を確認してみると、「低電力」のときはCPUコアのうち4つある高効率コアを極力活用して、残り10個のパフォーマンスコアの使用を抑えていることがわかります。これを見てもCPUコアの使い方のうまさ、電力効率のよさがうかがえます。


作業環境や用途によっては買い替えの価値は十分あり
単にチップ性能が向上しただけでなく、Thunderbolt 5やデスクビューに対応した12MPセンターフレームカメラ、エネルギーモードの搭載などで、活用できるシーンや使い方が広がった新MacBook Pro。高額なのは確かですが、動画編集など負荷の高い作業でチップのパワーが必要な人、高解像度&高リフレッシュレートディスプレイや高速な外付けストレージなどをフルに活用したい人、出先に持ち運んで使いたい人などには魅力的なモデルチェンジと言えそうです。
今回は日本語環境に対応していないため試していませんが、2025年4月にはAppleのAI技術「Apple Intelligence」も日本語で利用可能になる予定。その際、M4チップファミリーを搭載した新モデルは本来の実力が最大限に引き出されることになるはずです。



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