マーケティングリサーチ会社の株式会社アスマークが「イマーシブ(没入感)に関するアンケート調査」を実施し、その結果を公開しました。近年になって美術展などでも用いられることが急激に増えた「没入感」について、深く掘り下げられています。


【目次】

「モノ」より「コト」が重視される現代

「イマーシブ」とは没入感を意味し、映像やゲームなどの世界に入り込んでその世界に浸れる様子を示しています。近年では「モノ」の消費ではなく「コト」の消費として各ユーザーの体験を重視する傾向があり、展覧会などでも「体験型」というキーワードが多く見られるようになりました。「イマーシブ」もそのような「体験」を提供することに重きを置いた仕組みの1つです。

今回のアスマークの調査では、まず「イマーシブ」という言葉が実際にどのようなトレンドであるかが探られています。Google Trendsで「イマーシブ」という検索ワードを過去3年(2022年3月~2025年2月末)で調べ、2024年に特に露出が増えたキーワードであることが示されました。

受け手が没入感を感じる要素は何? アスマークが「イマーシブに関するアンケート調査」を実施
引用元サイト:Google Trends

イベント参加の傾向と不参加の理由

さらに「イマーシブ」の実態を探るWebアンケート調査が、2025年2月27日(木)~3月3日(月)に実施されています。全国の20~50代の男女を対象にした調査です。「外部の情報(体験など)によって、その世界に引き込まれ、周囲のことを忘れて夢中になる感覚」を「没入感」と定義し、その「没入感」のイメージに理解がある人に、いくつかの項目が問われています。調査人数は800サンプルです。

「2024年に参加したイベントはあるか?」という問いでは、2024年のイベントへの参加率が約80%でした。その中でも、特に「映画・演劇・ミュージカル」の数値が高いことが分かります。なお、今回の調査の特筆すべきは回答者の性別・年代・性格特性ごとの結果が細かく公開されているところです。全体的には、年齢が若く外交的な性格特性であるほど、イベントへの参加率が高まる傾向が見られます。

受け手が没入感を感じる要素は何? アスマークが「イマーシブに関するアンケート調査」を実施
アスマーク調べ「2024年にイベントへ参加しなかった」と答えた人たちに、その理由についても聞いています。
第1位は「費用がかかるから」で、複数回答可という条件下では約半数の高い数値です。さらに、性格特性ごとの違いでは、外向的な人が「忙しくて時間がないから」、内向的な人が「人込みが苦手だから」という答えの割合が高いことが分かりました。

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アスマーク調べ

空間デザインも「没入感」の重要な要素

次に本アンケートでは、イベントで「没入感」を感じる頻度や、どのような要素に「没入感」を感じるかが探られています。さまざまなイベントの中で、最も「没入感」を感じる頻度が高かったのは「ライブ・コンサート・音楽フェス」で、最も低かったのは「グルメ系(フードフェスなど)」です。

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アスマーク調べ「美術館、展覧会、博物館」は、意外に低い結果でした。これは美術館や展覧会が「イマーシブ」を全面に押し出したものばかりというわけではなく、従来型の展示を鑑賞するスタイルが含まれるからかもしれません。だからこそ反対に、「美術×イマーシブ」という組み合わせは斬新な印象を受けて注目を集めやすいのではないかとも想像できます。

「没入感」を感じる要素には、「音楽や効果音の演出」「ストーリー性(テーマや世界観)」、「イベント会場の空間デザイン(装飾や照明、音響など)」が多く選ばれました。この質問と回答はクリエイターにとっては非常に重要なもので、近年になって増えつつある「没入感」の演出を求められる仕事の際に、大いに参考になるでしょう。

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アスマーク調べ

「体験」は口コミで広がりやすい

イベントで「没入感」をより高めるために主催者が工夫できそうなことについても、さまざまなヒントが見られます。アンケート調査では「会場全体での一貫した演出(音響、映像、空間デザイン)」という答えが最も多く約53%でした。会場づくりやデザインが「没入感」を生み出すうえで重要な役割を担っていることが分かります。続いて数値が高い答えは約50%の「ストーリー性のあるイベントの構成」、約36%の「体験後にも楽しめる仕組みの提供(例:アフターフォローや関連グッズ)」でした。


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アスマーク調べこの質問と回答では、各項目に対する年代別の違いもいくつか顕著なところが見られます。一例として、「体験の記録(写真・映像)を提供し、思い出として残せるサービスの提供」は20代が最も低く約20%にとどまりました。

さらに今回のアンケート調査では、「没入感を感じたイベント参加中または参加後にとった行動」についても探られています。そこでは「体験の感想を友人や家族に話した」「体験後もイベントの内容について調べたり、深掘りしたりした」という回答が3割を超える数値を示しました。これは、「没入感」を感じたイベントがSNSなども含めた口コミで広がりやすいことの表れです。

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アスマーク調べ* * * * * * * * * *

「没入感」は現代のデザインにおいても重要なキーワードの1つとなっていますが、その実態はなかなか把握しづらいものでした。効果的に「没入感」を提供できれば、そのイベントは口コミなどで広がりやすい可能性を秘めています。今回のアスマークのアンケート調査は、デザイナーなど「没入感を生み出す側」にとっても大きなヒントとなる非常に有意義なものと言えるでしょう。

●イマーシブ(没入感)に関するアンケート調査
https://www.asmarq.co.jp/data/immersive/

株式会社アスマーク
URL:https://www.asmarq.co.jp/

2025/04/10

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