着実に改善している介護職の待遇
先生!ついに最終回です!改めて、これまでのお話を振り返ってみると、介護職に関して私も“誤解”していたなって気がします。
そうですね。ネガティブに語られることが多いですが、介護職に関する待遇は、給与や職場環境を含めて確実に改善しています。

給与は確実に改善している!
介護職は給料が安いというイメージがすっかり定着しています。事実、多くの介護職の方が不満を口にしており、『みんなの介護』にもそのようなご意見を多くいただいております。
第1回でも述べた通り、厚労省の調査によれば、介護職と全産業平均との年収の差は約47万円。ただ、調査によってもその差は異なり、日本介護クラフトユニオン(NCCU)の調査によると、いまだ約100万円の差があるとしています。
依然として全産業に比べると低いままですが、給与が着実にアップしているのも事実です。例えば、介護労働安定センターによる『令和3年度介護労働実態調査』では、管理職を除いた正規雇用の平均月給は、5年前の2017年と比較すると1万3,803円増となる24万4,969円になったと報告しています。

例えば、宿泊業や飲食業は月給平均が約21万6,000円ですから、介護職だけが特別に安いというわけではありません。(『令和3年賃金構造基本統計調査』より)
さらに、これらの調査は2022年から始まった「介護職の月給3%アップ(ベースアップ等支援加算)」の影響がまだ反映されていません。実質5,000~6,000円程度上がっているとされており、来年の調査結果では、介護職の給与が大きく上がることになります。
介護職として働き続けたい人が増えた?

これだけ給料が上がったら働きたい人も増えるんじゃないですか?
その効果はまだ先にならないとわかりません。ただ、すでに介護職として働いている方の離職率は低下し、勤続意欲も向上しています。

介護業界では、長い間、離職率の高さが問題視されてきました。確かに2007時点では21.6%と、高い数値を記録していましたが、近年は下落傾向にあります。
先述の介護労働実態調査によれば、介護職の離職率が調査開始以来、最も低い14.3%にまで低下しました。

さらに、「今の勤務先で働き続けたい」と答えた介護職の割合は61%となり、5年連続して前年を上回りました。
介護業界で実際に働いている方の中には、職場の変化にある程度の満足感を覚えている方もいるのでしょう。
介護業界最大の敵は“イメージ”

でも、でも、いまだに、きつい・汚い・危険・給料が安い“4K”職場だって思い込んでいる人もいますよね…
個人的な見解ではありますが、私は介護業界を覆う悪しきイメージこそ乗り越えなければならないハードルだと思っています。

国が率先して人材保護を進めてきた
介護は決して“楽な仕事”ではありません。特に食事介助や排泄介助といった「直接介護」は、精神的にも体力的にも職員の負担が大きくなります。その点では「きつい」という面は間違いないでしょう。
しかし、国はそうした人材を保護するため、さまざまな政策を進めてきました。例えば、令和3年度の介護報酬改定で、職員に対するハラスメント対策が義務化されました。
「遅すぎる」と思われる方もいるかもしれませんが、国が対策に乗り出したのは事実です。義務化されたことで、ハラスメントに対する意識も確実に向上しています。
国は、政策によって介護業界の健全化を図っており、こうした努力は地道ではありますが、着実に成果を生み出しています。
今後のテーマは業務効率化と大規模化?

じゃあ、次はどんな改善策を出しそうですか?
業務効率化については、厚労省でも盛んに議論されています。事業所の大規模化もひとつの手段ですね。

業務効率化というと、難しいことのように思われるかもしれませんが、実は業界内で誤解されていることもあります。
例えば、国は業務効率化のためにICT活用を推進しています。それは導入した事業所に補助金を出す制度を整備していることからも明らかです。
しかし、介護業界には「介護は福祉」という古くからの意識が根づいています。そのため「介護は人が直接コミュニケーションしてこそ」という考え方も少なくありません。
これは明らかな誤解です。国がICT活用などで目指しているのは、介護職員が介護とは関係ない間接業務と呼ばれる掃除や洗濯などの日常業務や、連絡業務です。国は職員が、利用者と接する直接介護の時間を増やすために効率化を訴えています。
実際にICT導入事例で、間接介護の減少時間と直接介護の増加時間を調査しています。

業務効率が改善しているのは一目りょう然です。このように、国は事業所に対して、職員が能力を発揮できる働きやすい環境づくりを事業者に求めているのです。
介護新時代を築く第一歩は介護職が握っている!

もうぶっちゃけ聞きます!介護職の未来はどうなりますか?
ド直球ですね(笑)。私の意見としては今よりも必ず良くなっていくと信じています。

介護人材は社会に“求められる”存在
次の介護報酬改定では、現在議論が進められている事業所の大規模化が大きなテーマになると見られています。
規模の大きな施設では、業務が多岐にわたっているため、その分ポストも多く用意されています。また、近年は介護福祉士の受講費用を施設が負担する社内制度を設けるところが増えています。
それに加えて、介護業界ではこれまでの学歴や職歴に関係なく、実力でキャリアを積めると、小濱先生は指摘しています。
小濱先生はこんな介護職員のエピソードを紹介してくれました。
ある介護職員とのエピソード
介護施設に勤めるAさん。最終学歴が中卒で、現在25歳。生活するのが精いっぱいの月給で、現時点では昇給も望めず、将来をどうすればいいのか悩んでいました。
その相談を受けた小濱先生はこうアドバイスしたそうです。
「介護の業界は自分が何をしたいのか、将来どうしたいのかを明確にすることが大切です。本当に介護職としてキャリアを積んでいこうと思うなら、資格を取ることや、その事業所に何が足りないのかを考えることで、“上”を目指せるはずです」
介護業界では、より良いサービスを提供できる実力があり、さらに上を目指していく意思があれば、着実にステップアップを狙うことができます。
小濱先生は、ステップアップに必要なのは個人の決断だといいます。つまり、現在の職場でキャリアを描けないなら、キャリアを支援してくれる施設を目指すということです。
介護人材は、社会全体で求められています。自分がどんなキャリアを積みたいかを考え、決断し、行動する。これは簡単なようで難しいのかもしれません。しかし、介護業界全体でキャリアアップを支援する土台はそろいつつあります。
介護業界には可能性が満ち溢れています。

すごくイイ話!未来を実力で切り拓く…私も負けないように頑張ろう!