目次
  • 成年後見制度が活用されず問題が起こったケース
  • 日常的な問題を解決するには異業種連携が重要になる
  • 高齢者の暮らしを支えるための異業種連携

高齢者支援のあり方として、介護業界では異業種との連携体制を構築するために、さまざまな取り組みが行われています。

今回は、私が経験した事例などを基に、理想的な連携について考えます。

成年後見制度が活用されず問題が起こったケース

近年は、核家族化が進んで、家族が遠方にいたり、結婚歴がなかったりする単身高齢者が増加しています。そういった高齢者は「終活」が非常に重要になりますが、終活を高齢者や周囲の家族だけで行うと、うまくいかないことがあります。

実際にケアマネージャーとして対応していると、家族が遠方に住んでいて、その周囲にどんな介護の事業所があって、どんな業者がいるのかわからないといった相談をよく受けます。

そのような方は、弁護士や司法書士などが財産管理や施設入所の契約などを代行して行う成年後見制度が利用できますが、必ずしも活用されているわけではありません。

以前私が経験したケースを紹介いたします。

【事例】

Aさんは、遠方に住んでいる兄とは仲が悪く疎遠になっていて、何か困ったことがあれば、近所に住む知人にお願いしていました。

ただ、知人の方だと財産管理や施設入所の契約などはできないため、成年後見制度を利用するように本人に勧めましたが、断られ、最終的には病院で亡くなりました。

その後、兄が行政的な手続きを行いましたが、本人が所有していた車の処分や、ヘルパー利用料の支払いといった手続きを行わずに帰ってしまったのです。

ヘルパーの利用料については、後日兄から支払ってもらいましたが、車を処分する際に出た査定金は、すでに本人の口座が凍結していたために、入金できませんでした。

このように、介護保険制度や成年後見制度があっても、適切に活用されず、ほとんど役に立たないケースもあります。そんなときに、異業種連携が効果を発揮することがあります。

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日常的な問題を解決するには異業種連携が重要になる

異業種連携の中心的役割を担うのは、ケアマネージャーです。

ケアマネージャーは、定期的に研修などを受けていて、その過程で「介護保険のサービスとそのほかのサービスを結びつけることの大切さ」を学んでいます。

介護保険以外のサービスとは、医療保険制度や障害者総合支援法における支援制度など、多岐にわたります。

こうした多様なサービスを各地域で一体的に提供する体制を「地域包括ケアシステム」と呼び、厚生労働省も構築を推進しています。

地域包括ケアシステムの目的は、高齢者が住み慣れた地域の中で、自分らしく人生の最後まで暮らせるように、住まい・医療・介護・生活支援を一体的に提供することとしています。

しかし、高齢者の暮らしの支援をするためには、医療や介護などの公的なサービスだけでは不十分です。

日頃の食事の確保や理美容などに始まり、台風被害で瓦が飛んだり、雪の日に水道管が凍って破裂したりと、さまざまな問題が生じます。

さらに、施設に入所する際にも、自宅の売却や相続、片づけなどの問題が生じます。このような問題は、介護保険制度だけでは解決することができません。

その際に「異業種連携」が必要になります。

私はケアマネージャーとしてさまざまな異業種交流会に出席し、関係を深めています。その中で、高齢者の暮らしを支援して問題を解決するため、「SLS北九州(シニアライフステーション北九州)」という異業種連携の会をつくりました。

例えば、水回りの工事や仏壇の処分、成年後見制度の活用など、高齢者の暮らしにまつわる問題に対して、それぞれの専門分野を生かし、会員業者間で依頼し合うといった取り組みです。

振り込め詐欺や悪徳業者の備えにも。ケアマネの異業種連携が高齢者を救う
日々の暮らしに対する支援を行う民間サービス

高齢者の暮らしを支えるための異業種連携

異業種連携は悪徳業者から高齢者を守るためにも役立ちます。

いわゆる「振り込め詐欺」や、リフォームやトイレなどの水回り工事の悪徳業者の被害なども後を絶ちません。

今はインターネットで検索すれば、いろいろな業者の情報を得ることができますが、悪徳業者を見分けるのは困難です。

そんなとき、日頃から地域の業者と連携を図っているケアマネージャーがいると、高齢者に紹介することができます。

これは、地域包括ケアシステムの趣旨に合致します。医療・介護・地域ボランティアの方だけではなく、異業種を巻き込んだ、一体的な高齢者の支援体制といえるでしょう。

先述したAさんの事例でも、問題が悪化する前に介入することができれば、より一体的な支援を行うことができたかもしれません。

ケアマネージャーの仕事は、介護保険サービスを活用できるようなアドバイスや、ケアプランを作成するだけではありません。

高齢者の在宅生活を支え、利便性を高めるため、介護保険のサービスとそのほかのサービスを結びつけることも仕事です。

そのため、高齢者が住み慣れた地域で安心して生活ができるよう、積極的に異業種との連携を図っていく必要があるのです。

もし、遠方に離れた高齢の家族が気になる方は、その家族が住んでいる地域のケアマネージャーに相談してみると良いでしょう。

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