◆待望の人気シリーズ「大脱出」第3弾
芸人たちが追い込まれる過酷な環境と、地上波では放送できない過激な内容で瞬く間に話題となった「大脱出」。2023年の配信開始以降、今回のシーズン3でも再び注目を集めている。番組では、難解な謎解きや試練をクリアしなければ脱出できない“特殊な場所”に閉じ込められた芸人たちの奮闘ぶりを収めており、出演者には、クロちゃん(安田大サーカス)をはじめ、みちお(トム・ブラウン)や岡野陽一らが登場する。
そのほか、井口浩之(ウエストランド)&お見送り芸人しんいちは全く知らない曲のカラオケ採点で80点以上を目指す試練に挑戦。みなみかわ&高野正成(きしたかの)は、10分に1度明転する暗闇の中で複雑な計算などに挑むなど、芸人たちがそれぞれの部屋からの脱出を試みる。同番組を手掛けるのはテレビディレクターとして活躍する藤井氏。「水曜日のダウンタウン」(TBS系/毎週水曜後10時~)をはじめ、特別番組「クイズ☆正解は一年後」(同局系)など、数々の人気作を生み出すヒットメーカーとして知られている。
◆藤井健太郎氏「大脱出」問題考案までの道のり
― 前回の「大脱出2」から約1年以上の月日を経てシーズン3が始まりましたが、制作するに至ったきっかけについて教えてください。
藤井:それは、シンプルにオファーをいただいたからですね(笑)。シリーズを1・2と続けていたので、やるからには何か新しい要素をうまく入れつつ、これまでを観てくれた方にも楽しんでいただけるようなものにしなければいけないと思って取り組みました。
― それぞれの部屋に異なる試練を与えられていましたが、芸人さんの特性に合わせて考えられたのでしょうか?
藤井:そうですね。
― そうなんですね。今作でもクロちゃんさんの発言や行動はすごく印象的でしたが、クロちゃんさんの面白さを引き出すポイントは何だと感じますか?
藤井:もう長く一緒に仕事をしているので、どういうシチュエーションで面白くなるか、逆に面白くならないかはなんとなく過去の積み重ねで分かっています。今回、クロちゃんはだいぶ出番が少ないですが、やっぱりシーズン1を作るときにクロちゃんを埋めるところから始まった番組なので(笑)。
― なかなか見たことのないような試練ばかりでしたが、長く考えて編み出したものなのか、ひらめくような形なのか、どのようなプロセスで思いついていますか?
藤井:「1人で急にひらめく」ってことはほとんどなくて、基本的には会議で話しながら決めていく感じですね。別に特別な思いつき方をしているわけではないと思います。
◆角度のつく部屋に暗転部屋…豪華セットに注目
― 今作では、10分に1度明転する暗闇の部屋や時間になると傾斜がつく部屋など奇想天外なセットばかりで非常に手が込んでいると感じましたが、どのくらいの期間、準備をされていたんでしょうか?
藤井:セットの設計が始まってからはそこまで時間がかかったわけではないんですが、会議は結構長い期間やっていました。斜めになる部屋の角度だったり、射的セットの角度や電極の配置にはそこそこシミュレーションにも時間をかけていて。シーズン2を去年の5月くらいに配信して、そこからシーズン3の撮影までは1年ぐらい経っているので…トータルで1年くらいは準備していましたかね。
◆藤井健太郎氏、予想外だった出演者の行動
― 歌ネタを得意とするしんいちさんが歌の試練で活躍できなかった場面など視聴者としては予想外の場面も多かったですが、藤井さんから見ても「これは意外だった」「驚いた」と感じた出演者の行動はありましたか?
藤井:僕らもしんいちのあれは予想外でした(笑)。
― たしかに、さらば青春の光さんはお2人とも射的がすごくお上手でしたね。射的のうまさもリサーチされているのかと思いました…!
藤井:いや、さすがに知らなかったですね。それでいうと、その2人の部屋が「ほかと比べて楽しい」というところも予想以上だったかもしれないですね。「脱出に対するアプローチが色々ある」ってことが思っている以上にメンタルに影響するんだなと思いました。
カラオケの部屋はひたすら歌うことしかできないからしんどいですよね。これといって考えることもないですから。さらばの部屋はクイズに電話に射的にとアプローチの手段が多いし、考えることも沢山ありますからね。
◆藤井健太郎氏、収録後の雰囲気
― 終了後、みなさんとお話はされましたか?
