薬にも食品と同様に使用期限があることをご存知でしょうか?使用期限の切れた薬は使うことができません。
今回は薬の使用期限と保管方法についてご紹介いたします。
薬によって異なる使用期限の目安
薬を安全に使用するためには、薬の使用期限を守る必要があります。食品では包装紙に賞味期限が記載されているように、薬にも箱や瓶などに使用期限が記載されています。
また、食品は一度封を開けたものは湿気を帯びたり、カビやすくなりしますが、医薬品も同様です。湿気や光に弱いものが多いので、開封後に適切な管理をしていないと使用期限まで持たないので注意しましょう。
高齢者に多い分包された一包化薬のように薬が一度外気にさらされたものは、使用期限が短縮されます。分包紙の材質や保管環境によっても異なりますが、通常3ヵ月~半年以内、長くても1年以内と考えられています。
一般的な目薬は開封後1ヵ月が使用期限です。
糖尿病治療薬の注射剤は開封後約2~8週間と、製剤により使用期限が異なるため、詳しくは薬を受け取るときに薬剤師に確認しておきましょう。
使用期限にかかわらず、外観に異変が見られているものや、日当たりが良いなど高温になる場所で保管してしまったものは使用せずに破棄することをおすすめします。
薬は高温多湿を避け、涼しい場所で保管し、梅雨時期の湿気や冬の暖房器具の使用にも注意しましょう。
処方箋でもらった薬の使用期限はどこに書かれている?
使用期限を調べようと思ったとき、市販薬には使用期限が記載されていますが、医療用医薬品には記載されていないのではと、疑問に感じるかもしれません。
医薬品流通過程における偽造医薬品の流通防止の観点から、薬局で薬を取り揃える際には箱から出して中身のみを患者さんにお渡しするため、多くは使用期限が掲載されていないものを皆さんは受け取っています。
しかし、医療用医薬品の箱にもしっかりと使用期限が記載されており、使用期限が切れたものが患者さんの手に渡らないよう薬局で管理されています。スーパーで賞味期限切れの商品が店頭に並んでいないのと同じです。
薬局では使用期限の近い薬や、処方された日数内に期限が切れてしまうような薬は提供していません。通常は使用期限が1~2年くらいあるものを提供していますが、薬局の在庫状況や市場の流通状況により提供する薬によってバラツキがあります。
また、医師は受診時の症状に応じて使い切るだけの薬を処方するため、医療用医薬品は、その処方日数が有効期限だと考えておくと良いでしょう。
たとえ薬の期限が切れていないものでも、症状や体調に変化があれば使用しないほうが良いことがあります。また薬はそのときの体重、年齢、検査値などで用法用量が変わることがあるので、医師から特別な指示がない限りは、残っていた薬を使用することはおすすめできません。
期限切れの薬がもたらす健康被害
では、使用期限の切れた薬を使用するとどうなるのでしょうか。
結論から言えば、健康被害が出るおそれがあります。
例えば、使用期限切れのテトラサイクリン系の抗生物質は錠剤が変性している可能性があり、それを服用するとファンコニ症候群と呼ばれる重大な腎障がいを引き起こすことがあります。
また、ビタミンB2製剤のように光によって分解し、効果が減弱してしまうものもあります。吸湿性の高い薬、液剤、栄養剤などは薬にカビが生えてしまうこともあります。
期限が切れてもなお副作用を発現してしまうような薬もあるので、期限が切れたから体に影響がないと考えるのも危険です。
糖尿病治療をされている方で、うっかり期限切れを起こしてしまうのは、インスリン注射に用いる針です。
期限の切れた薬を使用したときの効果や危険性は予測することができません。まったく効かないこともあれば、思わぬ病気を引き起こしてしまうこともあります。期限切れの薬や期限のわからない薬を使用することは避けてください。

薬を廃棄するのがもったいないと感じるときは、できるだけ早い段階で薬を受け取った薬局に相談してみましょう。薬の入っている袋(薬袋)を一緒に持参すると、いつ処方された薬かわかるので薬剤師の判断材料になります。
引き続き使用可能と判断された場合には、次回の処方から余った薬の分だけ日数を減らしてもらうなどの対応もできるので、薬を無駄にしなくて済むかもしれません。
ご自身で判断できないときは、かかりつけの薬局に相談してみましょう。