私が勤める千葉県富津市の地域包括支援センターでは、警察との連携に力を入れています。

警察は犯罪が起きてから行動する機関だと思われがちですが、地域包括支援センターなどと協働することによって、被害防止でも大きな力を発揮してくれます。

今回は、高齢者の安全な暮らしのために、地域包括支援センターと警察がどのような活動をしているかご紹介いたします。

認知症の方の徘徊

私は、地域の警察署の警察署協議会委員に任命されています。

警察署協議会とは

警察署協議会は、警察署長が警察署の業務運営に民意を反映させるため、そのあり方について地域住民等から意見を聴く諮問機関であるとともに、警察署の業務を説明し、地域住民等にご理解とご協力をいただく場として、2001年6月に設置されたものです。

協議会の中では管内の交通事故や詐欺被害状況などの情報提供を受け、それらに関して委員が質疑や意見を行います。

地域包括支援センターと警察との連携 高齢者にはどんなメリット...の画像はこちら >>

地域包括支援センターは、警察の生活安全課と協働する場面が多くあります。生活安全課は特殊詐欺、侵入窃盗、性犯罪などの各種犯罪から、子どもや女性、高齢者をはじめとする地域住民の安全・安心を守るため、自治体、学校、関係団体・企業等と連携して、防犯活動を行っています。また、電子メールや防犯アプリを活用して、犯罪発生状況などの情報を発信するなどの業務を行っています。

例えば、認知症徘徊が発生した際には捜索依頼し、共同で捜索したり、逆に警察署で保護された認知症対象者について相互に情報を共有して再発防止や再度発生した際の対応について検討します。

徘徊が発生した際に防災無線を早期の段階で使用し、地域全体で捜索をすることを地域住民にお伝えしています。捜索が難航し発見が遅れた場合、お亡くなりになってしまうリスクが高まるからです。

また、捜索する方々の安全確保のため、早期の段階から防災無線の活用をおすすめしています。夜が遅くなると、山間部や沿岸部での捜索で、捜索者に二次被害が発生するリスクがあるからです。

警察と協働するさまざまなケース

特殊詐欺

高齢者が住み慣れた地域で安心して生活し続けるためには、特殊詐欺の被害から守らなければなりません。詐欺で金銭を搾取された高齢者に心穏やかな生活などありえないからです。

老後のためにコツコツと貯めたお金を騙し取られると、本来利用できるサービスが利用できなくなるなどといった事態になりかねません。

高齢者の生活のためには財産を守ることが大切なのです。

地域包括支援センターと警察との連携 高齢者にはどんなメリットがある?
画像提供:photo AC

特殊詐欺の被害防止についても警察と協働しています。詐欺被害情報を警察署から提供していただき、地域住民にポスター掲示でお伝えしたり、私の地域にある【天羽地区の高齢者を守るネットワーク】に賛同する医療機関や福祉事業所、一般企業約50ヵ所にFAXで注意喚起のチラシを送信したりしています。

これにより、耳が遠く防災無線による呼びかけなどが聞こえない高齢者に直接伝えていただいています。毎年のように巨額な被害が発生している特殊詐欺の撲滅に警察機関は必死に対応してくれていますが、この犯罪を撲滅するには広く全世代が被害防止の意識を持つ必要があります。

免許返納

高齢者の免許証返納等について交通安全課とも協働しています。認知症状により小さな事故を起こしたり、車をぶつけることが増えてきている高齢者の家族や医師からの通報で運転し続けることが危険であるとの連絡を受けた際に免許証の返納をおすすめします。

しかし、私たちの担当するエリアは過疎高齢化が進み、公共交通機関である電車は1時間に1本、バスは1日に上り下り合わせても8本ほどしか運航していません。

車の運転ができなくなる=通院も買い物も娯楽活動もできなくなることなのです。ですから、免許証の返納をすすめられた高齢者も必死に抵抗することがあります。自分のこれまでの生活が根底から崩れてしまうのですから、当然のことでしょう。

そんなとき、私たちは高齢者とともに警察署に伺うこともあります。署員の方は一生懸命に説得し、事故が起こった際の加害者被害者双方の悲劇や家族に及ぼす影響などを説明してくれます。

認知症状を呈している高齢者はなかなか理解できないこともありますが、署員の方の熱心な指導によって返納につながったケースも沢山あります。そして無事免許証を返納した後は私たちの出番です。

車が運転できなくなることで生じるデメリットを福祉サービスで補完するために支援をします。

高齢者虐待

高齢者虐待が疑われるケースにおいては、警察署に立ち合いの要請をして現場確認を行ったり、警察署に通報のあった虐待事例に関して地域包括支援センターが対応したりして、施設入所や福祉サービスにつなげて再発防止対策を行いました。

地域包括支援センターの活動への協力

私たち地域包括支援センターは、日常的に所轄の警察署と連携を取り、被害防止のために活動しているとも言えます。

地域全体で詐欺被害防止や高齢者虐待、認知症徘徊を防止するため【ウォーキング・わんわんパトロール】という住民相互の見守りをお願いしています。

これは、ウォーキングや飼い犬の散歩の最中に異常を感じた際に警察署や地域包括支援センターに連絡をしていただくシステムです。ポスターにより、この活動の周知を進めるほか、登録者にはバンダナを配布してこの活動の周知に警察署と共同して対応しています。

地域全体で防犯意識を高めることが、高齢者だけでなく地域全体を守ることにつながると考えているからです。詐欺被害は高齢者だけのものでなく、若者も被害にあいますし、虐待も子どもや夫婦間(DV)でも起こり得るからです。

誰かのためのちょっとしたアクション(関係機関への通報)が重大な被害を防止し、命を守ることにつながると信じています。住民一人ひとりのちょっとした働きかけが大きなムーブメントになることを望んで活動し続けています。

警察は善良な市民の味方です。

認知症の対象者や妄想性障害に苦しむ対象者の言葉にも熱心に耳を傾けて支援にあたってくれます。

地域包括支援センターと警察が意図的に連携することで、住民にとって有益となるよう警察機関の持っている力を発揮していただけるのです。

編集部おすすめ