関税とは?かける目的・歴史・税関の役割についても解説の画像はこちら >>


関税とは、主に国内産業の保護を目的として、輸入品に対してかける税金のことを指します。主な種類は、従価税・従量税・混合税などです。



本記事では、関税をかける目的や歴史などについて、詳しく説明します。2025年のトピックについても解説するので、ニュースやSNSなどで気になっている方はぜひ参考にしてください。

関税とは

関税とは、輸入国が他国から購入する商品(輸入品)に対してかける税金のことです。原則として、関税には申告納税方式が採用されています。

申告納税方式とは、輸入申告者が貨物を輸入する際に関税額を計算し、自ら納付する方法のことです。一方、貨物によっては輸入する際に税関長の処分で関税の額が決まる、賦課課税方式が採られることもあります。

なお、歴史的には関税が国内でかけられるケースもありました。しかし、現在は基本的に外国との貿易で発生するものについて「関税」と呼びます。

関税をかける目的

各国が関税をかける主な目的は、以下の通りです。

・国内産業を保護する(保護関税)
・財源を確保する(財政関税)

元々、関税は財源を確保することに大きな役割がありました。しかし、国の財政規模が大きくなったことに伴い、財政関税としての役割は低下し、保護関税としての役割が強まっています。

関税をかけることで貿易相手国の商品のコストが上昇することが、自国産業の保護につながる理由です。相手国の商品はコストが上がった分、自国の商品に対しての競争力が低下します。

一方で、国同士の対立が深まることが関税をかけることのデメリットです。

また、輸入品の価格が上昇するため、消費者の生活に悪影響を及ぼす可能性もあります。

関税と関係の深い税関の役割

関税は、税関と深い関わりがあります。税関とは、全国の港や空港で、外国に輸出する品物や外国から輸入される品物について関税のルールが守られているのかをチェックする機関のことです。

税関の主な役割として、以下の点が挙げられます。

・適正かつ公平な関税などの徴収
・貿易の円滑化

書類をチェックしたり、品物を検査したりすることで、ルールの遵守を確認しています。

なお、関税・貿易のみならず、テロ行為などを未然に防いで安全・安心な社会を実現することも、税関の役割です。

関税率の決め方

関税率とは、輸入する貨物に適用される税率を指します。関税率の決め方は、主に以下の通りです。

・国内の法律に基づく
・他国との条約に基づく

それぞれ簡単に解説します。

国内の法律に基づく

日本国憲法第84条には新たに租税をかけたり、変更したりする場合、法律などによらなければならない旨(租税法律主義)が定められています。関税も租税の一種のため、関税率は法律に基づいて設定されなければなりません。

日本で関税率について定めた法律は、関税定率法と関税暫定措置法です。関税定率法には、長期的に適用される基本税率が定められています。一方、関税暫定措置法は、一時的に基本税率によりがたい事情がある際に、基本税率に優先して適用する税率(暫定税率)を定めた法律です。

他国との条約に基づく

他国との条約に基づいて、関税が決められる場合もあります。

例えば、WTOに加盟している国や地域は協定税率が国で定めた税率より低い場合に、他の加盟国・地域からの産品に対しては同じ協定税率を適用しなければなりません。

二国間条約により最恵国待遇を約束していれば、非加盟国相手でもWTO加盟国・地域と同様の協定税率が適用されます。

EPA税率とは、輸入品が原産地に関する条件などを満たす場合に、EPA協定国や地域に対して国が法律で定めた税率や協定税率に優先して適用される税率です。

なお、日本は1955年にWTOの前身であるGATTに加盟しています。また、日本が最初にEPAを締結した相手は、シンガポールです(2002年11月発効)。

関税率を確認する方法

特定の品目の関税率の目安は、税関のホームページで確認できます。例えば、第2類(肉及び食用のくず肉)行の「税率」をクリックすれば、「牛の肉(冷凍したものに限る。)」の「枝肉及び半丸枝肉」の暫定税率が38.5%であることがわかるでしょう(2025年1月1日現在)。

なお、掲載されている実行関税率表はあくまで参考とし、詳しい内容については各税関の税関相談官に確認してください。

参考:税関「実行関税率表(2025年1月1日版)」

関税の主な分類・種類

関税の主な分類・種類は、以下の通りです。

・従価税
・従量税
・混合税

それぞれ解説します。

従価税

従価税とは、輸入品価格に比例して負担がかかる関税のことです。例えば、関税率が20%の商品を50万円分輸入した場合、10万円の関税がかかります(50万円 × 20%)。

