「スキマバイト」をしたら税金や社会保険料はどうなるの?の画像はこちら >>


長期的な雇用契約を結ばず、都合のいい時間帯で働くことができる「スキマバイト」。専用の求人サービスも増え、空き時間に活用しているという人もいるだろう。



フレキシブルに働けるため、おこづかい稼ぎにちょうどいい「スキマバイト」だが、本業がある場合は副業と見なされるはず。そうなると社会保険や税金はどのように計算されるのだろうか。ファイナンシャルプランナーで社会保険労務士の川部紀子さんに、スキマバイトとお金の関係について教えてもらった。

スキマバイトをする際は「契約書」をチェック

「まずは、スキマバイトのメリットとデメリットを押さえておきましょう。雇用主にとっての最大のメリットは、必要なときに必要な労働力を確保できるという点でしょう。労働力の『ジャスト・イン・タイム』といえるかもしれません。そのほかにも、次のようなメリットが考えられます」(川部さん・以下同)

●雇用主にとってのスキマバイトのメリット
・昇給や賞与、退職金などに備える必要がない
・ハラスメントなどで訴えられるリスクが低い
・業務委託の場合、労働保険や社会保険の加入対象にならない

●雇用主にとってのスキマバイトのデメリット
・会社のエンゲージメントやチームワークが芽生えにくい
・情報漏洩のリスクが高い

「雇用主にとってのメリットは、労働者にとってもメリットとなる一方、デメリットとなる部分もあります」

●労働者にとってのスキマバイトのメリット
・働きたいときに働ける
・職場での悩みが生まれにくい
・収入を得ながら、夢や目標を追いやすい

●労働者にとってのスキマバイトのデメリット
・昇給や賞与、退職金がない
・業務委託の場合、労働保険の加入対象とならないため、労災の補償を受けられない

「労働者にとってのデメリットは“注意点”ともいえます。契約の際に確認するべきは、『雇用』か『業務委託(請負)』かという点です。『雇用』であれば1時間の労働でも労災の補償の対象になりますが、『業務委託』はそもそも労働保険の対象ではないので、労災の補償は受けられません。例えば、フードデリバリーの配達員が配達中に事故に遭ったとします。フードデリバリーは『業務委託』となっていることが多いため、契約先の保険から労災の補償が下りることはありません。個人的に労災保険を契約していれば補償されますが、保険料は自己負担となります」

フードデリバリーに限らず、スキマバイトをする際の書類が「雇用契約書」と「業務委託契約書」のどちらか、確認しておいたほうがいいだろう。

基本的にスキマバイトをしたら「確定申告」が必要

スキマバイトでそれなりの金額を稼いだ場合、当然ながら所得税や住民税、社会保険料を納めることになるが、複数の企業で働いた場合はどのような支払い方になるのだろうか。

「税金に関しては、基本的に確定申告で清算するものと考えましょう。

ただし、スキマバイトの収入は少額になることが多いので、場合によっては確定申告が不要になるケースもあります。スキマバイト以外の仕事はせず、スキマバイトの収入の合計が年間20万円以下であれば、確定申告は不要です。本業とは別に副業としてスキマバイトを行っている人は、以下のようなケースだと確定申告が不要になります」

●確定申告が不要になるケース
・スキマバイトが「雇用」の場合:スキマバイト先で源泉徴収されていて、スキマバイトでの収入の合計が年間20万円以下
・スキマバイトが「業務委託」の場合:スキマバイトでの所得の合計が年間48万円以下

「上記のケースに当てはまらない場合は、確定申告を行う必要があります。特に、スキマバイト先で源泉徴収や年末調整が行われていない場合は、所得税を支払っていないことになるので、確定申告が必須となります。源泉徴収や年末調整が行われている場合も、確定申告を行うことで税金の一部が還付されることがあるので、申告することをおすすめします」

例外的に、20万円を超えなかったとしても申告が必要になることがあるという。

「年収20万円を超えなかった場合、所得税の申告は不要となりますが、住民税の申告は必要になることがあります。住んでいる自治体の税事務所などで確認してみましょう」

スキマバイトのひとつとしてフリマアプリでの物品の販売があるが、これも20万円を超えなければ申告は不要となるのだろうか。

「配送料などの経費を差し引いたうえで、収入が20万円を超えるようであれば、確定申告をする必要が出てくるでしょう。逆に20万円を超えないようであれば、申告は不要です」

「社会保険料」はあまり気にしなくてもいい…?

税金に関しては確定申告で清算できることがわかったが、社会保険料はどのように計算されるのだろうか。

「2カ所以上の企業に雇用され、それぞれの企業で社会保険の加入要件を満たしている場合、すべての企業で社会保険に加入することになります。各企業はすべての給与を合算して出した保険料額を、それぞれの給与額に応じて分ける形になります。つまり、労働者からすると、それぞれの給与から社会保険料が差し引かれることになるのです」

ただし、スキマバイトの場合、社会保険の加入要件を満たさない可能性が高いとのこと。



「社会保険の加入は、『週の勤務が20時間以上』『2カ月を超えて働く予定がある』『給与(通勤手当や残業代を含まない)が月額8万8000円以上』といった要件のすべてを満たした場合に行われるものなので、スキマバイトでひと月に数日だけ働いたり、さまざまな企業を転々としたりしている場合は、社会保険のことは考えなくてもいいでしょう。同じ企業や店舗でのスキマバイトを繰り返している場合は、要注意です」

社会保険に加入すると、企業側も社会保険料の半分を支払うことになる。その負担を減らすため、「雇用」ではなく「業務委託」で契約する企業もあるようだ。

「『業務委託』で働く労働者は社会保険の加入対象にならないため、仮に加入要件を満たしたとしても社会保険料は発生しません。企業は負担を減らしつつ、労働力を確保できるので、『業務委託』で契約しているところが増えてきているのです」

わずかな稼ぎとはいえ、収入を得た場合には税金や社会保険料を納めなければいけない。そのことを前提に、スキマバイトをする際も注意したほうがいいだろう。
(取材・文/有竹亮介)

編集部おすすめ