変わる医療、変えるキャリア――地域共生社会への航路

2026年2月28日、東京・中央区にて「メディカルジョブアワード2026」が開催されました。

超高齢社会の深化に伴い、日本の医療・介護提供体制が大きな転換点を迎える中、本イベントでは『変わる医療、変えるキャリア』をテーマに、最前線で活躍する6名の医師が一堂に会しました。

2060年を見据えた次世代の医療提供体制のあり方や、医師・病院がいかに地域社会と深く関わり、介護をはじめとする多職種連携を深化させていくべきか。

現役医師たちの実践に基づいた多角的な議論は、これからの医師の役割とキャリアパスを再定義する、重要な契機となりました。

超高齢社会の未来を見据えた「医療と介護の融合」と「これからの...の画像はこちら >>

メディカルジョブアワード2026を主催する株式会社ENの代表取締役兼CEO 鎌形 博展氏


基調講演:田中滋氏が解説する、超高齢化社会における地域医療

イベント冒頭の基調講演には、慶應義塾大学名誉教授であり埼玉県立大学理事長の田中滋氏が登壇。

田中氏は、日本の医療によって健康寿命を延伸させていることが「結果として超高齢者を増加させて要介護ニーズを増大させる」という逆説的な現状を解説。人生100年時代において65歳以上を一律に「高齢者」と括ることの不適切さを指摘しつつ、特に85歳以上で社会的資本(身寄りや友人)を持たない単身高齢者の急増が、今後の地域包括ケアシステムにおける最大の課題になると予測しました。

また、世間で叫ばれる「医師不足」という言葉に対して、実際には医師・看護職員数ともに過去30年で大幅に増加している事実をデータで提示。問題は人数ではなく、労働環境や経営、そして地域ごとの戦略的な配置にあることを指摘しました。これからの地域医療を担う医師には、急性期への転換を未然に防ぐ外来診療とあわせて、地域の介護法人・社会福祉法人との緊密な連携が不可欠であるという、介護現場への力強いエールとも取れる提言がなされました。

超高齢社会の未来を見据えた「医療と介護の融合」と「これからの医師のキャリア」――『メディカルジョブアワード2026』開催レポート


■ 田中 滋(たなか しげる)氏
埼玉県立大学理事長 慶應義塾大学名誉教授
地域包括ケアシステムの第一人者。医療経済・医療政策を専門とし、国の医療制度改革や診療報酬制度、地域医療構想に長年関与。厚生労働省の審議会委員などを務め、研究・教育と並行して、制度設計・評価の実務に携わってきた。

メディカルジョブアワード2026 登壇者(受賞者)紹介

■ 石川 輝(いしかわ ひかる)氏
医療法人社団 静恒会 理事長 / 本多病院 院長
30代で院長に就任し、中小規模病院の経営と臨床の両立に挑み続ける現場の実践者。臨床医として個々の患者に寄り添うとともに、地域社会と密にコミュニケーションを図りながら地域医療の持続可能性をいかに守るかという視点で、病院の進むべき道の新たな舵取りに挑んでいる。

■ 小谷 和彦(こたに かずひこ)氏
自治医科大学 地域医療学センター 地域医療学部門 教授
社会のニーズや地域医療に携わる医師のキャリアを丁寧に見つめてきた一人。碩学の知見に基づき、地域医療と教育・研究の現場を架橋する役割を担いながら、持続可能な地域共生について探究している。

■ 志水 太郎(しみず たろう)氏
獨協医科大学 総合診療医学 主任教授 / 獨協医科大学病院 総合診療科 診療部長
著書『診断戦略 診断力向上のためのアートとサイエンス』『NHKドクターG』などを通じ、臨床医として実践的診断学を中心に国内外で診断教育をリードするとともに、数多くの研修医・学生を育ててきた。医師のキャリアが多様化する時代において、「すべての患者さんのケースは素晴らしい学びの機会である」いう信念のもと、日常の診療から学びを得る大切さを教育者として伝えている。

■ 符 毅欣(ふう たかよし)氏
株式会社on call 代表取締役CEO
在宅医療の効率化と医療アクセス改善を目指し、テクノロジーを軸に事業を展開する医療起業家。医療現場の課題を起点に起業という選択を取り、在宅医療の新しい仕組みづくりに挑戦している。現場視点に立ったプラットフォーム構築を通じて、医師と患者双方にとって持続可能な在宅医療インフラの実現を牽引する。

■ 松澤 知(まつざわ とも)氏
新潟県福祉保健部(行政医師)
初期研修修了後、新潟県に入庁。行政医という医療・保健・福祉を横断する立場で、携わる業務は多岐にわたる。コロナ禍では医療調整本部にて、県内の医療提供体制の強化等に携わる。現在は定期的に保健所での業務も担い、県民のために東奔西走している。

■ 安井 佑(やすい ゆう)氏
医療法人社団 焔 理事長 / TEAM BLUE 代表
震災での支援活動をきっかけに在宅医療を経験。現在は医療法人社団 焔理事長として「最期まで自分らしく“生きる”」ことを支える「やまと診療所」や「おうちにかえろう。病院」を運営。

また、TEAM BLUEの代表として、チームを「プロフェッショナルとしての成功確率を上げるための戦略」と位置づけ、楽しく仕事をすることが働く人の可能性を広げる組織づくりに挑み続けている。

特別メッセージ:田中滋氏より、介護事業に携わる皆さんへ

地域包括ケアシステムの深化において、介護事業者はなくてはならない存在です。田中滋氏より、『みんなの介護』を通じて介護に携わる皆さんへ特別にメッセージをいただきました。

 「地域共生社会のあり方に、全国共通の正解はありません。それぞれの地域ごとに医療・介護ニーズや社会資源は異なるため、まずは自分の街の特性を深く知ることが出発点となります。介護と医療との連携について、壁や隔たりを感じる必要はありません。具体的な行動として大切なのは、地域の病院や自治体が主催する勉強会などの場へ積極的に足を運んで、まずはお互いに『顔見知り』になることです。医師や病院に対して遠慮したりすることなく、共に地域を支える有志のメンバーとして向き合い、連携していただきたいです」
 

 

開催概要

イベント名:メディカルジョブアワード2026
テーマ:変わる医療、変えるキャリア ~2060年の社会を生き抜く医師の選択~
日時:2026年2月28日(土)16:00~20:00(開場15:30)
会場:セイコーソリューションズ東京本社(東京都中央区八丁堀3-6-1)
対象:医師・医学生、医療関係者、行政関係者
主催:株式会社EN
 
編集部おすすめ