国にとって、従価税を採用することのメリットは、インフレに適応しやすい点です。一方で、輸入品の価格が低いケースでは関税額も低くなるため、保護関税としての役割を果たしにくくなる点がデメリットとして挙げられます。



従量税

従量税とは、輸入品の数量(個数・容積・重量)に応じて負担がかかる関税のことです。例えば、関税率が1kgあたり200円の商品を50kg輸入した場合、1万円の関税がかかります(200円 × 50kg)。

従量税を採用することのメリットは、税額を計算しやすい点です。一方で、物価変動が生じた際に、税の負担において不均衡が生じる点がデメリットとして挙げられます。

混合税

混合税とは、従価税と従量税を組み合わせた仕組みを持つ関税のことです。一般的に、国内産業の保護を目的として採用されています。

混合税のうち選択税とは、同じ品目に対して定められた従価税と従量税をそれぞれ計算し、高い方(一部は低い方)の金額がかかる関税です。例えば、従価税が2,000円で従量税が7,000円で高い方が採用される選択税の場合は7,000円が関税としてかかります。

混合税のうち複合税とは、従価税と従量税の両方がかかる関税のことです。例えば、従価税が800円で従量税が3,000円であれば、複合税は3,800円と計算できます(800円 + 3,000円)。

なお、混合税の対象となる具体的な品目は、選択税が一部の綿織物で複合税が一部の乳製品です。

その他

ここまで紹介してきた関税以外にも、差額関税・スライド関税などの関税の種類があります。

差額関税とは、豚肉などを輸入する際の価格が低い場合に基準値との差額がかかる一方で、価格が高い場合には無税もしくは低い税率が適用される関税です。スライド関税とは、国際市況の激しい商品を輸入する際の価格が低い場合は一定の金額がかかる一方で、高い場合には無税とされる関税を指します。

関税に関する過去の主な出来事・政策

関税に関する過去の主なトピックとして、以下の出来事や政策が挙げられます。

・自動車・自動車部品輸入時の関税撤廃
・コメの関税化

それぞれ押さえておきましょう。



自動車・自動車部品輸入時の関税撤廃

日本は、1965年より完成乗用車の輸入を自由化し、数度の引き下げを経たうえで1978年から自動車や主要自動車部品の関税を撤廃しました。一方で、米国や中国など、依然として自動車の輸入に対して関税をかけている国はいくつもあります。

また、自動車の関税に関連して取り上げられる話題のひとつが、自動車の輸出規制です。米国に配慮し、日本政府と自動車業界が対米自動車輸出台数を制限していたことがあります。

コメの関税化

1998年度まで、日本はコメの輸入許可制(輸入にあたって国の許可を必要とする制度)を採用していました。その後は、コメの関税化に伴い、関税を払えば自由に輸入ができるようになっています。

コメの関税に関する重要なキーワードが、「ミニマム・アクセス(最低輸入量)」です。日本はコメについてミニマム・アクセス制度を採用しており、毎年一定量を無関税で義務的に輸入しています。

2025年における関税のトピック

2025年3月26日、米国トランプ大統領が、輸入自動車や自動車部品に対して25%の関税をかけることを発表しました。そのため、米国の自動車輸入国として上位の日本にも、今後大きな影響を及ぼす可能性があります。

また、2025年4月2日には貿易相手国の関税率や非関税障壁を踏まえたうえで、米国の関税を引き上げること(相互関税)も発表しました。その後、相互関税については多くの国に対して90日間適用を停止することを発表していますが、今後の見通しは不透明です(2025年4月22日現在)。

関税は輸入品に対してかける税のこと

関税とは、輸入品に対して国がかける税金のことです。原則として、輸入申告者は貨物を輸入する際に関税額を計算し、自ら納付しなければなりません。

各国が関税をかける主な目的は、国内産業を保護することです。

とくに2025年は、米国の関税適用に関する話題がさまざまなメディアで取り上げられています。経済に与える影響も大きいため、こまめに最新情報をチェックしましょう。

参考:税関「関税のしくみ」
参考:財務省「関税とは」
参考:財務省「わが国の関税制度の概要」

ライター:Editor HB
監修者:高橋 尚
監修者の経歴:
都市銀行に約30年間勤務。後半15年間は、課長以上のマネジメント職として、法人営業推進、支店運営、内部管理等を経験。個人向けの投資信託、各種保険商品や、法人向けのデリバティブ商品等の金融商品関連業務の経験も長い。2012年3月ファイナンシャルプランナー1級取得。2016年2月日商簿記2級取得。現在は公益社団法人管理職。

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