高齢者の人生において、健康と心の豊かさは特に重要です。しかし、加齢とともに身体機能の低下や孤独感が増えることがあり、その影響は健康にも心の幸福にも大きな影響を及ぼすこととなります。

そこで、高齢者の健康と心の豊かさをサポートする方法として、趣味としての「推し活」が注目されています。

この記事では、高齢者が趣味を持つことの多様なメリットに焦点を当て、その詳細を探ってみましょう。

「推し活」とは何か?

デジタル大辞泉によれば、「推し(おし)」とは、主にアイドルや俳優について用いられる日本語の俗語であり、人に薦めたいと思うほどに好感を持っている人物のことです。

「推し活」とは自分の推しを応援する活動全般を指します。これは、ファンコミュニティの一部としても広がっており、精神的な健康や社会的なつながりに影響を与えています。

2020年の第164回芥川賞に宇佐見りんの「推し、燃ゆ」(河出書房新社)が選ばれたことでも、「推し」という言葉はとても注目されています。

「推し活」の実例

これまでに私が出会った高齢者の方にもいろんな推し活をしている人がいました。

  • 氷川きよし
  • 大谷翔平
  • 韓国男性アイドル
  • 格闘技観戦

推し活は、熱狂的な追っかけのようなことだけではなく、何かしらの応援活動全般を指します。皆さんの周りにも「○○が出ているドラマは全部見ている」「××の音楽ばかり聞いている」などという方はいるのではないでしょうか?

推し活の効果とは?

推し活には、以下のような効果があるとされています。

ストレス解消

推しのことを考えたり、推しの活動を応援したりすることで、脳からエンドルフィンやドーパミンなどの「幸せホルモン」が分泌されるとも言われています。これらのホルモンは、ストレスの解消やリラックス効果につながります。

生きがいの創出

推し活を通して、生きがいを見出し、日々の生活に意欲や張り合いを持つことにつながると考えられます。生きがいがあると、心身の健康維持につながるだけでなく、うつ病や認知症などのリスク低下にもつながると考えられています。

コミュニケーションの活発化

同じ推しを持つ人と交流することで、孤独感や孤立感の解消、新たな出会いにもつながります。

社会参加の促進

推しのイベントに参加したり、推し関連のグッズを購入したりすることで、社会参加の機会が増えます。

パナソニックの調査[1]によれば、「推し活」を通じて得たものについて質問すると、トップ3は「楽しみ」(76.2%)、「活力・元気」(63.8%)、「幸せ」(63.0%)と回答しています。推し活が心身の健康に良い影響を与えているようです。

高齢者が趣味を持つことのメリット

推し活と高齢者の健康に関する研究は多くありませんが、趣味を持つことで健康効果が得られることは多数の報告があります。

それらの調査研究をまとめると、次のようなメリットがあるとされています。

健康維持・増進

趣味に取り組むことで、体を動かしたり、頭を使うことにつながるので、心身の健康を維持・増進する効果が期待できます。

具体的には、スポーツなどの趣味は、筋力や体力の維持・向上、読書や音楽鑑賞などの知的活動は、認知機能の向上や認知症の予防につながります。

社会参加

趣味を通して、同じ趣味を持つ人と交流することで、社会参加の機会を増やすことができます。社会参加は、孤独感や孤立感の解消、生活の充実につながります。

まとめ

推し活をはじめ、高齢者が趣味を持つことは、心身の健康や生きがいの創出、社会参加など、さまざまなメリットがあります。

高齢者の趣味を把握し、積極的に支援していくことが大切です。家族や介護者も、趣味を支援することで高齢者の幸福な生活をサポートできることを再確認しましょう。

具体的には次のようなことに目を向けると良いでしょう。

    ・高齢者の趣味を把握し、その趣味をより楽しめるような環境や機会を提供する・高齢者が新しい趣味を見つけられるよう、地域の活動を紹介する・趣味活動を通して、利用者の意欲や生きがいを高める支援を行う

高齢者が心身ともに充実した人生を送るために、趣味は一つのポイントになります。「推し活」であれば、好きな人が出演しているテレビを観るだけでも構いません。熱中できることを見つけることが何よりも大切なのです。

【参考文献】
[1]パナソニック株式会社“「推し活」女性の9割超が「人生が変わった」と実感 、「推し活」で得たものTOP3は、楽しみ・活力・幸せ 。普段の活動はSNSチェックや映像鑑賞が中心」”PR TIMES.2022/5/22

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