藤井:話していないですね。当日、撮影が終わった直後に一言二言はしゃべっていますが、ちゃんと感想を聞いたわけではないです。でも、この間、座談会のようなものを撮影したみたいで、僕は現場には行けていないですが、そこでそれぞれの感想や不満を話していたとは聞きました。
◆藤井健太郎氏「めちゃくちゃ面白かった」企画
― 先程も「予想外だった場面」についてお聞きしましたが「大脱出」に限らず、これまでで「思ってもいないところに着地したな」と驚いた企画はありますか?
藤井:それは沢山ありますよ。最近だと「水曜日のダウンタウン」の三途の川(7月30日に放送された『クロちゃん、寝て起きたら川のほとりにいてその向こう岸に亡くなった父親がいたら死の淵にいるかと思う説』)でクロちゃんが吐いたのはめちゃくちゃ笑いました(笑)。やっぱり予想外のことが起きるのは好きですね。もちろん、ベタな面白さも大事なんですが、長いことやっているとオーソドックスではなかなか笑えなくなってくるところもあって。笑いはやっぱり裏切りだな、と思っちゃいますね。
◆藤井健太郎氏「実行するのは相当難しい」
― それでは、これまでで特に「よく思いついたな」と印象に残っている企画はありますか?
藤井:ぱっとは出てこないですね。やっぱり放送や配信が終わったものはどんどん忘れていくし、終わったあとに「あれすごかったな」とはあまり思わないですかね。どちらかといえば、まだ実現していない先の企画に対してのほうが「これってすごいんじゃないか」と思うことがあります。実現の可能性は低いんですが「これはひらめいたな」というものが今も一応あって。当然、誰もやっていないことを実現するのは難しいので、形になるかどうかは分からないんですけど。
― 過去を振り返って「すごかったな」とご自身で思わないというのは、自己評価が厳しいからこそなんでしょうか?
藤井:たぶん、そういうことともちょっと違って、1個1個具体的に考えれば「たしかにすごかったかも」と思うこともあると思うんですが、それを思い返すタイミングがないってことなんじゃないですかね。終わったものに対して深く考える瞬間は、少なくとも今はあまりないですね。
― それでは、これまで苦労したことや思い通りにいかなかったこと、ご自身で「これは挫折かも」と感じた出来事はありましたか?
藤井:細かくはあっても、明確に「挫折した」という感覚はあまりないかもしれないです。日々の作業や企画を考えて形にすること、編集して仕上げる作業も含めて苦労はしているし、労力もいっぱいかけているとは思うんですが、挫折っていう感じとはちょっと違うかな。
◆藤井健太郎氏「つまらないと思われたくない」
― 労力を沢山かけているとのお話もありましたが、それほどまでに頑張ることができるモチベーションの根源はありますか?
藤井:ないですね(笑)。まぁ強いて言えば「目に物見せてやろう」とかっていうプラス方向の想いというよりは「つまらないと思われたくない」とかの、マイナスをなくしたいって方で。「面白くなかったら恥ずかしい」「かっこ悪いものを出したくない」という気持ちが原動力になっているのかもしれないです。
― 日本のバラエティを牽引する藤井さんにもし「今後のバラエティはこうしていきたい」など熱く宿る想いがありましたらお伺いしたいです!
藤井:熱い想いなんてないです(笑)。でも、番組を見て楽しんでもらえることは当然ありがたいし「できるだけ多くの人を楽しませたい」とは当然思ってますよ。
◆藤井健太郎氏の夢を叶える秘訣
― 最後に藤井さんが思う夢を叶える秘訣について教えていただきたいです。
藤井:なんでしょう…叶えている前提になりますもんね(笑)。その前提が違う気がしますが…何も考えたことないです。僕自身は、何かを目指して頑張ってきたわけでも、大きな目標があるわけでもなく、目の前のことを1個1個こなしてきただけなんで。でも、ひとっ飛びにゴールにたどり着けるってことはあまりないんじゃないかなとは思ってます。
そういう例を見たことがないですよね。仮になにかの偶然でそういう目標とするようなポジションにいけたとしても、結局、そこまでの積み重ねができていないとすぐにダメになってしまうことが多いので。実力なき一発屋と一緒で。やっぱり「1歩1歩着実に」が大切なのかなと思います。
― 貴重なお話をありがとうございました。
(modelpress編集部)
◆藤井健太郎(ふじい・けんたろう)氏プロフィール
1980年生まれ。東京都出身。2003年にTBSに入社すると、「水曜日のダウンタウン」や「 クイズ☆正解は一年後 」などヒット作を連発。そのほか、TBS系「オールスター後夜祭」や「KILLAH KUTS」(Prime Video/2024年)なども手掛けている。
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